幼馴染
「湊ー、早く起きなさーい。」
いつもと変わらない朝の風景
「むぅ・・・」
そんな曖昧な返事をすると母さんが下の階から上がってくる
「あんたまたいつもみたいに遅刻ギリギリになるつもり!?いい加減にしないと怒るわよ?」
「遅刻してないんだからいいじゃないか・・・朝ぐらいゆっくりさせてよ。」
そういって俺は掛け布団を羽織った
「そんな親父くさいこと言ってないで!ほら、もう優ちゃんは下で待ってるわよ」
嘘だろ!?っと思いあわてて枕元の時計を見る もうそろそろ8時になるってところだ
俺はベットから跳ね起き、窓から玄関口をのぞいた
「もぉー、湊遅いよ!待ってるから早く着替えして寝癖直しなさいよ!」
「悪い悪い、めいいっぱい急ぐから!」
すぐに着替えて洗面所で寝癖を直し、リビングに降りた
リビングでは玄関の外にいるはずの優が母さんの手伝いをしていた
「あ、湊おはよ!早くご飯食べて!」
「お、おう・・・」
俺の名前は遠藤湊
彼女の名前は吉岡優だ
優とは気付けば幼稚園というか、生まれたときからの幼馴染である
俺が物心ついたときにはすでに一緒に遊んでいた
小学校では6年間同じクラスにならなかったもののいつも一緒に帰っていたし
中学のときは流石にお互い意識し始めたせいか、一緒に帰らなくはなったが定期テスト前は俺の家で勉強会をするのが当たり前だった
高校受験だって優のおかけで受かったようなものだ 前日なんて夜中まで俺の家で面倒みてくれて、あのときはありがたいの一言しか言えなかった
「ほら、早く食べる!さっそと歯磨く!」
「はいはい、わかりましたー」
朝ごはんを急かされたので食パンを牛乳で流し込む そして歯を磨き終えたと同時に、
「ほら、湊もうでるよ!かばん持って先いってるからね!」
「わかった、悪いな。いつもいつも」
「今日に限ったことじゃないでしょ、じゃあお母さん行ってきますね!」
そう言って優は先に玄関を飛び出していった
俺もすぐに追いかけなくては行けないので自室に戻って鍵や時計などを急いで身につけ玄関に向かった
「じゃあ母さん、俺もいってくる」
「いってらっしゃーい」
俺が玄関のドアノブに手を掛けたときに
「あ、どうだ湊。もうあんまり優ちゃんに迷惑かけないのよ!」
「今日に限ったことじゃないだろそれ。わかってるよ」
へいへいっといった感じの態度をとりながら
母さんの言ったことを半分流しつつ俺は優を追っかけるように玄関を飛び出した
優には割と早く追いつくことが出来た
二人分の荷物を持って一生懸命走っているのを見てありがたさと申し訳なさが込み上げてくる
「優!ありがとな、荷物そこ置いといていいぞ」
そう呼びかけると優が後ろを振り向き、やっとか という顔をしてこちらを見てきた
だいぶ息があがってるみたいだ
「もう・・・ちょっと早く・・・きてよね・・・」
「マジでサンキューな、昼にジュースおごるわ」
そういって俺は置いてある荷物を担ぎ、優の頭をポンポンっと叩く
「明日くらいはちゃんと早く起きてよね!・・・ったく」
とうれしがってるのかあきれてるのかわからないような表情を浮かべる優
時計を確認してみると時間には少し余裕が生まれていた
「これなら歩いても間に合いそうだな」
「うん、やっとゆっくりできるよー」
そう言いながら伸びをする彼女を横目におれは盛大なあくびをした
今日は天気も良いし昼寝をするには最高の天気だった
たぶん午後の授業は全部寝ちゃうだろうな
「ねー、湊きいてるの?」
ぼーっとしていた俺の顔を覗き込むようにしながら問いかけてくる
「ごめん、なんも聞いてなかった」
そういうと彼女は大きくため息をした。
あきれた顔でもう一度俺をみる
「だからぁー、今日は遠足の班決めがあるから一緒の班になろーねって」
「ほー、まぁどうでもいいや」
「もぉ!ちょっとは興味くらい示してよね」
彼女は俺の腕を叩き俺に訴えた
とは言ってもそれは俺が決めれるわけじゃなくて・・・
そんな感じのホントに変わらない毎日が今日も始まった
授業は4時間目が始まったころになるだろうか
HRの時間になり予定通り遠足の班決めが行われていた
高校生活が始まって1ヶ月、遠足の位置づけとしては親睦を深める、といったところだろうか
別に班なんてどうでもよかった俺は窓から上級生の体育の授業の様子を見ていた
別にクラスの仲間が嫌いとかじゃなくて、なんと言うか親睦を深めるのだったら別に誰とだっていいじゃないかって思ってしまう。
そりゃ多少は気の合う友達がいたほうが良いとは思うけどさ
「遠藤君はどこの班が良い?」
「ん?俺は余ったところで構わないよ。こだわりも特にないし」
HR委員の子に聞かれたのでそう答えたのだが
「じゃあ湊はあたしと同じ班でいいよねー!」
「なんでそうなるんだよ!?」
「だって別にどこでもいいんでしょ?あたしは湊と一緒が良いし」
「なんだよそれ。お前の都合かよ」
「いいのじゃんいいじゃん、悪い気はしないでしょ?」
「ったく・・・・」
なんだかんだそのまま流されてしまい結局、優と同じ班になってしまった
せっかくなんだから違う班にすればよかったのに、なんでそこまでこだわるのかが俺にはわからなかった
そのまま班分けはスムーズに進み、気付けば昼休みになっていた
流石にお昼までは一緒に食べることはないので朝のお礼を済ませた俺は自席に戻って弁当を広げた
「お前がほんと羨ましいよ」
「どこがだよ・・・全く」
俺が窓際の席でパックの牛乳を飲んでいると、同じクラスの友達の大河智仁が話しかけてきた。
こいつとは高校に入ってから仲良くなった こいつはサッカー部のため放課後に遊んだりなんてことはないが、休み時間はこうやって一緒にいることが多い
流石運動部って感じで運動神経はかなりのものだし、そのうえ明るい性格のためクラスのみんなからの人気度も高い。
「だってなんもしてなくったって吉岡さんが面倒見てくれるじゃんか」
「まぁ幼馴染だしな、よく世話にはなる」
「お前らホントに付き合ってないのか??」
ブブッ!? 牛乳をつまらせてしまった
「ななな、いきなり何言うんだよ!?」
「そんなビックリすることないだろ?結構回りの奴らも言ってるぞ?ほら、さっきの班決めだってさ・・・」
「そ、それは!あいつが勝手に・・・」
「ま、そこは俺が全否定しといたけどな」
ほっ、とため息をつくと智仁に軽く笑われた
正直そこまで変な噂が広まってるとは思っていなくて驚いた
ふと優のほうに目をやると、どうやら向こうもその話を聞いたらしく、やれやれという顔をしながら目をあわしてきた
なんかそういわれるとこっちも無性に照れくさくなりすぐに目をそらしてしまった