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16 伝説って何でしょうか?



ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!


大量のスライムが迫ってきます。


僕はエレノアさんに首をつかまれ、振り回されながらも横を見ます。

キャサリンさんが、両手で頭を抱えて丸くうずくまっています。

頭を壁に、お尻をスライムの方に向けています。


え?


「何やってんですか?」

僕がキャサリンさんに聞くと、それに気づいたエレノアさんが僕の首をつかんでいる手を止めます。

僕の首が解放されます。


キャサリンさんが手の隙間からチラッと横目で僕を見て叫びます。

「タツキチ!あなたも早く丸くなりなさい!!

 来るわよ!!スライムが!!」


それ、防御ですか?

丸くなって、うずくまれば大量のスライムから身を守る事ができるのでしょうか?


ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!


来ました。

スライムの壁です。


行き止まりの壁とスライムの壁に挟まれています。


「何してるタツキチ!!

 お前も身を屈めるんだ!!

 ここはオレにまかせろッ!!」

ヤッカイさんがスライムの壁に走っていき、右手を突き出します。


「ワンダフル・ファイヤーストーーム!!」

ヤッカイさんが火の玉を発射します。

低刺激魔法とかいう相手に全くダメージを与えない火の玉です。

火の玉はスライムの壁に当たって、スッと消えます。


「うぉぉおおおりゃぁあ!!まだまだぁあ!!」

ヤッカイさんが目の前のスライムの壁に向かって叫びます。

「ワンダフル・ファィ・・・」

ヤッカイさんがスライムの壁にのめり込み、叫び声がかき消されます。


埋まった。

ヤッカイさんがスライムの壁に埋まりましたよ。


『タツキチーーッ!!』

それを見たエレノアさんが絶叫します。


僕も丸くうずくまり、キャサリンさんと同じように両手で頭を抱えます。


ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!


スライムの壁が迫る音がします。

僕は強く目を閉じて考えます。


ヤッカイさんはスライムの壁に埋まってしまいました。

一瞬で姿は見えなくなりました。


後はもう成すがままです。


それにしても、なぜスライムは消えてくれないのでしょうか?

僕が心で祈ると魔物は消えました。

量が多すぎるとダメなのでしょうか?

いや、そんなことはありません。

だって大量の魔物を消しましたからね、僕は。

このスライムも多いけど、あの魔物の数も凄かったですからね。

やっぱり魔力なんでしょうか?


ま、そんな事より、僕らはこれからスライムの壁に埋まるとどうなるんでしょうか?

ビショビショになるんでしょうか?

そう言えば2人はビショビショに濡れることをもの凄く嫌がっていましたね。

濡れるだけならいいのですけど、一体どうなるのでしょうか?

エレノアさんはいいですよ。

通り抜けるだけなんだから。

あれだけ必死に僕を心配してくれるのは、僕がいないと減点されるからです。

クビになってしまうからです。

まぁ、とにかくスライムが消えてくれるといいんですけどね。

そうすればエレノアさんもクビにならずに済みますからね。


ビシューーッ!!!


何かを引き裂くような凄まじい音がしました。


え?あれ?

なんか急に静かになりましたよ。


『や・・・やったわ・・・タツキチ・・・』

エレノアさんがつぶやきます。


僕は目を開けます。


そこには、何事もなかったかのように洞窟が続いています。

スライムは一匹もいません。


異変に気付いたキャサリンさんが、うずくまったまま顔を上げます。


「タツキチ、あなたがやったの?私たちの魔物の時みたいに・・・」

キャサリンさんが僕に言います。


「あ、いや、違います・・・僕じゃないです」


そうです。

僕じゃないです。

いや、僕、なのでしょうか?


「あ!」

キャサリンさんが指差します。

そこには全身ビショビショで、うつ伏せになったヤッカイさんが倒れています。


僕とキャサリンさんが駆け寄り、ヤッカイさんの体を仰向けにします。


「大丈夫よ、気絶してるだけよ。

 私が魔法で回復させるわ」

キャサリンさんが魔法を唱えます。

「チチランプウ!チチランプウ!元気になぁ~れ!!

 あれ?ダメだわ。もう一度よ!!」

キャサリンさんがヤッカイさんを回復しています。



それにしてもナゼ今、消えたのでしょうか?

僕にはわかりません。


少し離れた場所のエレノアさんが、

『ねぇ、タツキチ・・・』

呆然と立ったまま言います。



僕は気絶しているヤッカイさんをキャサリンさんに任せて、エレノアさんのそばまで行きます。

「何でしょうか?エレノアさん」

小声で答えます。


『・・・・・』

エレノアさんが無言で僕をゆっくりと見ます。


「今のって僕が消したのでしょうか?」


『そうよ・・・』


「僕、光ったんですか?」


『光ったわ・・・』


「そうですか・・・僕が、消したんですね・・・」


『ねぇ。

 あなた、もしかして・・・』


「もしかして、何です?」


『歳はいくつ?』


「え?」


『年齢よ!年齢はいくつなの!?』


「歳は29・・・

 いや、先週で30歳になりました」


『30!?

 そ!それじゃ経験は!?女性と、そういう経験をしたことはあるの!?』


え?

経験?

女性と?

え?突然なにを言ってるんですかエレノアさん。


「僕・・・あの・・・ないです」


『な!ない!!』

エレノアさんが僕を驚愕の表情で見ます。


いやいや、エレノアさん。そんな顔で見なくても・・・

そりゃ遅い方だとは思いますが、今の日本ではそうそう珍しいことではないような気がします。


「何です?どうしたんですか?エレノアさん」


『タツキチ、それ・・・ド、ド、ドーテー魔法よ・・・』


「え?何です?」


『だから!ドーテー魔法よ!

 わ・・・私・・・初めて見たわ!』


「そんなに興奮することですか?」


『当たり前じゃない!伝説の魔法なのよ!!』


「すごいんですか?」


『凄いってもんじゃないわよ!!最強で最悪の魔法よ!!』


「最強で、最悪?」


『そ!そうよ!伝説の最強最悪魔法よ!

 この魔法は教科書にも載ってないから学校でも習わないわ!』


「エレノアさんは何で知ってるんですか?」


『見たのよ!魔法辞苑で!』


「まほうじえん?」


『魔法図書館にある魔法の辞書よ!とんでもなく分厚いのよ!』


辞書?

広辞苑みたいなもんなのでしょうか?


『それに乗ってたのよ!ドーテー魔法が!!』


「エレノアさん。

 それって、辞書でエッチな言葉を探して見つけたんですか?」


『はぁ?はぁああ!?

 な、な、なに言ってんのよ!そ、そ、そんなことするわけないじゃない!

 ぐ、偶然よ!偶然見つけたのよ!!』


「はぁ、そうなんですね。

 で、その魔法はどういう魔法なんですか?」


『いい、タツキチ!よく聞くのよ!

 ドーテー魔法というのはね、』


「タツチキ!回復したわ!

 体を起こすのを手伝って!!」

キャサリンさんが僕を呼びます。


「あ、はい」

僕は、最強最悪の魔法の事が気になりますが、キャサリンさんとヤッカイさんの所へ戻ります。

一体ドーテー魔法というのはどういうものなのでしょうか?


というかですね、

なんとかセルエッグとかいう宝石は探せるのでしょうか?

僕たち大丈夫なんでしょうか?






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