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奴隷というか下僕

「これで契約成立じゃな」

少女は嬉しそうに笑う。

いや。

契約とかそんなものを交わしたつもりはないけれど。

とりあえず高校生、少女の胸を触る!という事案は避けられそうなので、僕は少女に手を振った。

「じゃあな。スマホばっかりいじってるんじゃないぞ」

かっこいい。

僕は出来る大人だ。


数分前、少女の二次元おっ・・・・・えふんげふん。

胸板を触った事など過去の出来事だ。


踵を返したその刹那、僕の背中に衝撃が走る。


「おい。待て。どこへ行く」

少女は僕の顔に頬を寄せた。

世間様からみたら高校生が少女をおんぶしている状態だ。

平日の昼間に高校生が少女をおんぶしているのだ。


ワイドショーなら答えはCMの後ってくらいの衝撃的な映像なのである。


想像するだけで背筋が凍る思いだった。

そう。

背筋が。

(あれ?)

体温がが感じられない。

人がふれあう時に感じるぬくもりが感じられないのだ。

僕は背中に意識を集中する。

誤解しないでほしいが、違和感を感じるためだ。


「なにを緊張しておる。お主、名をなんという?」

少女の声は吐息がかかる距離であった。

耳がむず痒いほどだ。

「な!僕を訴えるつもりか!?」

後ろめたさがある僕の声はうわずっていた。

「うるさいのう。名は?」

「はっはっ!!!そう簡単に答えてたまるものか!僕の名前は水洗雲母みずあらいきららだ!」

「お手洗い?」

少女の眉毛はハの字であった。

「水洗だって言ってるだろうが!って僕はなぜ個人情報を?」

「まあ気にする出ない、このご時世きらきらねえむというものが流行っておるらしいからのう」

「キラキラネームじゃねえよ!(きらら)ってパソコンで打ち込めばちゃんと漢字変換されるわ!」

「ほほう。下僕のくせに言うではないか。では我のすまほで漢字変換できるか試してみよう」

少女は僕の背中から飛び降りスマホを開く。

本来なら僕の携帯で見せたいところではあるが、らくらくテレフォンを少女の眼前に差し出すのは忍びない。

誰よりも僕が忍びないのだ。


ひょいひょいとスマホを弄る少女。

半笑いなのが気に掛かるが僕は腕を組みその時を待つ。

「な!!!!!!!」

「ほらな。ちゃんと雲母きららって変換されただろう」

「お主!ついったああなるものをやっておるのか」

「見るなあああああああ!」

「いや。笑えぬぞ。本名でついったあああなどど。しかもお主はきらきらねぇむではないか」

「キラキラネームじゃないっていってんだろ!」

「まあよい。お主に語彙がないのはわかった」

「なああ!まだ見てるのか」

「これは小鳥の囀りにすらなってないのおWWW」

「Wを使わないで!?せめて(笑)にして(泣)」

「いやいや。貴方様には感服つかまつりました」

「うわあああ!なぜ謙譲語?」

「アマリチカヨラナイデクダサイ」

「せめて突っ込み入れて」

僕は太陽に照らされ焼けたアスファルトに蹲る。

「なんじゃ。お主。被虐性淫乱症か」

「ひぎゃ??」

僕の後頭部には少女の足が置かれている。

下駄である。

「こちらのせかいではどえむというらしいのお」

「なぜ急に平仮名に」

「なろうのガイドラインを舐めるでない!うっかり発言したらこの世界が消し飛ぶぞ」

「なろう?ガイドライン?」

「なろうにひっっかるな!そのあと我が言った大事な言葉があるであろう」

僕はアスファルトに焼けた額で頭をフル回転させた。

「この世界が?」

少女は嬉しそうに頷く。

「頭の足らぬお主にもようやく分かったようじゃのう。このままいけばこの世界が滅びるのじゃ」

「はあ!?」

僕は驚いて跳ね上がった。

頭に乗せていた重さを遠慮無くはじき返してしまったのだ。

少女が頭を抑えもんどり打っているが気のせいだろう。

僕の背筋力が起こした事故だとは思いたくないものだ。


「この世界が滅びるって!?」

「くっ・・・・・・ようやく本題に入れそうじゃのう」

「世界が滅びると聞いて驚かない人間がいるかよ!それが小学生の戯言だとしても!」

「友達に聞いた話なのだが」

「友達の話かよ」

「まあ聞け。お主。この世界にある量子力学という物はしっておるか?」

「知りません」

「そうか。馬鹿なんじゃな」

「諦めないで!」

僕はアスファルトに正座した。

「まあ簡単に言うと、異世界はあるということじゃな」

正座のかいなく答えは簡単に出された。

「異世界ってあるの!?じゃあ!じゃあ!魔法とか!怪物とか!?」

「無いとは言えぬ。主の言う魔法の定義が分からぬが」

「じゃあ・・・・・・えっと。ここで、お嬢ちゃんと言うのも気が引けるからお名前は?」

「全部言葉にでておるぞ。まあいい。やっと我の名前に入ったか。正直、初対面の相手の豊満な胸を揉むような輩に名乗る名はないのだが、お主の主となったからには名乗らねばなるまい」

「主って」

「はあ?お主、まだわかっておらぬのか?」

少女は腰に手を当てて眉をひそめた。

いや。顰めると言うより八の字だ。

「奴隷になるなら許してやると契約し我と手を結んだな」

「え?握手はしたけど」

「だからか。お主に自我があるのは」

少女はあきれたように溜息を吐く。

「契約?え?」

「本来ならば自我は無くなり我の木偶となるはずなのじゃが・・・・・・。お主、そんな軽い気持ちで我と契約を結んだとはのお」

「契約なんて結んでな・・・・・・・」

「お手」

「わん」

してしまった。

少女にお手を。

「まあ心配するでない。我は悪い者ではないよ」

「ええっ?僕、奴隷?ってかこれじゃあ下僕じゃん」

初めて少女が驚いた顔をした。

「よくわかっておるのお」

「なにが」

「ただの馬鹿だと思っていたが、奴隷と下僕の違いは分かるようなので名前を教えてやろう」

僕は少女になでなでされた。

なでなでされたのだ。

閑話休題。

「え?奴隷と下僕って違うの?」

「違いを分かっておらぬのか?」

「いや。わかってます」

「まあいい。ここで名乗らねば名乗る時機を逸してしまうのでな」

「タイミング的な?」

「うるさいのお。こんな五月蠅い奴隷は初めてじゃ」

まあいい。と無い胸を反り返し少女は名乗る。

「我の名前は時空ときそらじゃ」


この出会いが僕の人生を大きく変えていくのである


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