鬼奇譚
お礼が遅くなりましたがブックマークしてくださいましてありがとうございます!
今後もお付き合いしていただければ幸いに思います。
僕は目覚ましの電子音で起きた。
目覚めがよくなるとテレビで聞いてから実践しているカーテンを開けておく作戦により前よりは寝坊が減った気がする。
目覚まし代わりにしている、携帯の時刻を見つめ、アラームを5分後に設定する。
今の携帯は便利だ。
とにもかくにもスヌーズ機能で目は覚める。
問題はそのあとである。
目覚ましを再度5分後に設定するのだが、寝ぼけて操作するのだから失敗もある。
7時5分に設定したはずが8時5分になっていたりするのだ。
しかし、だれがかけた目覚ましでもない。
僕がかけた目覚ましなのだから誰も責めることはできない。
僕はベットの中でまどろむ。
2度寝は最高の快感である。
寝返りをうち、肩の置き場所を決め軽く息を吐きだした。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!」
目が覚めた。
そこには時流がこちらを向いて寝ていたのである。
まじか!
僕の頭は混乱した。
まさか・・・・・・・手を出してたりしないよな?
いやあ。ありえない。
酔って手を出すなんて大人の言い訳であろう。
僕が酔うのは2次元だけだ。
僕はベットに正座して時流の顔を見つめる。
(こいつ・・・・・・かわいいな)
すやすやと眠る寝顔。
穏やかな顔はまるで涅槃像のようである。
ちゅーしちゃお。
「邪気!!!!」
次の瞬間、僕の顔からは鼻血が噴き出していた。
いや。あってはいるよ。
邪気だよね。
でもいきなり人の顔に正拳を入れるって人間としてどうなの?
いや。時流はこの世の者じゃないんだっけ。
「ああ。お主か。おはよう」
時流は目をこすりながら体を起こす。
甚平の裾から何かが見えた気がするが気のせいだろう。
僕は大人だからな。
見えないふりをするのも大人の嗜みだ。
「じろじろ見るでないわ!!」
殴られました。何よりの目覚ましです。
「しかし、なんでお前!俺のベットに潜り込んでいるんだよ」
「ひどい!お主、昨夜はあんなにやさしかったのに!」
「まじか!」
「嘘じゃ」
「なにが嘘で何が嘘じゃなかったんだよ!とにかく全部嘘と言って!」
「下種」
「一文字もかぶってない」
僕の悲しそうな顔など見ることもなく、時流はベットから飛び降りた。
「それにしても、お主。今日は日曜日というものではないのか?早起きだのう」
「ああ。それは」
時流に答えようとした瞬間。ドアをノックする音が聞こえる。
「時流!隠れろ」
「前も言ったであろう。我は人には見えぬと」
「いいから隠れろって。僕には見えているんだから気になるんだよ」
やれやれと肩を竦めた時流は僕のベットにもぞもぞと潜り込んでいく。
「お兄ちゃん。開けていい?」
「ああ。いいぞ。もう起きてる」
僕の返事を待ってドアを開ける澪僕の妹だ。
「お兄ちゃん。あのね」
澪は何かを大事そうに胸に抱いていた。
「ぬおおおおおお!!!」
澪の抱いていたのは僕のお宝である大人の本である。
澪は気を使ってか、背表紙を表に抱いているが、あの背表紙を見間違えるわけがない。
「な!なんなんなあんあなああああ」
澪は上目づかいになり僕を見つめる。
「お兄ちゃん。あのね・・・・・」
「ううううおおう」
「お母さんがお兄ちゃんの部屋を掃除しようとしてたからお兄ちゃんの大事な本は隠しておいたの」
「ああ・・・・・・・。ありがとう」
僕は澪から本を受け取る。
どうだろう?
母親に見つかるより中学3年生という多感な時期の妹に見つかったほうが僕の精神はズタズタなような気がするが。
だいたいなんで、僕の大事な本の隠し場所がばれてるんだよ。
「それとね・・・・・・お兄ちゃん」
「おおお。おおう。なんだよ」
「えっちな本のドックイヤーはやめたほうがいいよ・・・・・・」
僕は立ったまま意識を失うことになるのでった。