私の心
私は、此の世界に絶望していた。
こんな汚らしい屑が溢れた世界で生きている意味がわからなかった。
どうせ皆死ぬのだ。
お金?
そんな物、何に使うと言うのか。
冥途に迄持って行ける訳でもないのに。
人を騙して泥に塗れたお金を掻き集め欲に使う。
何て汚いんだろう。
汚らしい大人が蔓延った此の世界。
純真では生きてはいけない世の中で。
未だ純真を捨てられない私達は大人に反抗する事でしか其れを確かめられない。
「馬鹿みたい」
きっと皆、馬鹿なんだ。
大人も思春期の私達も。
只、一番馬鹿みたいな子供の方が賢いのかもしれない。
此の様な事を考えている私が一番馬鹿だな。
其の考えにふっと小さく口の端をあげて苦笑いを浮かべる。
ふと机の上に無造作に置かれた札の束に目が止まった。
浮かんだ苦笑いが冷めていくのが分かる。
此の札束は親が置いていった物だ。
まるで小馬鹿にしている様に使い切れない程のお金を置いていく。
何時置いていくのか知らない。
いずれにしても私に会わない様にしているのだろう。
お金なんていらないのに。
こんな豪邸に住みたい訳でもないのに。
良い物が食べたい訳でも、贅沢がしたい訳でもない。
何が欲しいのか自分でも分からない。
この願いは多分、我が儘なのだろう。
こんなに素晴らしい生活をしているのに勿体ないと云われるかも知れない。
「ふぅ……」
大きなため息が口から出る。
嗚呼、幸せが逃げていく。
そう頭の端で思いながらお金に手を伸ばした。
掴んだお金を全て愛用している箱に入れていく。
もうこの箱はお金だらけになってしまった……。私は静かに箱を閉じた。