1話 としあきと年明けは似ている
どうやら、年が明けるとおめでたいらしいです。
何がおめでたいのかは分かりませんが。
まったく、おめでたい連中です……。
新年早々、お酒を飲んで騒いでいる親戚たちやそのお友達連中を見てニヒルにほくそ笑んでいる小学生、他にいますか、っていねーか、はは。
「おめでたい連中」
いました。しかも私と違って声に出しています。
居間の隅っこにいた私の隣に座りながら、悪戯っぽく笑う女の子。
「って思ってるんでしょ、芽依」
私の心の声を勝手に代弁しやがっていただけでした。
「椛、人の心を勝手に読まないでっていつも言ってるでしょう」
「ふっ、芽依が分かりやすすぎるのよ」
無表情クール系黒髪ロングの私が……分かりやすすぎる……?
予想外の言葉に、思わず背景に宇宙を背負ってしまう私です。
「馬鹿な、そんなはずは……じゃあ、私が今考えていることを当ててみてくださいよ」
椛ごときでは絶対に当てられないようなことを考えてやろうとおもいます。そうですね、例えば……としあきと……。
「としあきと年明けは似ている?」
「!?」
思考を読まれるどころか先回りされた!?
「私って……サトラレだったんですね……」
十一年生きてきて明かされる衝撃の事実でした。
いや、でも、椛にいつも心を見透かされてたし……じゃあ、いつも考えていたあんなことやこんなことも周囲には筒抜けだったんですね。死にたい。死んでしまえ私。
「サトラレって何?」
勝手に死にたくなってる私の隣で、椛は疑問の表情を浮かべていました。
「芽依、椛」
頭上からの声に顔を上げると、お母さんが私たちにポチ袋を差し出していました。
「わっ、優ちゃんありがとー!」
椛は自分の叔母である私のお母さんのことを、ちゃん付けで呼びます。三十代なのに小学生と見分けが付かないからといって、不敬です。
「芽依、どうしたの。元気ないわね」
「お母さん、私、サトラレだったみたいです」
「そう。元気出して」
「何ですかその娘がまたおかしなことを言ってるみたいなドライな態度は」
「まさか。私はあなたが生きているだけで嬉しいわ」
無表情でそれだけ言って私にお年玉を渡すと、お母さんは騒いでる親戚たちのところへ戻っていきました。
我が母親ながら適当というか、読めないというか……。
それからも何人かからお年玉をいただきました。両手いっぱいのポチ袋、幸せいっぱい夢いっぱい。これはおめでたいです。あけましておめでとうの意味を今ようやく理解できた気がします。
「さぁて、一番しょぼいのはどいつでしょう。やはりニートでパチンカスの芹沢さんでしょうか」
「新年早々最悪の吟味するのやめなさいよ……」
「椛、また私の心を読みましたね……?」
「口から溢れ出てたのよアホ」
ちなみに芹沢さんからのお年玉は、良いご縁がありますようにというメッセージカード付きの五円玉でした。




