5話 エロい言葉しりとり
「たっだいまー、二人におみやげ買ってきたよん。芽依にはこれ」
スーパーへの買い物から帰ってきた椛が私に渡してきたもの、それはフエラムネでした。
「何ですかこの卑猥な名前のお菓子は!?」
「何を言ってる?」
テンションぶち上がった私を見て、椛はドン引きしてるようでした。
「えーと、美紅にはこれね」
椛が美紅に渡したのは、うまい棒でした。
「美紅のうまい棒を……私がフエラムネしろと……!?」
「本当に何を言ってる?」
「頭が悪いのよ、そいつは」
私に対して悪態をつく美紅を、母親の楓さんが「こら」と注意します。
「芽依は頭が悪いんじゃないの。遺伝子が悪いの」
「遺伝子が!?」
楓さんの衝撃発言にショックを隠しきれません。
それ、頭が悪いよりもどうしようもなくないですか?
「なんてね、冗談よ。でも、あまり変なことは言っちゃダメよ」
楓さんは私の頭を優しく撫でると、台所へと入っていきました。お夕飯の準備をするのでしょう。
「ママ、何買ってきたの?」
美紅も手伝うのでしょう、楓さんの後を追っていきました。いつもの日常です。
居間に残されたのは、ろくに家の手伝いもしない二人の子ども。
「私たちも何か家のことやった方がいいんですかねぇ」
「別にいいんじゃない? 子どもは遊ぶのが仕事だよ。だからスマブラしようぜ」
「嫌ですよ、すぐにハメ技使ってくるし……ドンキーで煽ってくるし……」
私はゲームでは椛に勝てません。
というか、大体のことで椛に勝てません。
勉強、運動、人望、センス、その他諸々。
「何でもいいから椛に勝ちたい……!」
思わず口から悔しさが溢れ出てしまいました。
しかし、椛に勝てることなんて、エロい言葉しりとりくらいしか思い浮かびません。
「お? なんか勝負する? 何でも受けて立つよ」
「……エ、エロい言葉しりとり」
「なんて?」
「エロい言葉しりとりで勝負です、椛!」
「嫌だよバカ!」
「何でも受けて立つって言ったじゃないですか! エロい言葉しりとりしましょうよ!」
「あ、芽依、う、後ろ」
椛が私の後ろに何かいるかのように指を指しますが、その手には乗りません。私が振り返った瞬間に逃げる魂胆が見え見えです。
「後ろ? エロい意味で後ろって言ったら」
「芽依」
背後からの冷ややかな声に、背筋がゾワっとしました。
恐る恐る振り返るといつからいたのか、そこには鬼の形相をしたお母さんが、鬼の形相をして(大事なことなので二回言います)立っていました。
「どこでそんな言葉覚えてくるの? お母さんに教えてくれる?」
「え、えぁ〜、そ、その〜、保健の授業とか〜……ですかね?」
「そう。最近の小学校ではそんなこと教えてるのね。伊崎先生に苦情言っておくわ」
伊崎先生というのは私の担任で、噂によると元ヤンで三人くらいは殺しているらしいという恐ろしい先生です。
ま、まずい、私がそんな嘘ついたって知られたら、めちゃくちゃ怒られそうです。
「ご、ごめんなさいでしたぁ! 本当は国語辞典でエロい言葉調べてご満悦してましたぁ!」
泣きながらお母さんに詫びた結果、この場ではこれ以上怒られることはありませんでしたが、私のスマホのフィルタリングはめちゃくちゃ強化されてしまったのでした。




