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パンツ その1

 晩ごはんとデザートのプリンを食べ終えて満腹感を覚えながら部屋に戻ろうとすると、プリンをスプーンですくっていた葵に呼び止められた。


「あっ、おにいちゃん。そこにおにいちゃんの洗濯物あるから持って上がってね」


「ん、りょーかい」


 俺は自分専用の洗濯カゴを持ってリビングを出る。


 俺たちきょうだいは両親の仕事の都合上の理由で現在、三人だけでこの一軒家で生活しているのだが、誰か一人がすべての家事をやるのは大変だということで、三人で家事を分担している。


 ちなみに姉ちゃんはごはん、俺が掃除、葵は洗濯担当だ。


 葵の仕事は洗濯物を洗って干して各々専用の洗濯カゴに分別して入れるまでとなっていて、その後は自分のカゴに入った洗濯物を畳んでそれぞれの部屋のタンスに仕舞うという流れで、今のはその最後の工程にあたる。


 二階の自分の部屋に戻ってカゴの中から洗濯物を適当に畳んでしまっていく。


 この春からこうした三人だけの生活が始まったのだが、実際に自分で家事をしてみると中々に大変なことが分かる。


 俺はこの洗濯物を畳むことと家の掃除しかしていないわけだが、両親は仕事から帰ってきて毎日これをしていたのだ。


 疲れていただろうにそれでも俺たちのためにそうやって家事をしてくれていた両親には本当に感謝しないといけないし、とてもありがたいことだったんだということを痛感する。


「よし、これで最後だな」


 そんな感じで感謝を覚えながら、カゴの奥にあった黒のボクサーパンツを手にした時であった。


「ん?」


 何かがひらりと空中に舞いながらひらりと床に落ちたので拾い上げてみると、次の瞬間にその正体が分かった俺は素っ頓狂な声をあげてしまった。


 それもそのはずだ。


 俺が今、手に持っているのは明らかに自分のパンツではない、ペラッペラかつスッケスケの黒いパンツなのである。


 おまけに面積が俺のボクサーパンツの半分くらいしかなく、こんなので隠したいものを隠せるのかという純粋な疑問がパッと湧き上がってくる。


「……なんだよ、これ」


 とりあえずこのまま手で鷲掴みにしていてはいけない代物だということは直感で分かるので、いったん勉強机の上に置いておく。


 高ぶる気持ちを落ち着かせるために一度大きく深呼吸をしてから思考を巡らせた。


 まず前提としてこれは明らかに俺のパンツではない。


 それなら姉ちゃん、もしくは葵のものであるが……あの二人のうちどちらかがこんなペラッペラスッケスケのパンツを所持しているとは驚きである。


 驚きではあるのだが、別に本人がどんな下着をはこうがその人の自由だし、きょうだいの俺でもとやかく言う資格はないので一旦それは棚に上げておくことにする。


 そもそもこんな代物が俺のカゴに入っている原因は……一つしか考えられないな。


「葵のやつ、間違えて俺のカゴに入れたな?」


 葵が間違えて姉ちゃん、もしくは自分の下着を俺のカゴに入れた。


 これが今の状況から分析できることなのだが、本当の問題はここからだ。


 果たしてこれはどちらのもので、どう持ち主に返せばいいのだろう。


 別に普通の下着なら葵に間違ってカゴに入っていたことを伝えて本人、もしくは姉ちゃんに返せばいいのだが、今回はそういうわけにもいかない。


 だって、こんなにペラッペラなんだぞ!


 こんなにスッケスケなんだぞ!


 仮にこれを鷲掴みにしながら葵に「間違って入っていたから返すわ」と言ったところで、きょうだい、それも男のきょうだいにこんなものを持っているとバレたらあの二人でも相当ショックを受けるのではないだろうか?


 しかも姉ちゃんもしくは葵に精神的なダメージが降りかかるだけですめばまだいいが、最悪の場合そんな下着を無遠慮に返却した俺に対して、デリカシーのない男だという烙印が押されてしまう可能性もなくはない。


 なら今、俺がすべきことは一つだ。


「バレずに返すしかないな」


 自分に言い聞かせるようにそう言ってみたものの、どちらのものなのか全くもって見当がつかないのでは話にならない。


 こんなかなり攻めた下着だから大学生の姉ちゃんのものだと考えるのが自然なことだが、葵も中学生になってからはファッション雑誌を見るなり、メイクの動画を見るなりオシャレに気を遣い始めているようだしな。


 割合的には姉ちゃん7、葵3くらいか?


 どちらも可能性がある、というのが非常に悩ましいところではあるが、こうやってうんうんと頭を抱えていてもしょうがない。


「とりあえず二人の部屋に忍び込んで、タンス開けて、それっぽいのがある方にいれておけばいいだろ。よし、これでいこう!」

次回 パンツ その2

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