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アオノツドイ  作者: ふなつさん


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2/2

第1話

4/10。

昨日入学式を終え、クラスの雰囲気もわかり、いきなり友達と呼べる人もできた。

まあまだたった一人ではあるけれど…

中学時代、少し規模の大きいいじめを受け、一人で日々を過ごしていた私にとって、

たった一人でも、文月さん…じゃない。彩葉ちゃんの存在は大きかった。


ほんの少し、昨日よりも膨らんだ期待を抱きながら、私は電車に乗る。

そこでふと思った。

彩葉ちゃんは、どう見てもクラスの中心にいるような、陽キャなんて言われる女の子。

私なんかがこれからもずっと相手をしてもらえるのだろうか。もしかしたらそんな未来はないかもしれない。

だとしたら、私は………

さっきまでの期待が一変して、不安と焦りになる。

そんなことを考えていると、こんな時に限って到着までが早く感じる。

もうついてしまったのか。

心を落ち着かせようと試みながら電車から降りる。

常南学園の良いところの一つが、駅を出ると、本当に文字通り、目の前が学校ということ。

正直今日ばかりは、一人で歩きながら考えを巡らせる時間が欲しかったところではあるのだが…


少しブルーな気持ちで靴を履き替え、教室の引き戸を開ける。

そこには…………

誰もいなかった。

あれ?

どうして誰もいないのか?

戸惑いながら席に着き、周囲の空っぽの席を見回していると、ガラッと引き戸の開く音がする。

振り返ると、昨日見たばかりの知った顔があった。

二度見してしまうほど整った目鼻立ち。綺麗に梳かされた、サラサラとした髪。

門野くんだった。

「廣田だよな?」

「えと、はい…」

消え入りそうな声で応えると、彼は、

「なに、時間間違えちゃった感じ?仲間だね」

と微笑みかけてくる。

「えっ」

慌てて時計を見ると、本当だ。時計の針は、ちょうど登校時間の一時間前を指している。

「あっ

 今気づきました…」

門野くんが固まる。

そして、私の驚いた顔がよほど面白かったのか、門野くんは少し声を出して笑った。

「廣田ってなかなかおもしろいのな

 普通、教室入って誰もいなかったら気づくだろ…っ」

まだ笑っている。

「バカにしてます?」

と、珍しく普通に返すことができた。

「なんだ、普通に話す時は話すのか

 昨日見ててもあんま人と関わりたくないのかなとか色々考えちゃった」

「あんまり人と関わるのは得意では…」

「俺はお前と話して見たいけどな

 まあ気が向いたら、じゃんじゃん話しかけてくれていいから。

 多分蒼史だって同じこと思ってるよ。昨日の帰りなんてあいつずっと廣田の心配ばっかしてたんだから。」

「ほんとに…?

 なんで私なんかのこと…」

「お前、その私『なんか』ってのやめたら?何事も自信持つところからだぞ」

漫画の主人公みたいなこと言われてしまった。

「気をつけます…」

「その消え入りそうな声も。あとなんで敬語なんだよ…

 え俺ら同級生だよね?」

「多分…?」

「何その自信なさげな返事」

門野くん、またにやにやしてる

「同級生です……だよ。」

「まあ…少しずつな…っ」

まーたわらってる

そんなに私って面白いの?

だったらもう少し早めに才能発揮して、中学のうちから人気者になってたかったな…

「昨日本好きって言ってたよな?

 俺本は読まないけど、アニメは結構見るんだ。

 これとか原作は小説だろ?」


そこからは早いものだった。

門野くん、小説は読まないなんて言っといて、実際めっちゃ知ってるんだよ。


二人で話してたら、気づけば門野くんの横で奥野くんが相槌打っていた。

私がまた固まってると、

「ほらまた固くなってる。

 こいつは大丈夫だって。さっき言ったでしょ。めっちゃ玲那のこと心配してたんだから。」

「えーっ

 なになに

 なんでそんな仲良さげなの!?俺だって廣田さんと仲良くしようと思って頑張って早く来たのに!」

そんなの私が聞きたい。

てか、今門野くん私のこと玲那って呼んだよね?えなんで急に…?

てかてか、奥野くん、今早く来たって…?時計を見たら、後1分でHRが始まる。

まあ早い遅いの感覚は人それぞれか。

「やべっ。俺席戻るわ」

門野くんと奥野くんが席に戻っていく。

奥野くんは去り際、手を振ってくれた。

精一杯の笑顔を返した…つもり。きっと伝わってるよ。

奥野くんのあのしょんぼりした顔は、決して私の笑顔が届かなかったからではないはずだ。


少し静かになった。

不安がかえってきた。

彩葉ちゃんは……

まだ来てなかった。

チャイムがなる。まだこない。

あれ?

チャイムがなり終わるその瞬間。

バーンと音をたて、勢いよく綺麗な女の子が教室に飛び込んでくる。

「セーーーーーフっっ!」

手を広げた彼女に、先生は手をグーにして上に向けることで応えた。

「アーウト」

「ええっ

 初日から遅刻とか幸先悪いよぉ…」

呟きながらも笑顔で、彩葉ちゃんが歩いてくる。

言い忘れていたが、今の席は出席番号順なので、彩葉ちゃんは私の一つ後ろの席だ。

私が怖くて振り返れないでいると、後ろから肩を叩かれる。

ほっとしたのが自分でわかった。

「おはよっ

 玲那ちゃん」

「おはよう。

 えっと… その… 彩葉、ちゃん」

この子、本当に感情が表に出るな。

彩葉ちゃんは、誰が見ても笑ってしまうほどの満面の笑みを浮かべていた。

本当にいい子なんだな。

こんな子が気にかけてくれるなんて、私も少しは希望というものを持って見てもいいのかもしれない。

門野くんがその勇気をくれた。彩葉ちゃんは一番大きなきっかけそのものだ。

後必要なのは、私が変わること。

何よりも重要で、何よりも難しいこと。

でも、私の中に少しだけ、これまでにない覚悟がわいている気がした。

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