となり
洞、美紀は語呂が良くないので、海老塚美紀に改名しております。内容に変更はございません。
「雲母兄ちゃん隣りいい?」
「良いも何も。学校はみんなの場所だ。美紀ちゃんがどこに座ろうと誰も責めはしないさ」
海老塚美紀は「へへ」とはにかむと僕の隣に座った。
しかしこれは隣というか、近すぎないであろうか?
僕はなんとなく気恥ずかしい気持ちになる。
「美紀ちゃん大きくなったねえ」
「え?そう?」
美紀は服の裾から自分の胸をのぞき込む。
いや。
胸の事を言っているのではない。
全般的にだ。
え?全般的にってどういう事だ?
大きくなったって言うのは身長とかそういった意味であって。
え?
僕は少しだけ混乱する。
「しかし、雲母兄ちゃん残念だったねえ」
「なにが?」
「一年早く見学に来てたら私のブルマ姿が見れたのかもしれないのに」
「な!?」
「うちの中学校は昨年からブルマ廃止になったんだよ」
「そ。そうか。まあ。ブルマ自体疑問が残るものではあるからな」
「そうなんだよ。先生たちはスカート短くしたら、ハシタナイなんて怒るくせにさ。あんな足をどばーって出してるブルマの方が、よっぽどハシタナイと思うんだけど」
「まあなあ。あれって結局誰が考えたんだろ?」
「女性運動家のブルーマーさん」
「マジで!?」
「らしいよ。とはいえ、最初はあんな形じゃなかったみたいだけど」
「誰があんな形に・・・・・・萌え要素しかないじゃないか」
「なんだかちょっと気持ち悪いセリフ聞こえたから少し離れるね」
密着するように座っていた美紀は少しだけ距離をとって座りなおした。
どうやら僕はセクハラというものをしてしまったらしい。
こんなにも清廉潔白な真っ白い僕が。
「それにしても。お兄ちゃん今日は何しに来たのさ」
雅は首を傾げる。
「ああ。澪の付き添いでね。今頃、妹はテスト受けてるんじゃないか?」
「澪ちゃん学校来てるんだ!!?会いにいかねば!」
「兄としては嬉しいセリフだ。なあ。こんな事、直接聞くのもなんなんだけど、澪っていじめられてたりしないよな?」
「いじめられてなんかいないよ。むしろ男子たちにモテモテさ」
それはそれで、複雑なんだけど。
「そっか。いじめられてなければいいんだ。澪がいじめられているようなら、僕はモンスターペアレントという称号を甘んじて受けようと思う」
「甘んじてうけるようなものでもないと思うけど」
「いや。クレーマーと呼ばれても構わない」
「呼び名なんてどうでもいいよ。怒りたい人って怒るための理由を見つけるって話だし」
「なんだそれ?」
「怒る人は自分のストレスを発散場所を探してるだけなんだよ。怒りたくて理由を探してるだけ。なんにもなくてももともとイライラしてるんだって話」
「そうなのか?」
「そうだよ。イライラしている時、蜘蛛の糸のように怒りを爆発させるチャンスが巡ってくればそこに攻撃をするんだ」
「なんだか理不尽だな」
「そりゃ理不尽でしょ。世の中の怒りって大半は理不尽な内容なんじゃないかな?」
「美紀はすごいなあ。15才だろ?なんか大人と話してるみたいだ。勉強になるよ」
「ブルマとモンスターペアレントの話しかしてないけどね」
そうだった。
「それより雲母兄ちゃんも大きくなったねえ」
「お前は親戚のおばちゃんか」
「ああ。ここで言う大きくなったは身長の事だから恥ずかしがらなくてもいいんだよ」
「なんと。ってか、美紀ちゃんって色々とというか、思ってる事全部口に出すよね」
「海老塚美紀。歯も体も絹を着せぬ女なのさ」
「体にも!!???」
「雲母兄ちゃんは相変わらず変なところで反応するよな」
「いや。体にもって」
「まあいいや。雲母兄ちゃんそこ立ってみてくれよ。身長比べしようぜ」
「ようし。成長期である僕の本気を見せてやる」
僕はすっくと立ちあがる。
美紀はぱんっとお尻についた砂を払う。
「やっぱ、雲母兄ちゃん背伸びたよ。私のおでこが、雲母兄ちゃんの鼻くらいか」
「ふははは。見たか!これが成長期末期の僕の底力だ」
はむ。
僕は首筋に海老塚美紀の唇を感じることとなったのである。