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アイス(改)

内容は変わっておりません。セリフの手直しだけ致しました。

「どうやら着いたようじゃな。かの桃源郷に」

「そうだね。着いたよ。自転車漕いで5分かからず到着する桃源郷に」

すでに21時を回っている。

夏とはいえ外はもう真っ暗だ。

「雲母。我はアイスを所望する」

時流はぺたぺたと歩きまっすぐアイスコーナーを目指す。

「アイス食べるのかよ?昼間食べただろう?」

「わかっておらんなあ。昼間のアイスに感動したからと言って、夜も食べてみたいと思うほど、我の舌は貧しくはないぞ」

「じゃあなんなんだよ」

「昼間は暑かった。だからこのアイスなるものがおいしく感じただけなのかもしれぬ。だが、今は昼間ほど暑くはない」

「それが?」

「今は、夏の夜じゃ。気温は下がっておる。そんな中、このアイスと呼ばれる氷菓子を食べてみたらどうなるか?それを試してみたいのじゃ」

「うん。それはわかった。でも、時流。昼間と夜の違いを試すなら同じものを食べなくちゃ実験。いや、体験にはならなくないか?」

時流はコペンハーゲンダッツを握りしめている。

「昼間と同じものを食べなどど面白味のない男じゃのう。雲母という名前が聞いて呆れるわ」

「僕の名前にアイスを選べなんて意味は込められてないから!」

「けちけちするでないぞ雲母。この紅色のいや。桃色のデザインはすとろべれいであろう」

「なんか微妙に言えてないし!無理するな。苺って言えばいいじゃないか」

「ストロベリー」

「言えてるし!」

時流は鼻で笑う。

「カタカナは日本発祥じゃからのう」

「そりゃ、日本人しか読めないからな」

「くれじっとかーど裏の名前はカタカナで書くのが詐欺防止になると聞いたことがある」

「関係ねえよ!いや!カード詐欺のノウハウよりも、時流は変なとこだけ詳しいんだよ!」

「お主も変なとこだけ知識が偏っているではないか!」

「変なとこってどこだよ!」

「セ」

「ごめんなさい」

素直に謝れる男。

水洗い雲母の姿がそこにあった。

「雲母ああああ。我の口は今、苺味なのじゃ。苺以外は味とは認めぬ気分なのじゃ。そなたならわかるであろう?」

「おい。くねくねするな」

「苺以外は認めぬ」

「背筋を伸ばすな」

コペンハーゲンダッツを持つ少女と、今年から選挙権を得た僕の戦いが幕を上げる。

「だって、だって!この桃色の雪のような色を見てみい。桃色の雪など、空から降ってきたら口を開けて待つレベルであろうに」

「桃色の雪っていったら、ドクターふぬぬくを思い出すくらいだがな」

「お主も知っておるか?あの話は感動したのう」

「なんでお前が知っているんだよ!」

「あの話に登場してきた色のアイスじゃぞ!乳製品じゃぞ!お主だって乳は好きじゃろうが!」

「乳製品と乳を同じにするなよ!僕にとって乳は神聖なものなんだ」

「神聖なら我のメリハリボディを気安く触るでないわ!」

「どこにメリハリがあるんだよ!」

「貴様!どこに目をつけておる!」

「ここだよ」

えい!

目を突かれた。

あまりの衝撃に僕は言葉を失う。

「くっそおう!絶対買ってやらねえ!絶対だ!絶対だからな!」

「きららん」

「変なあだ名をつけるな」

「わかった!雲母!いや雲母様!」

「雲母様が安い」

「我の本気を見せてやる」

時流が懐から飴を取り出す。

あの飴は?

「・・・・・・甘露か?」

「名前くらいは憶えていたようじゃのう。では我が5つ数える間はお主の好きにしてもよい。その変わり、コペンハーゲンダッツは買ってもらうぞ」

時流はそう宣言すると甘露を口に含む。

「え?ええええええええええ?」

「5お」

そこには黒髪メリハリボディの美女が立っていた。

「参!弐!零!」

「おおいいいいいい!早すぎる!」

「早くないぞ。もう数え終えた。雲母。お主は約束も守れぬ矮小な男であったのか?」

「ええ?甘露ってなんなんだよ?」

「答えが欲しくば我にこれを買え」


僕は約束を守りコペンハーゲンダッツをレジに通した。


時流はコンビニに置かれているベンチに腰掛ける。


「はふう」


ほっぺたを押さえながら妙に色気のある声を出す時流はコペンハーゲンダッツを口に含み満面の笑みを浮かべた。


柔らかそうな頬。

押さえなくては落ちてしまうのだろうか?

そういえば、おいしいものを食べるとほっぺたが落ちるって比喩。

なぜか最近聞かなくなったなあ。



色を宿した時流が満面の笑みっていうのも妙な感じではあるが、でも、嫌な感じはしない。

嫌な感じどころかとても魅力的に感じた。


「そうじゃのう。甘露の質問じゃったか?」

「そう!甘露の質問だ」


僕は気持ちを取り戻す。


「ん~」


時流はスプーンを食み、いたずらっ子のように笑う。


「にしし。今はこのコペンハーゲンダッツを楽しもうではないか」





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