表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/150

第14話 話聞かないお母さん

「大乱闘スマッシュビクトリ~ズ♪」


うろ覚えのタイトル画面のコールを口ずさみながら箒を掃く。

委員長はまだ着替え中、部屋のすぐ傍で待つのもどうかと思ったので家の外に出て待つことに。せっかくなので掃除でもしようかなと思ったわけで前回の時みたいに箒で落ち葉を掃いています。

困ったことに掃いてもキリがない。

無数の紅葉が神社内に落ちている、これだけあったら焚き火が出来るな。


「あれ、君は確か……」


「え?」


ドンビキー対策をのほほんと考えながら箒をフリフリしていると家の中から人が出てきた。

委員長ではなく、年上の大人の人間だ。

清水並に長い黒髪、おっとりとした雰囲気はどことなく委員長と同じものを感じる。

あれ……この人もしかして、


「姫子のお友達の……」


「木宮照久と言います。えっと、姫子さんのお母さんですか?」


「あらあらどうも。いつも娘の姫子がお世話になってます」


あ、やっぱり母親か。似ていると思ったよ。でも母親の方が委員長より表情が柔らかいかも。

微笑みながらこちらへと歩いてきて俺の顔をじっくり見てくる委員長の母親。

若いなぁ、委員長のお姉さんと言われても違和感ない肌の張りと艶がある。

着物ってやつ? 和服を着た委員長母、日本界風と言うのかな。クラスの女子とは違って大人の妖艶な美しさと気品の良さがある。

委員長も将来はこんな美人さんになるのだろうか、まあ今も十分に可愛いですけどねっ。


「あぁ、そうだ。姫子のお友達の……木宮君?」


「は、はい木宮です」


人間界での偽名ですけど。本名はテリー・ウッドエルフだ、とは大声で言えない。

エルフだとバレてはいけない掟があるからだ。

森を守る為、エルフ族の為、何をされるか分からない人間に正体を晒す危険な真似は出来ない。それ故の偽名。

この人間界で本名を知っているのは同じエルフ族の木宮もこみちことネイフォン・ウッドエルフ、そして人間の清水寧々だけだ。

委員長には教えていない、誰一人として言っては駄目な決まりだから。

清水は例外ってことで。


「そんな名前だったような……。それで木宮君はお庭掃いてくれているのね」


「あぁ、暇だったので掃除しようかなと。もっと奥の方も掃いていいですか?」


さっきまでゲームをしていたこと、委員長と外へご飯を食べに行くこと、着替え中の委員長を待つ間勝手に箒掃いている等、諸々の説明もした方がいいのかな。

俺が今日遊びに来ることをもし委員長が親に言ってなかったら下手すると不審者扱いされていたかもしれない。

ちゃんと委員長は言っているんだろうか? とりあえず母親には愛想良く接しよう。


「助かるわ、ありがとうね」


「いえいえ、何度かお邪魔しているからこれくらいさせてくださいよ」


今週は何度もお邪魔しているし、ジュースとかお菓子もらっていますので。

今日なんて朝早くからゲームしに来ている悪友みたいなことしちゃっていますから。

それにしてもお母さんの方は話すタイプなんだな、委員長より話しやすい。

さっきまで部屋で会話に困っていたのと比べて会話が弾む、ような気がする。

若干話が噛み合っていない気がするが。


「そっか、やっぱり木宮君がいるおかげね」


「? はい?」


「姫子の体が弱いのは知っている?」


ん、あぁ知っています。昨日清水に聞いたばかりだ。

委員長は虚弱体質らしくてよく体調を崩していたらしい。早退ばかりで休むことも多々あったそうな。


「あ、はい。でも最近は良くなった方だと聞きましたけどそうなんですか?」


「でもね木宮君が来てくれてからは表情が良くなったのよ」


「俺?」


「一ヶ月前から姫子の容体は良くなったの。風邪も引かなくなったし前より話すようになったわ」


あ、あれで話すようになったとおっしゃるのですか。

口数が少ない大人しいイメージだったのに以前はそれ以上に寡黙だったと。想像絶するな……。

一ヶ月前から、ねぇ。ちょうど俺が転入してきた頃か。

へー、俺って丁度良いタイミングで転校してきたんだな。おかげでスマビク遊び放題。


「特にここ数日は今までにない以上に元気なの。木宮君のおかげよ」


「いやいやぁ、そんなわけないですよ」


「これからも娘をよろしくね」


あの、お母さん? 確かに委員長より話しやすいけど俺の話聞いてます? 

言いたいこと言ってどこかへと去っていった委員長母、こちらが何か言う前に行ってしまった。

な、なんだよ。俺にも何か言わせてくださいってば。

今の雑談中にも歯痒い感じはあった。こっちが質問しても答えてくれなくて一方的に話された。会話が成立していそうで成立していなかったような。

……ま~た変な人と知り合いになったな。

人間界に来てまともな人と会ったことがない気がする。ネイフォンさんは外見がアレだし清水は暴力ばかりだし、良くて委員長くらいだよ。

そう考えると委員長ってオアシスみたいな存在だよな。


にしても、俺が来てから容体が良くなった、か。

前と比べて元気になったというのは事実だろう、清水もそう言っていたし。

けど俺は関係ないと思うな。別に何もしてないもん。

無理矢理お邪魔して放課後スマビクしただけだぜ? それも今週の月曜日からだ。

一ヶ月前から体調が良好になったのと関係がないのは明らかでしょ。

きっと他に理由があるさ。


「お待たせ」


「お。ううん、待ってないよ」


すると委員長がやって来た。フンワリとしたコートとニットの帽子がなんとまぁ可愛い。

母親は美しい系だとすれば委員長は可愛い系なんだよな。

茶色のコートと白の柔らかそうなスカート、黒の長ーい靴下みたいなのを穿いている。

ニーソってやつか、日本界を知る為に観たアニメの中であんなのがあったような覚えがあるぞ。

なんて言うのだろう、勿論すごく可愛いんだけど。

上は暖かそうで下は寒そうな服装だなー。なんで女性って短いスカート穿くのだろうか。

アニメとか観てたら信じられない短さのスカートを穿いている女子ばかりだった。

パンツ見えるんじゃね? それと比べたら委員長の穿いているスカートはまだ長い方だけども、だけどそれって寒くないのかな? もう冬間近だよ。


「……あんまり見ないで」


「あ、ぁあすいません」


あとすごく自分好みな話なのですが、長袖からちょっとだけ指を出す女子がとても可愛いです。

キュンキュンします、ってフェチの話はいいんだよ! 

恥ずかしいだろーが、馬鹿か俺。と、とにかく委員長の服装が可愛いってことですよ。


「それじゃあ行こう。俺もう腹減って死にそうだよ」


「うん。……けほ」


さてと、お昼を食べに行きますか。











委員長の家を出発して向かった先は駅、電車で移動することになった。

外で食べるとは言ったものの委員長自身特に行きたいお店はないそうな。

なら家で食べたらいいじゃん、なんて野暮なことは言わず電車に揺られること数駅、この地域では一番賑わっている駅へと到着。

近くには大型ショッピングモールがある。

休日なだけあって駅のホームは多くの人間で溢れていた。なんて人口密度、吐き気はしないけど気分良いものでもない。


「どこで食べる?」


「……」


「うーん……あそこのショッピングモール行ってみようか」


「うん」


群がる人間の間を縫うようにして移動していきショッピングモールを目指す。

あそこは専門店や品揃えの良い店があるし、飲食店もたくさん出店している。

肉料理のみを扱う拘りのあるお店や回転寿司、ファーストフード店等目移りして眼球が渇きそうだよ。


ただなぁ……ここはあまり来たくなかった。

先週、印天堂65を買いに来たがあの時は本当に恥をかいた。

65が最新ゲーム機だと疑わずにゲーム店へと赴いた憐れな少年は威風堂々と店員にこう言ったのだ、「印天堂65はありますか?」と。

……あの時の店員と店長の顔は一生忘れることが出来ないだろう。

偶然清水と会えてなんとか自我を保てたけど、あのゲーム店は二度と行きたくない。


「照久は何食べたいの?」


「んー、そうだな。ハンバーガーセットってのを一度見たい」


人間界に来て結構な日時が経った。

その日数に応じて朝昼晩と食事を取っている、色々なものを食べてきたよ。

惣菜パンとカップラーメンの存在に衝撃を受けたりお米の圧倒的存在感を味わったり、人間界の食べ物はたくさん口にしてきた。

その中でまだ食べていないものがある。お寿司と鍋とすき焼きとファーストフードだ。……まだまだ結構あるな。

ハンバーガーがね、食べたいです。

注目すべき点はパンを使っていることだ。

これまで数多のパン類を食ってきたがハズレが一つもない。

パンに肉を挟んでいるとの情報だけ入手している、これだけでもハンバーガーへの期待値は尋常じゃなく膨れ上がっています。


「じゃあこっち」


「お店の場所分かるの!?」


「? マップ見たら分かる」


す、すげー。やっぱ住み慣れている人間は違う。

俺なんてゲーム店を探すのに四苦八苦したってのに。

結局マップの見方が分からず建物内をひたすら歩いて見つけるという非効率的な行動に出た俺とは大違いだ。助かる~、早く行きましょうよ姫子様。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ