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20 追跡って何でしょうか?



「お前、もう2度とドーテー魔法を使うなよ。

 もし使ったら、ワラワがお前をぶっ殺す!分かったな!」

ソフィ様が無表情で僕を指差します。


「あの、それは、どういう意味でしょうか?」

僕がソフィ様に聞きます。

なんでドーテー魔法を使ったら、ソフィ様から殺されてしまうのでしょうか?


「ドーテー魔法は置換(ちかん)魔法だ」

ソフィ様が言います。


チカン魔法?

お尻とか触るアレですか?

まったく・・・この世界は何ですか?

ドーテーとかチカンとか、もうひどい話しですよ。


「チカンって、犯罪ですよね?」


「違げーよッ!そっちのチカンじゃねーよ!

 置き換える方の置換魔法だ!」


「置き換える?」


「そうだ。わかりやすく言うと魔物を移動させる魔法だ」


魔物を移動?


は?そうなの?

何でも出来る魔法じゃないの?


「あの~、全てを叶える魔法じゃないんですか?」


「はぁ?何だソレ?誰がそんな事言った?アホだろ」


すると、エレノアさんがちょっと怒り気味に一歩前に出ます。

『魔法図書館にある魔法辞苑です!あの辞書に載ってました!』

エレノアさんが自信を持って言います。


「はぁ?魔法ジエン・・・?

 ・・・ああ、アレか・・・

 へへ!

 そうか、お前ら、あんなものを真に受けてたのか。

 ありゃ、ウソだらけだ」


『ウソだらけ?』

エレノアさんが困惑します。


「そうだ」


『どうしてウソなんですか?』


「だってワラワが書いたんだからな!

 へへへ!暇つぶしに!」


へへへ!って・・・

こんな人が辞書とか書いたらダメですよ。

信じる人もいるんですから。

だって、ほら、見てよ。

エレノアさん、なんかすごいショック受けてますよ。


「ねぇちょっと、タツキチ・・・」

長椅子に座るキャサリンさんが首をかしげて言います。

「あなたたち、さっきから何の話ししてるの?

 というか、ココどこ?その子誰?」

正気に戻ったキャサリンさんが現状を知りたい様子です。

どうやら、惚れ魔法にかかっている間は、記憶が無くなるみたいです。


「あ、えっと、このベッドに座ってるお方は、大魔導士のソフィ様です。

 ヤッカイさんはソフィ様の孫で、ここはソフィ様の泊っている宿です」


「ふ~ん。で?」


で?って、それで終わりですか?

何かこう、驚くとか、子供やん!とか、リアクションは無いんですか?


「で、何の話しをしてるの?

 というか、さっきから誰と話しをしてるの?」

冷静なキャサリンさんが僕に聞きます。


そうでした。

キャサリンさんには、エレノアさんは見えてないのでした。

どうしましょう?


「あぁ、エレノアね。エレノアと話してるのね・・・

 というか、その子ッ!!その子もエレノアと話せるの!?何で!?」

キャサリンさんがソフィ様を指差して驚きます。


「さっきも言いましたけど、ソフィ様は大魔導士です。

 だからエレノアさんが見えるみたいです」

僕が答えます。


「そ、そう・・・なの・・・大魔導士・・・」

キャサリンさんが何か考え込むように静かになります。


「あの~、ソフィ様」

僕が話しを戻します。

「ドーテー魔法が移動させる魔法ってどういう事ですか?」


「言葉の通りだ。

 目の前の物を移動させる魔法だ」


「え?でも、魔物が消えましたよ?

 なんかこう、一瞬で」


「消えてない。一瞬で移動したんだ。

 よその場所に」


え?

よその場所?


「それって・・・一体どういう事ですか?」


「簡単に言うと、タツキチの家の前のゴミを隣の家の前に移動しただけだ。

 目の前からは消えるが、隣にはある」


「え?

 じゃあ、僕が消した、というか移動させた魔物はドコに行ったんですか?」


「知らん」


「え?」


「どっかだ。

 隣の町かもしれんし、海とか山の中かもしれん。

 どこに行ったか分からないのがドーテー魔法だ。

 で、一番面倒なのが・・・」


「面倒なのが?」


「別の世界に移動した場合だ」


「別の、世界・・・?」


「この世界とは違う、別の世界だ」


『タツキチ・・・』

エレノアさんが呆然とした顔でつぶやきます。

僕とソフィ様がエレノアさんを見ます。


『私、聞いたことがあるわ・・・

 絶対に現れるはずのない世界に突如、魔物が出現することがあるって・・・

 それってもしかして・・・』


「誰かがドーテー魔法を使ったって事ですか?」


『たぶん・・・いや、きっとそうよ。

 てか!あなたッ!!大量の魔物を消したわよねッ!!?』


あ・・・あ・・・、そう言えば・・・


「ねぇちょっとタツキチ。

 一体なんの話しをしてるのよ!?

 ドーテー魔法とかって何!?」

キャサリンさんが、戸惑い気味に言います。


「えーと、僕の使ってる魔法がですね、ドーテー魔法というもので、

 魔物を一瞬で移動させる魔法だという事が分かったところです」


「魔物を、移動?」


「はい」


「あなた、消したんじゃないの?」


「違うみたいです」


「それで、魔物はどこにいるの?」


「わかりません・・・」


・・・・・。

しばらく沈黙します。


「て!あんたッ!」

急にキャサリンさんが叫びます。

「私たちの魔物ッ!!消したわよねッ!!」


「はい」


「あんたッ!あの魔物の数、知ってんのッ!!?」


「いえ、知りません。どれくらいですか?」


「1万2千よッ!!」


!!?

後頭部を押さえて、ふてくされているヤッカイさん以外の全員がキャサリンさんを見ます。


部屋の中の空気が一瞬、固まります。


・・・・・。


しばらく沈黙が流れます・・・


「タ・・・タツ、キチ」

ソフィ様が恐る恐る僕に聞きます。

「お前・・・1万2千の魔物を移動させたのか?」


「・・・はい」

僕が答えます。


『ど・・・どうすんのよ、タツキチ・・・』

エレノアさんがつぶやきます。

僕がそっとエレノアさんを見ます。


なんか、エレノアさん、顔面蒼白ですよ。

一点を見つめて、まったく瞬きしてませんよ。

そりゃそうですよね。助手として雇ったアルバイトが大量の魔物をどっかに移動させたんですから。

もしかしたら別の異世界に魔物を移動させてるってことですからね。

現代の地球とかだったら、大パニックですよ。

これもう、クビどころの騒ぎじゃありませんよ。

だって場合によっては、その国を滅ぼしかねない魔物の数ですからね。


『ど、ど、ど、どうすんの・・・タツキチ・・・』

エレノアさんがうろたえます。


「だから言っただろ?2度と使うなって」

ソフィ様が言います。


ですね。

僕はてっきり、完全に無くなったと思っておりました。

でも実際は、目の前から魔物が消えただけで、いなくなってはいないということです。

ただどっかに移動させていただけなのです。

ビシューって一瞬で・・・


なるほど、

だから最強で最悪の魔法なのですね。


『ど、ど、どうしよう・・・ゼロに知れたら・・・

 いや、もう知ってるかも・・・わたし・・・どうしよう・・・』


なんかもう、エレノアさん、オロオロしてますよ。

全然、落ち着きありませんよ。

だってこのままだとエレノアさん100パー、クビです。

僕の給料も100パー、ゼロです。


今のエレノアさんを助けるには魔物を戻すしかありませんね。


「あの~ソフィ様」

僕が聞きます。


「何だ?」


「僕が移動させた魔物って、ソフィ様の魔法で戻せないのでしょうか?

 なんかこう、ソフィ様の偉大な魔法で」


「んな事できるか!」


そりゃ、そうですよね~。


「それじゃ、消えた魔物がどこに行ったかソフィ様の魔法で分からないものなのでしょうか?」


「わからん・・・」


ですよねぇ。

やっぱ無理ですよね・・・


「だが・・・」


おッ、だが、が出ましたよ。だが、が。

僕はソフィ様の一言に、大いに期待しますよ。


「だが、何でしょう?ソフィ様」


「魔法じゃ出来ないが、ソナーストーンがあれば追跡できるかもしれん」


「ソナーストーン?」


「そうだ。特定の物を追跡する石だ」


はい、来ました。

これです。

僕はこれを待っていましたよ。

絶対に何か方法があるはずです。


「けどな・・・」


ほい来た、そうですね。

けど、が来ました。

お約束ですね。

難関発生ですよ。

なんかハードルがあるんですよ、こういうのは。


「けど、なんです?」

僕がハードルを聞きます。


「追跡する物の一部を石に触れさせる必要がある」


ガビィーーーン。ですよ。


ま、確かに追跡させるには、何かが必要ですよね。

警察犬だって犯人の臭いを嗅がせなければ追跡できませんから。


「ありますよ」

キャサリンさんが言います。


え?


後頭部を押さえて、ふてくされているヤッカイさん以外の全員がキャサリンさんを見ます。


「本当に魔物の一部があれば、探せるのよね!?」

キャサリンさんがソフィ様に聞きます。


「そうだ。探せる」

ソフィ様が答えます。


「あの魔物たちが生きているなら私、連れて帰りたいわ・・・」


「そうか・・・」

ソフィ様がつぶやきます。


あれ?キャサリンさんはソフィ様にタメ口でOKなんですか?

何でですか?

ソフィ様は序列に厳しいんじゃなかったんですか?

僕だけですか?

まあ、いいですけど。


「このネックレスの一部が魔物のツノで出来てるの」

キャサリンさんが首元からネックレスを引き出します。


「だけどあれだけの数だから、魔物が散り散りになってたらどうするんですか?」


「ならないわ。

 彼らは群れる習性があるの。ああ見えて臆病なのよ!

 個体で行動することは絶対に無いわ!」


「でも僕が最初に消した魔物は1体でしたよ?」


「それはたぶん迷子よ?

 すぐ近くに群れが居たはずよ」


「あ、そう言えば、すぐ後に12体の魔物が出ました」


「でしょ!

 本当は素直で優しい、可愛い子たちなのよ!

 でも、ああいう見た目だから、突然目の前に現れたら絶対に攻撃されるわ」


「確かに大量の魔物が突然あらわれたらビックリしますよね。

 というか何であんなにいっぱい魔物がいたんですか?」


「散歩よ」


「え?」


「午後の散歩をしてたのよ。

 数が多いので、あの広い台地は散歩にもってこいなのよ」


散歩って。

ワンちゃん的な感じですか?

もしくは、羊飼い的な感じですか?

ま、どうでもいいんですけどね。


「ところで、何で魔物のツノをネックレスにしてるんですか?」


「魔物のツノは半年で抜け落ちて入れ替わるの。

 その抜けたツノは少しだけど魔力を出してるの。

 少しの魔力なら、私たちの血行をよくしてくれるのよ。

 だから私たちは魔物のツノをネックレスに加工して売ることで収入の一部にしてるの」


それ、

スポーツ選手がしてる磁気ネックレスみたいなものでしょうか?


とにかく、移動した魔物の一部が、今ココにあるということが分かりました。


ですが・・・


「あの~ソフィ様」


「何だ?」


「僕、色々な魔物を消したんですけど、それぞれ、違う場所というか空間に移動しているのでしょうか?」


「たぶん、同じ所だ」


「同じ所?

 ということは、僕が消した魔物たちは同じ場所に集まってるってことですか?」


「そうなる。それがドーテー魔法だ」


ソフィ様が言い切っているので、そうなのでしょう。

だって大魔導士ですから。


それじゃ、あとは、その魔物を追跡する石です。


「ソフィ様。

 その、ソナーストーンはどこにあるんですか?」

僕が聞きます。


「石なら、よろず屋にいっぱいあるぞ」

いまだに後頭部をおさえているヤッカイさんが言います。


さっきから後頭部おさえてますけど、そんなに痛いですか?

ま、そんな事より、ストーンです。


「よろず屋というのは、どこにあるんですか?」

僕がヤッカイさんに聞きます。


「隣だ」


「え?」


「この宿の隣がよろず屋だ」


え?そうなんですか?


「それじゃ、今から行ってみましょうよ」

僕が言います。


「その前に、タツキチ」

ソフィ様が静かに僕を見ます。


「はい、何でしょう?ソフィ様」


「お前、魔物を追跡してどうする?」


どうするって・・・


「大量の魔物を見つけてどうするんだ?」


・・・・・。


「お前が魔物を見つけても、元の場所に戻すことはできねーんだぞ」


そ、そうです。

ソフィ様の言う通りです。


「タツキチ、お前が見つけた魔物をドーテー魔法で移動しても、またどっかに移動させるだけだ」


そうですね・・・見つけても、どうすることもできませんね。

これまたソフィ様の言う通りです。


「・・・・・」

僕が言葉を詰まらせます。


「な?・・・だから、ドーテー魔法は使っちゃダメなんだ」

ソフィ様が天井を見上げたまま、つぶやきます。


これまで黙っていたエレノアさんが神妙な面持ちで僕を見ます。

『でも・・・タツキチ』

エレノアさんがつぶやきます。


「何でしょう?」


『もしかしたら・・・』


おお。

もしかしたら、が出ましたよ。

エレノアさんから、もしかしたら、が出ましたよ。

僕は期待に胸をふくらませますが、顔には出さずに聞きます。


「もしかしたら、何でしょう?」


『出来るかもしれないわ・・・魔物を元に戻すことが・・・』


はいこれ。来ました。

これです。これなのですよ。


ね、だいたい何とかなるように出来てるんですよ。こういうのは。






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