光先輩ーひかるせんぱいー
第一話 光先輩ーひかるせんぱいー
オーブンを開くとこんがり焼けたタルト生地が香ばしいバターの香りを漂わせていた。
レモン汁とお砂糖、クリームチーズを混ぜ裏ごしをして、冷ましたタルト生地にゆっくりと流し込む。冷蔵庫で冷やせば出来上がり。私の得意スイーツ、レモンクリームチーズケーキ。
明日はバレンタインデー。友達と友チョコならぬ友スイーツ交換デーだ。私、川相 美音高校一年生は、今、そのことで頭が一杯なのだ。いかに出来る女アピールをせずに美味しいこのタルトを友にお届けするかに明日の私の命がかかっているのだ。
女とは実にめんどくさい。我ながら思う。
私の学校では学科が分かれていて 国際 理数 スポーツ 美術 音楽 と4つあるわけなのだが、わたしのいる音楽学科は特に女子だらけで男の子は3人しかいない。まぁ、その3人は恋愛対象とかそーゆー感じではナイからどーでもいいんだが…。問題は先輩だ。なぜか、三年生の男の先輩はカッコがイイ。だからちよっとおしゃべりなんてしてると、媚び売ってるだのなんだの色々面倒な噂が立ってしまうのだ。そう、だから出来る女アピールして先輩を狙ってんのか?的現象が起こりかねない。しかも、音楽専攻→音攻は料理ベタが多くて、余計目立つのだ。
とりあえず、包んで、余分に持ってって先生にもちょっとあげる。せいぜい、そこまで。
翌日
「おはよー!」
さぁ、菓子配りの始まりだ。
「すごーいー!」「美味しいー!」
良かった…誰のカンにも触らなかった…
放課後は練習室で楽器の練習ーー。
余ったやつたーべよ。
ガチャッ…
あー疲れた…。よっこいしょ。
ドスっ←座る音。
ふーーぅ…モグモグ…
ガチャッ…
えっ?
ひ…光先輩⁉︎えっ!?
俺もちょーだいっ!
あ、はいっ!どぞっ
うまっっ天才だな‼︎
…あ、あの、あ、ども!
光先輩となぜか練習室で2人でタルトを食べてます。
第一話 光先輩ーひかるせんぱいー おわり