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プロローグ

19/09/27追記

彼は退屈でひどく弱い人間だ。仕事をし、帰っては寝て、起きれば仕事に行く。

遠い距離が交友を切り、疲れた心で社交もできない。

誇りもなければ、生き甲斐も。友と共に遊び道具さえ置いて、ただ仕事に生きた。

蛇口をひねれば水が出るような生活を続け、決して水を汲もうともしなかった。


そんな人間でも涙は流せた。映画を見ている時だけ、無色透明な現実を見なくて済む。

映画に登場する彼らが、自分がつかみ損ねた色取り取りの人生を、モノを得ている。

そう思うと、喜ばしく、悔しかった。時に怒り、嘆き、呆れ、満ちた。

まるで嵐の様に感情を揺さぶり、晴れやかになる。

だから彼は、映画や小説に心のよりどころを求めた。



追記、二部目までプロローグみたいなものになってます。


「痛い・・・」

 闇夜の中、ぼやけた視界は血と雨に濡れたアスファルトを認識した。


 そうか、僕はトラックに轢かれたんだ。深夜にジュースとお菓子を買っては大好きな映画の観賞をするのが僕の趣味だったが、それがこんなことになるなんて。

 パンフレット、結局見てない。原作小説だってまだ1ページだって見ていない。買っては積んで、満足した気になっていた。

これが、やり残した事なのかな。

 子供だって育てたことも無い。それこそ彼女すらまともにいなかった。

 ははは、アクション映画とか、ヒューマンドラマとか、映画なら結構見たのに。

 なんにも、思い浮かばない。走馬燈ってやつも。ただ見ただけで、何も身についてない。

 結局、僕には何もないんだな。勝手に詰められた仕事だけで・・・・・・。


 沈んでいく意識と失意の中、頭の中に声が聞こえてきた。

 二重に聞こえる高い声。女性のよう聞こえるが、それとは別に元気な男の子のようにも聞こえる。

 青年がふと連想したのは天使であった。天使と仮定してこの青年に何の話であろうか?意識を集中させて聞こうとするが、体に走る激痛が集中を阻害する。しばらくするとスッと痛みが引き天使の声がハッキリと鮮明に聞こえてきた。


「聞こえますか?あなたに神からの使命を与えます」


 使命だって?僕に何ができるのだろうか。今まで僕が人にしてあげたことは少ない。

 僕がやったのは精々同期の失敗を自分に着せたり、捨て猫を拾ったり、あとはOBとして先生の代わりに部活動のコーチしてあげたくらいか。

 断るのが苦手で、こなせもしない頼みごとを引き受けては、中途半端に返すことしかできない。

 いや、小さい頃だったらいろんなことが出来てたっけ。でも、いまさら。


 腕を組みながら考えていると、ふと視界がひらけて見える。眼下には()の字に倒れた青年、いや自分自身が見えた。

 動揺したが不思議と混乱することなく自分は完全に死んだのだと理解した。冷静に自分の死を受け止めたところで、天使の声がすらすらと話し始めた。


「あなたは清らかな心の持ち主であると私たちは見抜きました。そしてあなたの性格と趣味も今探している人にピッタリです。神からの使命を与え、あなたの魂を導いてこの世界とは別の異なる世界で転生して差し上げましょう。きっと気に入るはず、異世界には神の愛とマナで満たされ、異なる種族たちが魔法を使い文化を作りあげています」


 すごい突拍子も無い話だ。魔法のある世界か。理解できないと敬遠していたけど、まさか本物に理解できない理由でファンタジーの世界に行けるなんて。

 しかし神さまからの使命とはいったいなんなんだ?

 青年の疑問に天使は答える。


「永遠の命をその身に宿した最強のドラゴンとして、異世界の発展を見届ける観測者となってほしいのです。技術の進歩や種族の成り立ちそれらを本などにして語り継いでいく・・・などが使命です」


 永遠の命!?一生というか永遠ドラゴンでファンタジーな世界を見守る事になるのか・・・。

 確かに僕の趣味は映画観賞だけど永遠は厳しいのでは、いや、様々な種族が技術を発達させていけばS(サイエンス)F(フィクション)な世界になるかもしれない・・・。それどころかもっとすごい世界、今まで見たことがない世界になるのでは?!それにドラゴンか、いったいどんな生活になるのかな?想像もできないや。


 期待と、それから好奇心に胸を躍らせた青年は、浅はかにも両腕を目一杯夜空に上げて天使に返事をした。



「そんな世界があるなら、ぜひとも観賞させてください」


 そうして青年の魂はどこか知らない異世界へと飛ばされた。


たぶん続かない

追記、わざわざブックマークしてくださる方がいるみたいなので続けますね

追追記、多分続かないとか消極的な事書いておきながら続けてますねー


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