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一章 第二話 『見え出す記憶』

 幾万年か前に大きな争いが起こりました。遠い遠い不思議な星で起こりました。そこには四つの大きな国がありました。その国たちは互いに仲良くやっていました。ですが、幾千年も前に飢饉が起こり殺し合いが始まってしまいました。其の争いの後は何一つ争いはありませんでした。ある時までは。

 この星にはたくさんの種族がいました。そして種族が違っても子を授かることができました。その子供達は沢山の混血の名をもらいました。

 さらにこの星にはいくつもの術がありました。炎を出したり水を出したりする分かりやすいものから、複雑で遠回しな面倒な術もありました。それらをみんな使えました。術によって素となるものが違うのでたくさんの分け方がされました。

 けれどもある日、海の向こうの未知の闇から何者かが攻めてきました。見たことのない異形の体をしていました。目の数が五つだったり、皮膚が青かったり、蜘蛛のように手足をはやしていたり色々でした。どんなに様々な姿形のヒトがいる四つの国どこの場所でも見られたことはない姿でした。操られたように無機質に動き、死ぬことも厭わないで真っ直ぐに向かってきます。戦わなくてはいけませんでした。

 それらの軍勢に立ち向かったのはある旅団でした。九人の旅人でした。悪戦苦闘の末に旅人の一人がこの星を丸ごと氷で包み、時を止め、みんなを眠らせました。戦いの最中に空の果てまで行ってしまったヒトたちは『廻生』を受けました。そして、蘇ることが決まりました。

 そうして戦いは一旦止まりました。この氷が解かれるまでは、きっと戦いは止まりました。

 これでこのお話は終わりです。そして次の物語の始まりです。


 それが『死皇』の物語です。


001



「僕が『自分探し』の為に旅をしている、って言った事は覚えているかい?実はね、他にも理由があるんだ。聞きたい?」


 彼は意地悪そうな笑みを浮かべてこちらを覗き込んだ。彼の大きくて綺麗な瞳がボクの目に飛び込んで来た。


「そんな風に、言わ、れたら、聞きたくなる。教えて」

「いいだろう。特別に教えよう!」


 彼はニヤリと口を歪め、いかにも悪知恵を働かせている顔だった。


「他の理由はね・・・・・・」


 彼の口許がボクの耳に近づき囁いた。


「忘れている何かの『記憶』を探しているんだ。リースは知ってるけれど他の人には秘密だよ?」


 言い終わると彼は何かを耐えているように小さく笑った。


「分かった。誰にも言わない」


ボクも仲間に隠している事がある。でもまだ言えない。今じゃない。それにヒトは秘密を持つものだ。


ボクは旅が面白そうだったから連れて行ってもらった。世界一周を目標に様々な地域場所を巡り知り、調べるのはとても楽しい。その地域の伝承や言伝え、歴史や物語。たくさんの物事を知ることが出来る。自分の心の中にある記憶の雑記帳に見たもの感じたことを書き込み、想像し発見して人に伝えるのは私にとって一番に楽しいことだった。旅に出るまでは知らなかった事がどんどん上書きされていって、いつも新しいものばかり。あの街がボクの居場所だと思い込んで周りを見ようとしなかったあの時の自分に伝えたい。世界はこうも毎日、新しいものと知りたいものに溢れていると。外はこんなにも明るいのだと、あの時の自分自身に伝えたい。

旅に出る前のボクは、特定の友達か家族としか話さず、新しいもの未知のものを怖がって挑戦せずに立ち止まっていた。そして、いつも資料館や作集館で過ごしていた。いつも同じことの繰り返し、それが自分のせいだって事は嫌でも分かっていて、でも、親には将来はどんな事をしたいのか聞かれると言葉が出なくなって逃げてしまう。そんな自分に転機を与えてくれた来度。

感謝してもしきれないと思う。連れ出してくれてありがとう。


『転生』はその魂に新たな機転を与える。それが良い方に向くか悪い方に向くかはその魂しだい。その二十数グラムの浮遊物体はその者の人生を決める。



002


吉崎千夢ヨシザキチム


 今日から小学校の最高学年になる身だった。

いつも通り寝坊をかまそうとしたら、妹に叩き起された。


「姉ちゃん!起きて!今日こそは起きて!」


 朝から騒がしくて元気な奴・・・・。あー、起きたくない。布団に潜っていたい。


「ンン・・・・・・。ハイハイ、起きました起きました」


既に頭は冴えているけど体の方はまだ目覚めていない、だからもう一度寝たい!私は寝たいんだァァァ!と心で思いながらベッドから降りた。このままでは布団がはぎ取られることを危惧したからだ。布団にくるまりながら着替えたいが為に。要はクッソ寒い。もう春だよな?

窓の前を通ると朝日がカーテンの隙間から差して私の目を直撃した。


「まっぶし!痛い!」


お陰で目が覚めた。

「姉ちゃん、二度寝しちゃダメだらかね」と妹にしっかり釘を刺されてしまった。

 コイツ、容姿は良いのにしつこいんだよなあ。まあ好かれるけども。

部屋を出ていく妹の方をちらっと見てそう思った。妹の名は「ろん」。あまり使わない字だから最初は読めない。でもその容姿はひどく眼を引く。肩のところで切り揃えられた黒く美しく艶のある髪。肌は白く体の線は細い、そして他の子より少し背が高い。少し垂れ気味な目に長いまつ毛、整った眉。さり気ない気遣いが出来、誰にでも平等に接し、正義感が強い。黙っていれば美しい可憐な少女だった。つまり口は五月蝿い。


一方私はというと、背中まで伸びたあまり手入れをしていないボサボサの髪。長く伸びた前髪は更に暗い印象を与えた。肌は白いけれど無茶をして傷だらけの手足。決して細くは無いけれど太くも無い身体。ちむ、という名前のせいで小さく見られがちだが、他の子より背は高い。目は腫れぼったい。引っ込み思案で好きなことには突っ走る、相手に迷惑をかけてばかりの性格。そんなんだから私はよく妹と比べられる。

 もう慣れたからいいけど。


「妹は出来るのに」「瓏ちゃんの方がいい子ね」「対象的な姉妹」「妹さんは優等生」「それに比べてお姉さんは」「陰気臭い」「可愛げが無い」「暗い子ね」 


 今まで散々言われてきたことが頭の中で再生される。五月蝿い、黙れってんだよ。そんなん分かってらァ。

私はその事について考えるのをやめ制服に着替えた。今日は風が強くなると言っていたので冬用のスラックスを履く。眼鏡を一度外し汚れを拭き取る。これがなければ私は生活ができない。それほどまでに目が悪いかと聞かれれば『ノー』と答えよう。


 では何故掛けているのか。それは、私の目が『良すぎる』からだ。不思議なことにただ遠くが見えるだけではなく、物の内部まで細部まで見ることができる。つまり、目そのものが望遠鏡で顕微鏡で透視機なのだ。そんな目が生活に支障をきたさないわけが無い。だから、この眼鏡は私以外はかけてはいけないし、私の生活必需品なのである。


「何時もと同じ」


部屋の姿見で自分の姿を見た。やっぱり私は瓏なんかより遥かに劣っている。ピアノだってダンスだってもう瓏の方が上手だろう。アイツに勝てるものはもう無い気がする。

 それにしても部屋が汚い。足の置き場すら無いに等しい。


(自分の気持ちさえ整理がつかない。それに部屋の整理すらできないのか)

「朝ごはーん!降りてこーい!」


下の階で瓏が私を呼んでいた。今日の朝ごはんは何かな。

今日の朝ごはんはお茶漬けだった。梅干しが丸々入った酸っぱいお茶漬け。食べ終わった時、やぁッと本調子になってきた。歯を磨いて制服を羽織り、ランドセルを背負って靴を履く。忘れちゃいけない、読みかけの本も持っていく。


「行ってきマース」


外に出れば桜が咲き乱れ、蝶々が舞踊り、草花が春風に揺られていた。蒼空を見上げれば雲はなく澄み渡る青。いかにも始業式に相応しい日だった。


 始業式、ね。今年は誰と同じ組だろうな。


家から学園までは由緒ある神社を挟んですぐにあった。その神社の鳥居に礼をして学園に登校するのが私の日課だ。その神社は季節によって外観がコロコロ変わる。ある時は桃色に染まり、ある時は旗が上がって七五三をしに来る方が沢山来る。常夏の夜は提灯が道を照らし屋台がずらりと並ぶ。そこまでは普通の神社だ。でもその神社はなんの行事もなさそうな時期に一等豪華になる。豪華という言い方は合ってないかもしれない、一番品位を感じさせるのだ。一週間程その装いは続く。でも私は理由を知らない。


 なんの行事なんだろうな。


今日もその神社の鳥居を通り過ぎた。神社を通り過ぎれば学園が見える。広いグラウンド、大きい校舎、校門の前に止まる高級車の数々。

 今日はどんな高級車が見られるかなっと。

この学園は金持ちの子も多く通っている。よくもまあこんな辺鄙な場所に建てたとは思うし、そしてよく来るなあと思っている。だがしかし、伝統ある制服、行事、校舎。質の高い教育、信頼のある教師。様々な理由から富豪の家々に選ばれる。有名な企業、芸能人、医者、投資家、大学教授、パイロット。お陰で図書館の本が充実していて私は嬉しい。

 今日で借りた本は読み終わりそうだ。明日図書館に返そう。まだ開かないよな、図書室。委員会も何も決まってないし。新しい本も入ってくるよなぁ・・・・・・。

校舎の玄関前に行けば数人の児童が学年ごとの組分表を囲んでいた。私はその間に入って自分の名前を探した。


 六年六年・・・・・・。何処だ?私の。


数分立ち止まって探した。やたらと知っている名前が目に付く。大杉健眞、山城千佐都、宮花結芽乃。まだ私の名前は見つからない。


六年三組三十五番 吉崎千夢


やっと見つけた私の名前。確認したら直ぐに場を離れる。振り返れば後が詰まってきていた。靴箱で自分の組と番号を探し、履いていたスニーカーを入れ上履きに履き替える。螺旋階段を昇って自分のクラスと扉の上についている札で組を確認しながら教室に入る。まだ人はまばら、同じ組になって喜んでいる三人組や誰がくるかとそわそわして落ち着きがない人、担任の先生が誰かを当てようとして教師用ロッカーを観察している奴。

とりあえず私はやる事が見つからないし特に仲がいい人もいないから自分の席に座って本を読み始めた。私はすぐさま本の世界に引きずり込まれた。激しい戦闘シーン、相棒の死、弔い。それらをテンポよく繋げるこの作家さんは尊敬する。


私は本の世界にのめり込みすぎて時が経つのを忘れていた。その興奮、高揚に浸りたくて最後の文を何度も読み返す。指でなぞりながら一語一語丁寧に読んだ。

 もうどれくらい経ったかな。もう現実に戻らないといけない。でも戻りにくいな。

余韻に浸っていたい気持ちとそろそろ戻らなければならないという意思のふたつで葛藤した。まだ浸っていたい、感傷していたい。

その時、背後に誰かが近付いて来る気配がした。


「千夢ちゃん!同じ組だね!よろしくお願いします!」


やっと私の意識が現実の世界に戻ってきた。この声は結芽乃か。


「うぉぉお。ビビったぁ。よろしくぅ」


結芽乃にビビったのはマジだったもんだから、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「結芽乃、はしゃぎすぎだよ」


結芽乃の後ろから光梨が来て、結芽乃を注意する。


「ウグッ、ごめん」

「あっ、光梨。結芽乃ちゃんも千夢も」


健眞も登校してきて、私の周りはかなり賑やかになった。

それから教室では担任の先生の発表、級友たちの確認や自己紹介、明日の日程や持ち物を確認してその日の学園は終わった。

学園からの帰り道、私は朝と同じ様に神社に寄った。周りに立っている、神社についての看板に何かあの行事についてのヒントがあるか、それを探しに来た。看板自体はすぐ見つけられた。


 【窺鵺神社】


 でもそこには何年に建てられたのか、其の神社の教訓、現在の神主さんの名前しか記載されていなかった。私は思った通りの情報が得られず、不貞腐れながら家に帰った。

 そういえばこの神社の名前、知らなかったな。

 何回もこの神社に、祭りに来ているはずなのに知らなかった。


家に帰って部屋着になり、昼ごはんを食べてゴロゴロしていた。まだ十二時にもなっていない。スマホであの神社について調べたり、誰かの書斎だった場所の本棚から気になった本を引っ張り出してリビングでソファーを占領しながら読んだり、音楽や絵師さんのメイキングを見たり。そうしているうちにあっという間に時間はすぎて一時を回っていた。その頃にはもう私はやることが無くなって暇つぶし道具も飽きてしまっていた。


「・・・・・・寝るか」


私は自分の部屋で畳に寝転がり、そのまますぐに寝てしまった。風が強くなって、窓がガタガタと煩かった。


003


目を開けたらそこは、いつか何処かで見た景色だった。

 何処だっけか、此処。見たことあるな。

その場所は暗く、有るのは蝋燭を灯した洒落た洋灯。壁の全面と迷路の様に立ち並ぶ本棚。見慣れない文字で書かれたやたらと分厚い数万冊の本たち。せめてもと置かれたような椅子と机。たったそれだけだった。でもそれは私の興味を引き立てる要素には十分にもってこいだった。私の他に人は五人もいない。すごく静かで落ち着く場所だった。そして私好みの建物でもあった。

私はとある何かの本を立ち読みしていて、私自身は思うように動かない。まるで記憶だけを見せられているような気分だった。今の自分の背格好は分からない。なんせ鏡も何も自分の姿を映せるものもないし、そもそも自分の意思で今の体を動かす事が出来ない。でも、二つだけ分かることがある。一つ目はは私の髪は背中まで届いて、藤紫色、髪は結んでおらず少し毛先が絡まっている。もう一つは服がかなり上等なものだということ。オーバーコートなのか袖をたくさん捲っている。

ちょうど本を読み終わったのか、本を戻し次に読むものを選ぼうと、隣りの本に手を伸ばした。その時、他の人の手が触れてお互い顔を見合せた。

背は私より十センチ程高く、細身だった。フードを深く被っていて顔は見えにくかったが、オッドアイなのは分かった。歳は十五くらいだろうか。

 綺麗な人だな。中性顔で性別が分からない。


「すっ、すみません!あの、えっと、その・・・・・・」


私の口が勝手に動いた。


「いえいえ、こちらこそすみません。あの、少しお尋ねしても宜しいですか?」


その人は美形なだけでなく、丁寧な物腰で愛想も良かった。

 こんな完璧な人いんのか。


「ど、どうぞ。ぼ、ボクで、よけれ、ば」


私の口調はどもりにどもりまくっていた。


「良かった。ありがとうございます。尋ねたい事と言うのは歴史書の場所なんですが、知っていますでしょうか?」

「あ、は、はい。しっ、知っていま、います。こ、こちら、です」


私たちは奥の方へと移動した。やっぱりどの文字も読むことが出来ない。


「ありがとうございます。お礼は何がよろしいでしょうか」

「だ、だい、じょうぶ、です。これ、く、くらい、のこと、は」

「そうですか?では、改めてありがとうございます。助かりました」

「お、お役に、た、てて、よ、良かった、です」


そして私たちは別れた。


「ケイ。探したンだけど。ホンットすぐどっか行く・・・・・・」


後ろから気配なく話しかけられて私は驚いたが、この体の主は驚いていなかった。この体の主の名前はケイ、というらしい。


「うん。ヤブサ、ごめん。本の場所、教えてた」

「珍しいね。ケイが初めて会う人と話せるなんて」


話しかけてきたのはヤブサと呼ばれた子だった。くせっ毛な栗色の髪、垂れ気味細目な苺色の瞳、飛行パイロットがつけるようなゴーグルを頭にしていて、私より少し小柄だった。どこか知人に似ているところを感じた。


「うん、自分でも驚いた。でもね、その人、凄いキレイ、だった」

「ケイがそんなに言うほど綺麗なんだ。一目でいいから見たいなぁ」


その子は雰囲気はミステリアスだったけれど、口調はふわふわしていた。


「そろそろ暗くなるよ。今日もお店手伝うンでしょ?ワタシも怒られたくない」

「もう、そんな時間?早い。名残惜しい」

「さ、行こうよ」

「うん、分かった」


そうして私たちはその建物を出た。

外に出てみれば空は夕焼けに染っていた。反対側はもう暗くなって星がちらほら見えていた。

「綺麗だ。『映景エル』、していい?」

「お早めにお願いね」


 える?なんのことだ。


そうすると私の体は指で四角を作り、空を当てはめた。そして、一息ついて何かを唱えた。


「『この景色を我が前にして映し作り給え』」


言い終わると手の中にはガラスのような薄い物体があり、その中に目の前の景色が映っていた。


「うん、上手く出来た」


私の顔は満足気に笑った。

 今のは、魔法なのか?


「ほんとに『映景エル』得意だよねえ。ワタシはスッゴイ苦手なンだけど」

「好きだから、キレイだから。頑張った」

「へえ、そうなんだ。あ、じゃあケイは課題終わっちゃったのか。ワタシはどうしようかな」

「そっか。どの力、使ってもいい、何か作る課題、ボク、終わったのか」

「まさかのまさかで課題のこと忘れてたの?」

「うん、忘れてた。危なかった」


 まじか、忘れてたのか。


「良かったね・・・・・・」

「うん。あ、なんか店混んでる」

「ホントだ」


この体の主の店はやたらと混んでいた。窓に群がるたくさんの群衆、店から聞こえる騒がしい声。


「宿に泊まっている人になんかスゴい人でも来たのかな」

「とりあえず、裏から、行こう」


裏から入ると、店内は余計に騒がしさが増した。


「何があったの?」


ヤブサさんは従業員さんらしき人に聞いた。


「おや。ケイちゃん、ヤッちゃん。帰ったのかい。すんごい美人さんな二人組がこの店に泊まりに来てね、それであの賑わいようなんだ。こちらとしてはお客さん同士仲良くやるのは構わないのだけどね、他のお客さんの迷惑になってしまっていて困っているんだ」

「そうなんだ。美人さん、二人組」

「誰だろう。チラッとでいいから見たいもンだね」

 どんな人だろうな。


ホールからの賑わいが裏の厨房にまでガヤガヤと聞こえてきた。


「あんちゃん、どこから来たんだい?」

「あの、私たちとお話して貰えませんか?ちょっとでいいので!」

「ホント綺麗な顔だねぇ」

「とても美しい髪だ。秘訣はあるのだろうか」

「お、飲める口だねえ、君。もっと飲むかい?」


ホールはその二人組のことで会話が持ち切りだった。でも、肝心の二人組の姿は群衆に紛れて見ることが出来ない。


「さあ。どこだと思います?」

「ありがとう。私を誘ってくれて」


その中から一際秀麗な美声と一際上品な美声が聞こえてきた。

客はその二人組に目がいって食事も酒もあまり進んでいない。だが、注文はしているので料理が各テーブルに運ばれてくる。商売上がったりだ。高い酒も開けられて、今月はきっといつもの売上の三倍近くにはなるだろう、みたいに思った。

 なんだなんだ、何でこんなに自分事みたい思ってんの。


「そろそろ部屋に戻りたいと思います。楽しいお時間をどうもありがとうございました。一週間ほどはこの街に滞在するので以後よろしくお願いしますね」


秀麗な美声が彼らに言った。


「そうだな。皆様、楽しい会話をありがとうございました。また是非ともお声掛けください」


上品な美声が彼女らに言った。


「ほらほら、他のお客様の邪魔になっていますよ。そろそろ夕飯の頃でしょうかね」


二人のその一言で群衆はゾロゾロと自分の用事を思い出し、口々に「ありがとう」といいながら店を出ていった。

 まるで鶴の一声だ。スゴい。


「お客さんに、助けて貰った。あっという間に、いつもの風景、戻った」

「もしかしてだけど、あの人達が噂の美人さん二人組?」

「そうみたいだね。後でお礼の品を届けなければいけないな。売上もかなり上がっているし、三倍くらい上がったかな?」


従業員さんが厨房の仕事をしながら言った。


「あの人、作集館で会った人」

「え?どっちが?」

金青こんじょう色、の髪、の人の方」


 あ、あの人か。ん?さっき酒飲んでたよな。十五くらいに見えたけど本当はもっと歳いってるのか?


「さっき二人ともお酒飲んでたし、『解毒酒ウォルカ』は使えるってことで合ってる?」

「うん、あってるよ。後で夕餉時に呼びに行ってくれる?」

「ボクが行く」


 この体の主、やる気あるな。


「うん、じゃあよろしく。そろそろ夕飯だから、食べ終わったら手伝いに来るよ」

「ありがとう、ヤブサ」


その後、厨房の片付け手伝い、ロビーやホールの片付け清掃を黙々とやり、一時間後にあの美人さん二人組を呼びに行った。


「来度-ウェルザン様、リーシェイ様。夕餉の時間になりましたのでご連絡に上がりました。準備が整い次第、一階の広場にお越しくださいませ」


深くお辞儀をしてスラスラと出てくる言葉遣いはさっきとは別人のようだった。


「この部屋をお使いになる際に何か他に不自由なことはありましたでしょうか。可能な限りで修繕させて頂きます」


 あの人、ライトっていう名前だったんだ。やっぱり性別が分からな、い。

突然私の頭が痛みだした。やたらと痛い。トンカチで頭を殴られているようだった。

 ライト、らいと。来度?

しばらくの間、痛みは続いたがやがて消えた。


気づけば私はいつの間にかホールに移動していて、ライトさん達に食事を届けようとしている最中だった。色とりどりのサラダ、熱いスープ、ロールパンみたいなもの。どれもこれも美味しそうだった。

 ここって、ホテルかなにかってぐらい至り尽くせりだな。うわっ。あの装飾品とか絶対高いだろうな。でも、街の人とか普通に出入りしてるし、レストランを兼ねた宿場なのかな。

建物は街中に馴染み、豪奢なわけじゃない。照明の灯りは火で作られている。其のせいか夕方でもある程度星が見えていた。


「お食事をお持ちしました。ごゆっくりどうぞ」


 初めての人とはどもるのに、お客の前ではどもらないのな。


「ありがとうございます。あの、図書収蔵館でお会いした方でしょうか。違っていたらすみません」

「え?」


よく見るとその人はオッドアイだった。声の調子、ものの言い方。なんとなくあの建物であった人と似ていた。

 もしこの人があの時会った人なら、この人は一体何をしにここにきたんだ?


「えっと、歴史書の場所をお訊ねしていた方でしょうか」


それを言うと、ライトさんは顔をパッと明るくさせてこちらを見た。うわっ、マジで顔良いな。


「そうです!あの時は本当にありがとうございました。またこうしてお会いできて嬉しいです。身勝手なお願いなのですが・・・・、あなた様の都合でいいので、また、本の場所や歴史のこと伝承のこと等を教えてくださいませんか?」

「は、はい。あ、明日なら、朝、からあい、空いてるので、ご、ご案内出来る、と、お、思い、ます」

「本当ですか?ありがとうございます!」


またライトさんは顔を綻ばせた。少し幼い感じがしていた。


「ねえ。ライト、せっかく持ってきてもらった料理が冷める。食べなよ」


そう行ってリーシェイさんはライトさんのことを嗜めた。リーシェイさんもやっぱり年相応の口調だった。


「はぁい。あ、ありがとうございます。用意が出来たら明日、僕たちの部屋に呼びに来てくださいませんか?」

「わ、分かりました。では、また後ほど」


そう言って、私の体はその場から立ち去った。素が見れた、そんな感じ。厨房に入ろうと扉を開けたら眩い光に私は包まれた。




004


気がつくと私の目の前には満点の星が輝いていた。辺りが木で囲まれていることから此の場所は森だと判断した。近くでは焚き火の焔がパチパチと音を立てて薄暗く辺りを灯していた。


 こんな星空初めて見た。うわ、綺麗過ぎて語彙力吹っ飛ぶ。ウゥゥゥンン、この状況から察してみるにキャンプ、いや野宿か?いやいやいや、野宿て。・・・・・有り得んでもないな。世界観的に。

体を動かしてみるとさっきとは違って自由に動けた。立ってみて、少し跳ぶ。すると一メートルくらい浮かんだ。


 うわっ、めっちゃ跳ぶじゃん。もしかして私、幽霊にでもなった?幽霊離脱、とか。


下を見ると四人の人が焚き火を囲んで寝ていた。一人は木に寄り掛かって眠りながら辺りを警戒しているようだった。そのほかの三人は地べたにごろ寝していた。流石に下になにかは敷いていたけれど。そこで私は気づいた。

 木に寄り掛かっている人はライトさんな気がする。あそこにいるのはヤブサさんもリーシェイさんか?このメンバーからするとあの人はさっき私だったケイさん?

今まで顔を見れていなかったのでその顔を拝んでみたいと思い、ケイさんに近付くのを試みた。抜き足差し足忍び足。慎重に静かに起こさないように。やっとのことでケイさんの顔が見られる位置に来たのでその場でしゃがみケイさんの顔を覗いた。

 なんだろう。すごい親近感ある。つーか見た事ある。


ケイさんの顔はどこかで見た顔だった。

 私、か?いやいやいやいや。んな訳無いそんな訳・・・・・・。どーしよ、すんごい似てらァ。


つまりで言うとケイさんが起きた。目を開けたら鏡越しか写真越しで見る私にそっくりだった。嘘か誠かケイさんは目の前にドカンと座っている私に目もくれずムクリと起き上がった。服や地面が擦れてガサガサと少し音を立てる。


 あー、これ。見えてない感じか。


「どうした?ケイ」


突然後ろから声がして吃驚した。声の主はライトさんだった。


「目、覚めた。寝れない」


ケイさん、凄いカタコトで喋るな。話すのが苦手なのか?


「そっかあ。んー?こっち来るか?」


ライトさん、ちょっとの物音で起きるのか?耳がいい、のかな。もしくは警戒心が強いとか。


「行く。なんか話して」

「寝ないのかい?明日も早いよ」

「詩、歌える?寝れるかも」

「歌ねぇ。んー、いいよ。こっちおいで」


ライトさん、お兄ちゃん感が溢れ出てる。面倒見良いな。そして彼はギターのようなものを取り出した。



「夜を支える 星たちの ヒカリを願う 飾り月夜

碧が尽きて 紅が来て あたりを照らす 蓮華花

踊れよ踊れ 狂い咲け 舞う散る落ちる 風の唄

蒼空を映し 世を映す すべてを運ぶ 海の囁き

空を掲げた 天のハコ うなずく華は 向い咲く

見なおせと 心のこえ 澄ましてみれば 気づくもの

みずからを 疑いなされ 誰が仰るというものか

己を守る 己しか出来ぬ 信じることこそ 美しい」


 綺麗な詩だな。歌詞に込められた意味とか興味深い。

気づけばケイさんは眠っていた。ライトさんは優しく笑った。そしてケイさんのことを抱き抱えて寝かせに行った。案外力あるな、ライトさん。

そしてまた、私の視界は白い光に包まれた。




次に映し出されたのは戦場だった。高い天井、太い石柱、教会のような窓、見れば見る程広く大きく見えるこの場所は唐紅の炎に染っていた。崩れた天井からは戦場に不似合いな陽の光が差して、ステンドグラスからは色とりどりの灯が照らす。叫び声、泣き声、怒鳴り声。硬い金属が交差する音、銃の発砲音、弓矢の当たる音。血で染るはずの床や壁は他種族の乱闘で真紅と群青と織部・・・・・・。何故か鮮やかに染まっている。

 あそこに括り付けられているのは誰だ?

一番高い柱に括り付けられていたのは白百合色の長髪にまた白百合色の服を着て、たくさんのガラクタを身につける。それに不釣り合いな朱殷のペンキ、いや血で染る胸部。そこには鋭利な短剣が突き刺さる。細い首、腕、脚は太く黒く強固な鎖で繋がれていた。秀麗な顔の口からは血の滴が垂れ、目を閉じてまるで眠っているかのよう。今にも息絶えそうに思えて、私は飛び出したい衝動に駆られる。私は、その人から目が離せなかった。


 助けないと、助けなきゃ。でも、どうやって。そもそも私にそんな力は無いし、だけどムシャクシャする。嗚呼、あぁああ嗚呼!何で、何で私はこの情景を見た覚えがある?なんで私はここから一歩も動けない?巫山戯んじゃねぇよ!私は何時も、何時もいつもイツモ何時も!何でこんな時に直ぐ動けないんだ!?自分が腹立たしい。なんで誰も来度を助けに行ってやれない?


そこで私の人格と記憶が何処かで他の誰かと入り交じるのを感じた。自分の意思とその誰かの意志が綺麗に重なることに私はなんの疑問も抱かなかった。むしろそれがやっと「戻ってきた」感じがした。


 来度?あの人の事か。納得だ。この景色は私に何を思い出させたいんだ?何かある、絶対なにか有る。ボクが忘れていることは「何だ」?思い出さなきゃいけない、忘れちゃいけない大切なことはなんだ?思い出せ。ここにヒントがある筈なんだ。

いつの間にか私は極限の集中状態に入っていた。この感覚は久し振りだった。私は今、本気で何かをしようとしている。空間認識能力、五感、思考が高速で繊細に正確に動く。そして、声が聞こえた。


「勝手に、死んでんじゃねぇぇえぇぇ!『碧の息吹シャットリッグ』!」


碧い炎が襲いかかる奴らを燃やして吹っ飛ばす。また、魔法のような術だった。その後方で空間を割くような音がして十数人が一斉にバタバタと倒れた。射倒したのは鳥の「羽」だった。投げたのはついさっき見た顔だった。


 ヤブサ、さん?え?あの、フワフワしてそうな人が射ったの?


「とにかく進んで!此奴らを真面目に相手してたらキリがない!」


ヤブサ、さんは近くにいる敵を短刀で斬りつけて、敵を土台にして奴らの頭上を鳥のように飛ぶ。いままで気づかなかったが、ヤブサ、さんの背には黒い大きな翼があった。


 なんでだ?どうして私はヤブサさんのことを呼び捨てにしそうになるんだ?ついさっき知ったばかりなのになんで。あれ?本当にヤブサさんはついさっき初めて会った人なのか?どうしてボクはあの人のことをケイさんの立場で見ているんだ?


ボクの頭は色々見えてきた不可思議な点と思い当たる節をグルグルと駆け巡り思わずショートしかける。もしかして、今まで見てきたのはボクの忘れている『記憶』?そう推理した途端、私は酷い頭痛に襲われた。頭を内側から殴られるような叫びたいほどの痛み、何かを気づいたからか思考がまた回り始める。

 痛い、痛いいたいイタイ痛い!あ、マズイ。意識消える・・・・・・。

私は意識を失った。



005



気がつくと私は自分の部屋で寝そべっていた。体は自分でビビるくらい汗をかいて気持ち悪い。部屋が少し湿っていて息苦しい。


「ハッ、今のは夢?やけに現実だったな。え、何この音。雨?」


窓の外を見ればバケツをひっくりかえしたような大雨に体に響くぐらい大きい雷、重く暗い雨雲。電気を点けようとスイッチを押したはいいが照明が点かなかった。


「えー、停電?うわっ、通知の量やべえ。何これ、五十件ぐらい来てんな。殆どが雷雨の事だあぁああ?!」


どデカい稲妻が降って窓が光り、地響きが聞こえるくらいの大きな雷が落ちた。思わず私の体は飛び跳ねる。


「マッジでビビった・・・・・・。怖ぇ怖ぇ。雷様が怒ってら。それにしても」


 さっきの夢はなんだったんだろうな。やけに現実だし、なーんか見覚えあるんだよな。ヤブサ、リーシェイ、ライト。どっかで会った気がするんだよな。あー・・・・・・。夢じゃない気がする。だって、こんなに覚えているんだから。本当に、忘れている『記憶』なのかな。分からない。夢だったとしても夢の中で極限集中状態て。只事じゃないよな。

時計を見るともう五時を過ぎる頃だった。両親が仕事から帰ってくる時間だったから、親切心でバスタオルを用意し風呂を沸かす準備をする。その後はおじいちゃんの書斎にあった分厚い本を読むことにした。言語は英語でもロシア語でもドイツ語でもなかったけど何故か読めた。

夕飯を食べて風呂に入った後、私は濡れた髪のままさっきの本を夢中で読んでいた。瓏が文句を言いながら私の髪を乾かしてくれたお陰で楽チンだった。現在、リビングのソファーを独占中につき。瓏はもう既に寝ていた。


十時になった頃、母さんに「寝ろ!」って、しつこく言われたもんだから渋々読むのを中断して自分の部屋に行く。部屋の扉を閉めて、机に向かいスタンドライトを点け、また本を開く。その本は物語だったり、とある国の歴史だったり、ある地域の伝承だったりと不思議なことがギュウギュウ詰めで書かれていた。私は食入るようにその本の虜になり、知らない筈の言語を淡々と読み進めた。その本は本当に分厚くて、かれこれ一時間近く読んでいるのにまだ八分の一も読み終わっていなかった。


この本は本当に分厚くて色々な分野のことが書かれていた。文字は何故か読める。そして、この本は三章に分かれていて、その一章の中にもたくさんの題材があって読み飽きない。内容は恐らくなにかの解析、その公式の経緯、物語。本来なら「意味わからん」で終わるような本を私は何も分からなくても読んでいる。

やっと一章まで読んでキリがいいところになったので読むのをやめて時計を見たら日にちが変わっていた。もう十二時半を回っている。


 やっっっっっべ。早く寝なきゃ。


私は転がるようにベッドに潜り込み、少し冷えた布団の中で直ぐに熟睡した。その日はもう夢を見なかった。





006



今日はあんな時間に寝たのに七時に設定してある目覚ましより二時間も早く起きてしまって、何故かよく眠れていた。起きた時には既に目も頭も冴えていた。長い間目覚ましなんかじゃ起きれなかったのに今日は何故か起きれた。昨日の読みかけの本は、と思って机を見るとやっぱりまだそこにあって、でも何か本の雰囲気が違うように思えてしまった。変わらない筈なのに何かが違うと思ってしまった。漢字のような英語のようなよく分からない言語なのに、それを読めてちゃんと理解できることが不思議で堪らなかった。その後ラッキーなことに朝焼けが見れたもんだから私は少し浮ついた。


 昨日の夢はなんだったんだろうなあ。しっかしまあ、降ったもんだねえ。雨。


三階の窓の外は周辺を見渡すのに最適で昨日の大雨雷雨が嘘のように晴れて、雫がついた屋根や草木は朝焼けに照らされてきらきらと眩しいのを映し出した。

桜はかなり散ってしまっていたがそれでも、残った花弁が堂々と咲いていて綺麗だった。

 私もあんな風に堂々として見たいな。まあ、遠い遠いお話だと思うけど。

制服に着替えて、眼鏡をかける。この眼鏡をつけていないと文字はアップにしすぎて読めない、目の前にいるのが誰か分からない。困ったことがありとあらゆる方向からやってくるわけで。この事を知っているのは学園の先生達と家族、それと親密度の高い友達のみ。噂にして欲しくないのは分かってくれるから私は今まで悪目立ちはしてない、筈だ。他のところで悪目立ちをしている気がしない訳でもない。生きてりゃ失敗するもんだ。


 ポジティブ・イザ・ベスト! アイ・アム・クレイジー!


ちょうどその頃、瓏が部屋に入ってきて、見たことないくらい驚愕してくれた。


「明日槍でも降るの!?」

「ひでーなおい。おいゴラァ。ちっと待てぇええ!」


朝っぱらから瓏を追い回してへとへとになりながら学園に行った。

教室に入った途端、何かが飛んできた。


「ウォワァ!朝から吃驚させんでくれ・・・・・。おはようございまぁす」


飛び込んできたのは結芽乃だった。満面の笑顔をこちらに向けるのが可愛いから、許す!かわいいは正義だ!


「おはよう、千夢。朝から眠そうだね?また夜更かしでもしたのかな?」


疲れているのを寝不足ととったのだろう光梨が近づいてきた。夜更かしはあっているので何も言えない。


「ゲッ!なんでバレるんだ!?」


いや、なんで当てられるのって話よ?


「僕には分かってしまうんだ。手に取る様に、ね?これに懲りたら夜更かしは辞めなよ?」


そう言って光梨はにっこり笑いかけた。その笑顔に威圧感があって非常に怖かった。いやマジで怖い!


「怖い怖い怖い怖い怖い怖い。やめてやめて。お前ホンットに怖いからやめて。なんでそんなに笑顔が怖いのさ」


思わず私は降参のポーズをとる、

どんだけ此奴、観察眼高ぇんだ。もう監視カメラじゃん。


「さぁ、何ででしょうねえ?」


そして光梨は更に不敵に笑いやがった。思わず背筋が凍りピンと伸びる。何だろう、この見下ろされているような威圧は。此奴本当に小学生かよ。その後光梨は自席に戻ってやたらと分厚い本を読み始めた。タイトルは角度的に読めなかった。


「なんであんなに怖いわけ?小学生の笑みじゃない・・・・・・」


私は結芽乃に同意を求めた。


「だよね・・・・・・。光梨ちゃんって、やっぱり不思議だよね」


結芽乃も同じことを思っていたらしくさらに言葉を続ける。


「うん、それはそう」


 本当にそう。


「話は変わるんだけどさ、昨日変な夢?を見たんだよね」


聞いてみると、星空の下二人で何かを話した夢、湖の夢、そして戦場の夢。最後の戦場の夢は私が昨日見た夢とほぼ同じだった。


「あのさ。三番目に見た夢のことなんだけど、私も似たような夢を昨日見た」


 本当にその夢にそっくりな夢をこの目で見た。


「え?」


結芽乃が目を丸くして驚いた。


「何話してんの?」

健眞も登校してきたのでその夢の話をこと細やかに話した。すると、意外な答えが返ってきた。


「え、似たような夢、ワタシも昨日見たんだが。本当にまるっきりおんなじの」

「マジで?」

「本当に?」


その時、何かが繋がって始まり出したと感じた。

その後ろで光梨は楽しそうに笑っていた。


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