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06 依頼って何ですか?



「ねぇ、タツキチ」


「はい」


「あなた、一体どうやって魔物を消してるの?」


大騒ぎの宴会が終わり、1人になったところで僕はエレノアと話します。


「どうって言われても・・・」


「それって魔法なの?」


「いえ、違います。たぶん・・・」


「そうよね。私、魔法陣を使わない魔法なんて見たことないもの」


「魔法陣?」


「そう、魔法陣。

 魔法を発動させるための図形よ」


「確かに、そういうのはありませんね」


とか言ってますが、どうやって僕が魔物を消してるのか、僕自身がわかってませんからね。


「そんなことよりタツキチ!」


「はい」


「いい?今度こそ、逃げるわよ!」


「はい、そうですねエレノアさん」


「それじゃ、逃げるわよ!」


「はい、エレノアさん」


「あ!いた!勇者さーん!」

村人が両手を振りながら走ってきます。


はい、来ました。

この村人がやって来ましたよ。

3回目です。

僕たち全然逃げられないじゃないですか。

この村から。


「勇者さん!村長が呼んでます!」


「村長さんが?」


「はい、こちらです。

 ご案内します!」


僕は村人についていきます。

その後をエレノアさんもついてきます。




------- 村長の家 -------



「お待ちしておりました、勇者どの。

 ま、お座りください」


「あ、はい、どうも」


僕は村長さんと対面でソファに座ります。


「この度は本当にありがとうございました」


「あ、いえいえ。

 そんな、大したことは・・・」


「何をおっしゃいます。

 本当に助かりました」


「そうですか、それは良かったです」


「で、実は、勇者どのにお願いがございまして・・・」


お願い?

これって、きっとアレですね。

面倒なヤツですね。


僕はチラッと横のエレノアさんを見ます。

エレノアさんも何かを察したようで、激しく首を横に振っております。


「何でしょうか?」


この状態では、この言葉以外を発するのは、とうてい不可能なので僕はそう答えます。


「この村が、魔物に襲われる度に、若い女性がさらわれているのです」


僕がチラッとエレノアさんを見ます。

エレノアさんがめちゃくちゃ首を横に振っています。


「連れ去られたのは魔物の巣です。

 その場所は分かっています」


僕がチラッとエレノアさんを見ます。

エレノアさんが、とんでもないスピードで首を横に振っています。


「是非とも勇者どのに、女性たちを連れ戻して欲しいのです」


エレノアさんが村長さんの後ろに移動して、両手で大きくバツをしています。

僕が黙っていると村長さんが話しを続けます。


「もちろんお礼は、させて頂きます」


村長さんがテーブルに小さな箱を置きパカッと開きます。


「そんなに高価なものでばございませんが、

 オプシタイトのカケラです。

 こちらを勇者どのに差し上げます」


「やって!」

突然エレノアが叫びます。


「へ?」

僕は思わず声を出します。


「え?どうされました?勇者どの」


「あ、いや、何でもないです」


僕がエレノアを見ます。

エレノアが両手で大きく丸をして言います。

「やって、タツキチ!いいから依頼を受けて!」


「わ、分かりました。

 引き受けましょう」


「あ!ありがとうございます!勇者さま!」


どういう事でしょうか?

僕がエレノアさんを見ると、右手で親指を突き出してグッドサインでウインクをしています。

ま、なんかエレノアさんが喜んでるみたいなんで、これで良かったのでしょう。







------- 村長の家の前 -------



「どういう事ですか?エレノアさん」


「オプシタイトよ、タツキチ!」


「村長さんがくれるって言ってた小さなカケラですか?」


「そうよ!

 あれがあれば戻れるわ!1人だけならすぐに!」


「え?」


「オプシタイトで指輪のエネルギーが少しだけどチャージできるのよ!」


「そうなんですか?」


「そうよ!

 でも、女性たちを連れ戻さなければいけないわね」


「カケラを盗んじゃえば・・・」


「ダメよ。ゼロにバレるわ。

 ゼロは世界の全てを把握しているから・・・」


「そうなんですね」


あのネコ・・・

ホントに把握してるんでしょうか?怪しいもんです。


「タツキチ!」


「はい」


「あなた、アレ、出来るわよね!」


「魔物を消すヤツですか?」


「そう。

 それを魔物の巣でやればいいんじゃない?」


いいんじゃない?とか言われてもですね・・・


「僕、やり方わかんないんですよね、全然。

 さっきも、思いつく事を全部やったけどダメでしたから」


「大丈夫よ!二度も出来たんだから!何とかなるわ!」


いや、たぶん、ならないですよ。

でも村長さんに、やるって言っちゃったから、やるしかないんですけどね。


「あ!いた!勇者さーん!」

あの村人が両手を振りながら走ってきます。


「僕が魔物の巣まで案内します!

 それでは勇者さん、行きましょう!」


僕は村人に案内され、魔物の巣へと出発しました。




------- 魔物の巣へ移動中 -------



「あれが魔物の巣です」

村人が指差します。


「え?どれですか?」

広い台地しか見えません。


「ほら、アレですよ」

村人が指差します。


ん?


なんとなくですけど、目を凝らすと遥か向こうの方に建物があるように見えます。


「あの白っぽい建物みたいなのですか?」


「そうです。

 それでは僕はこれで」


「え?」


「後はよろしくお願いします。勇者さん」


「え?ここまでですか?」


「はい。

 僕たちみたいな村人が、これ以上近づくと危険ですから」


「危険?」


「はい。

 ここからはプロの方にお任せいたします。

 それでは!」


とか言って村人が去っていきます。


「これ、まだ、けっこう距離ありますよね?」

僕は隣のエレノアさんに聞きます。


「そうね。

 でも行くしかないわ」


「そうなんですけど。

 エレノアさん」


「何?」


「なんか、作戦とかって無いんですか?」


「作戦?

 連れ去られた女性の救出作戦ってことよね?」


「はい、そうです。

 魔物の巣っていうぐらいだから、魔物が沢山いるんですよね?」


「そうね」


「どれぐらいいるんでしょうか?」


「でもさっき、タツキチが12体も倒したから、だいぶ減ってるんじゃないかしら」


「そ、そうですよね。

 最初のを入れたら13体ですもんね」


「そうよ!

 だけど、まだ何十体とかいるかもしれないわね」


「そうですね・・・

 あと、思ったんですけど」


「何?」


「ここ、ほとんど何も無い台地ですよね」


「そうね」


「あの遠くにある建物に近づけば、僕、丸見えですよね?」


「そうね」


「僕、魔物に気づかれずに、近づけますかね?」


「たぶん無理ね」


「ですよね。

 どうしましょう?」


「途中から、ほふく前進しかないわね」


「到着まで時間かかりそうですね」


「そうね・・・」


たとえ、それで近づけてたとしても・・・


近づけたとしても、ですよ。

何をするの?

魔物の巣で、僕は一体なにをするのですか?

何の作戦もなく魔物の巣に行くっていうのは、これかなり無謀ですよ。

それに連れ去られた女性たちは、今も無事なのでしょうか?

たとえ無事だったとしても、どうやって助け出すのでしょうか?

僕にはまったく分かりませんよ。

だけど一歩一歩確実に魔物の巣に近づいているのは間違いありません。

一体僕は、


「タ!タツキチ!!」

急にエレノアさんが立ち止まります。


「どうしたんですか?」


「・・・アレ、見て・・・」

エレノアさんが魔物の巣と思われる建物の方を指差します。


僕は眉間にシワを寄せて、目をこらして見ます。


「アレ何ですか?」


「たぶん・・・」

エレノアさんが立ち尽くしたまま、つぶやきます。


「たぶん、何ですか?」


「・・・魔物よ」


「魔物?」


建物の周りが真っ黒いモノで囲まれモゾモゾと動いています。

その真っ黒いモノは建物から噴水みたいにどんどん出て来て、物凄いスピードで広がっています。

小さな黒い輪が、一気に大きくなる感じです。


ウソでしょ?


「アレ、全部、魔物ですか?」


「そうみたいね」


「どのくらいの数いるんでしょうね?」


「何十、いや、何百万とか・・・」


「何百万・・・」


僕は確信しましたよ。

無理ってね。

だってアノ数ですよ。

12体とかじゃないんですよ?

さっきの象みたいな大きさの魔物がびっしりですよ。

真っ黒い絨毯がモゾモゾ動いて、とてつもないスピードで広がってるんですよ。

気持ち悪いったらありゃしない。


で、


あの中心に向かって突っ込んで行くんですよ。

これから・・・


僕、アルバイトですよ?

もうね。

イヤんなっちゃいますよ、僕。





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