2話 冬休みよ永遠に
冬休みが永遠に続けばいいのに。誰しもそう思ったことがあるはずです。
冬にこたつで丸くなるのは猫だけにあらず。私だって丸さでは負けてられません。
「邪魔よデブ」
こたつでごろごろにゃんにゃんしている私に対して、慈悲もデリカシーもない言葉が投げかけられました。
神谷美紅。椛の双子の姉です。スティック掃除機を片手にゴミを見るような目で私を見下ろしています。
「デ、デブじゃないですし! 年頃の女の子に対して何てことを言うんですか!」
口ではそう言ってみせるものの、クリスマスから今に至るまでの数々の罪が脳裏を過ります。
ぽわぽわぽわ〜ん(回想シーンに入る例の音)
クリスマス
「え!? 美紅がインフルエンザ!? 余ったケーキが可哀想だから、私が美紅の分のケーキも食べますね」
年末
「え!? 美紅がインフルエンサーに影響されて無茶なダイエット中!? 余った年越しそばが可哀想だから、私が美紅の分の年越しそばも食べますね」
正月
「え!? 美紅がインフェルノに行って帰ってこない!? 余ったおせちとお餅とおしることカレーが可哀想だから、私が美紅の分も全部食べますね」
ぽわぽわぽわ〜ん(回想シーンから戻ってくる例の音)
「だって美紅がインフルエンサーに影響されてインフェルノに行くから!」
「インフルエンザでずっと体調悪かっただけでインフルエンサーもインフェルノも関係ないわよ! てか何よインフェルノって!」
「知らないんですか、地獄の業火を……?」
「知らない方がおかしいみたいなリアクションやめなさいよ。おら、掃除の邪魔よ邪魔」
美紅が掃除機の先端で私の体を小突いてきます。
毎日のお仕事で疲れ果てて久々の休日に居間でごろ寝していたら邪険に扱われるお父さんの気分です。
「美紅、お父さんは悲しいですよ……」
「黙れ。うちのパパはもっとカッコいい。死ねデブ」
ガチ殺気。重度のファザコンで、今でもまだお父さんとお風呂に入ろうとしている美紅にパパネタは厳禁でした。
「言葉のナイフ鋭利すぎません?」
「あたしは真実を言っているだけよ。自分の腹回り触ってみなさいよ」
美紅に言われた通りお腹周りを触ると、ええ、大変ぽよぽよとしていました。
「やばいですね、三個目のおっぱいがありますよ、ここに……」
「あんたの胸は無に等しいでしょ」
「言葉のナイフ鋭利すぎません?」
「あたしは真実を言っているだけよ。自分の胸回り触ってみなさいよ」
「わーん! 美紅のえっち!」
私は号泣して、弾丸のようにこたつから飛び出しました。




