表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/150

第42話 物足りない昼食とゴリラ並の握力

「いい? テリーはもっと慎重に行動しないと」


「へーい」


一限目の体育を終えて午前中も座学も比較的ちゃんと真面目に受けて現在昼休み、いつもの中庭にベンチで清水と密会ランチタイム中だ。密会というか対策を練っているというか、説教されています。朝の体育が余程マズかったのだろう、今日はパンをもらえなかった……。自分の所持金で買ったおにぎりセットを食べる他ない。このおにぎりセット、ふりかけかかったおにぎり二つと唐揚げが三つも詰め込まれている最強のセットになっている。これで二百五十円、なかなかにコストパフォーマンスが見事。強いて言えば量が少ないかも。十代の若き体はもっとエネルギーを欲している。これに惣菜パンがあれば完璧なんだけど、今日の清水はパンを持ってきていないみたいだ。はーぁ、自分で買うか。いやでも今年は節約するって決めたばかりだからなー。印天堂65を手に入れる為に人間界で流通している金が必要となる。故に金を貯めることが目的達成と直結する。金を貯めるとはいかがなものか、一つは金を得る収入、そして金の消費を抑える節制この二つである。だからお昼もこのおにぎりセットで我慢するしかない。ここで誤解しないでほしいのが俺は決しておにぎりセットを批判しているわけではないから。十分に満足しているからっ。だってさ、おにぎり二つと唐揚げが三つもあるんだよ? ヤバイよこの組み合わせ、恐怖すら感じるぜ。玉子ふりかけもかかっていておにぎり単品だけでも口へ運べるのに唐揚げが合わさったらもう……世界滅亡しちゃうよ。ああ美味しい、嗚呼美味しい。


「話聞いてる?」


「へいへーい」


「……もう一回言うね。話、聞いてる?」


痛たたたたっ、ごめんなさいごめんなさい! アイアンクローを繰り出してきた清水、その威力たるやエルフの高貴なる頭脳がメキメキと悲鳴を上げて今にも割れそうな程の激痛が走る。さっき授業の合間に全国高校生の体力テスト平均値を見たけど女子の握力は男子と比べると全然高くなかったぞ。握力26キロと書かれていてピンとはこなかったけど、こんなにも強いのか。頭蓋骨の砕ける音が頭の内部から聞こえてくる、聞こえてくるぅ!? 痛い痛い、痛いって。テキトーに返事した俺が悪かったから許してぇ。痛い!


「痛たたたたたたあぁ!?」


「分かった?」


「分かった分かったちゃんと反省するから離して!」


「おけー」


っ、っっ、あ~ぁ痛い……。本当に頭蓋骨が割れるかと思ったぞ。アイアンクローを決めることが出来て満足したのか清水は再び弁当を食べ始めた。清水の暴力久しぶりに食らったな……いやいや、何を俺はほっこりしているんだ。何だ今の懐かしむ思いは。いつから俺はマゾ気質になったんだ。落ち着けテリー・ウッドエルフ、お前はエルフの森次期長候補だぞ。そんな俺がMに目覚めたとか先人の方々に申し訳が立たない。いつも蹴ったり殴ったり頭掴みやがって、どれだけ暴力を振るいたいんだ。普段は無口で大人しい姫子もたまに気が変わったように俺の腕にしがみついて抓ってくるし。あの子も異様な握力を発揮することがあるな。なんだ? 姫子と清水の握力は本当に全国女子高校生の平均なのか? だとしたら俺はもう女子という存在が信じられないよ。何がか弱い女子だ、そんなわけあるか。


「ちゃんと分かってる?」


「はいはい、もう体育では出しゃばった真似はしません」


今日の体育はソフトボール、守備ではホームランの打球をキャッチして攻撃では選手を吹き飛ばす威力の打撃を見せた。なのに周りの反応は超人を見る目、小金は口をパクパクさせる。まるで俺のやったことが異常みたいな反応をしていた。そうは言うけど狩り生活ではあれくらい跳ばないと獲物を追えないから。でも人間界ではありえない脚力らしい。偶然近くにいた清水のおかげで誤魔化すことは出来たけど今後はもっと注意を払って行動しないと。これからの体育は目立たないように大人しくグラウンドの外周を走っていよ。……虚しい。


「エルフは人間よりも身体能力が高いの。動きには十分に気をつけるように」


「清水も握力はエルフやゴリラ以上だと思うぞ」


「あー右手が疼くー」


「痛い痛い痛い痛いっ!? ゴリラは言い過ぎましたすいませんっ!」


アイアンクローはやめて馬鹿になっちゃう!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ