目覚め
細切れ更新で本当に申し訳ございません。読んでくださいましてありがとうございます。
目が覚めるとそこはベットの上だった。
という事はなく、まだ闇の深い夜の道路の上であった。
「おう。雲母目覚めたか」
僕の目に映ったのは僕の顔をのぞき込む時流の姿。
「う・・・・・・。僕は」
「良かったのう。甘露の力が無ければ死んでいたかもしれぬ」
時流は僕の前髪を撫でる。
ってこの体制は。
膝枕である。
むちむち生足膝枕であるのだ。
「うう。僕はもうだめだ・・・・・・。」
「元気になったようじゃのう。では」
時流は唐突に立ち上がる。
僕の後頭部に衝撃が走る。
頭をしたたかに打った僕は星を見ることとなる。
夜空の星ならロマンチックだが、衝撃からくる星だ。
星って本当に見えるんだな。
僕は大の字になり、力が抜ける。
「さあて。帰るかのう」
「帰る?あれ?僕は何をしてたんだっけ?」
「バナナの皮を踏んで滑って転んでどぶに落ちて失神しただけじゃよ。気にするな。誰にでもある失敗じゃ」
時流は僕の目を見ずにそういった。
こいつ。嘘、下手だな。
僕は口元を緩めてしまう。
「時流は優しいな」
「はあ?今のどこが優しいのじゃ。愚かな下僕をもって辟易していたところじゃぞ」
「美紀はどこに行った?」
時流は呆れた顔をする。
「行ってどうする?」
「助ける」
「愚か者すぎるぞ。少なくともあの鬼頭とかいう男は我の目から見てもその道のプロであろう。名で縛る。名で縛られる事を地で行っておる。陰陽道に明るいものであろうし、少なくともお前よりは強い」
我よりは弱いがな。
そんな呟きが聞こえた。
「関係ない!僕は美紀を助けたいんだ!」
「お主。鬼が人であった話を聞いて同情しておるのではないか?確かに我は言った。鬼は人であったと。しかしな。雲母」
時流が僕の髪を撫でる。
「彼奴が言ったように、鬼は鬼じゃ。鬼という言葉に呪われた鬼じゃ」
「それでも僕は!」
「鬼までも助けたいと申すか?」
僕は静かに頷く。
「お主はあの男の言うように希望に殺される人間なのかもしれんのう」
時流は呆れたように。いや、呆れているのだろう。
「あっちに逃げていったぞ。逃げた先は恐らく。鬼の首塚、沼川山じゃ」
「時流!ありがとう」
「間に合わぬであろうがの」
「フラグ立てんなよ!!」
僕は立ち上がり、沼川山に向かい走っていった。