13 刺激って何でしょうか?
「くっそー!!」
ヤッカイさんが叫びます。
「またスライムだ!
こいつは厄介だぜ!!」
またスライムって・・・
これ、さっきのスライムですよね?
逃げたスライムに追いついただけですよね?
ヤッカイさんが振り向くと、後ろを指差します。
「よし!お前ら!
後ろに隠れてろ!
こいつはオレが何とかする!!」
何とかするって、
あんたどうせ後ろに逃げて来るんですよね?
で、ちょっと先に進んだら、またスライムに追いついて戦うんですよね?
それ、全然進まないじゃないですか。
「あの~、よかったら僕、やりましょうか?」
僕がヤッカイさんに言います。
「やるって何を!?」
「蹴っ飛ばしてみようかと思っています」
「スライムをか?」
「はい」
「お前、なめてんのか?
ここはシロウトの出る幕じゃない!
いいから下がって、あ!おい!!待て!!」
僕はヤッカイさんの制止を振り切り、助走をつけてスライムを蹴飛ばします。
ボシューー!!
サッカーのシュートの感じです。
ナイスなフィット感です。
ど真ん中です。
スーパーシュートですよ。
こんなにも気持ちの良いシュートが今まであったでしょうか。
そりゃぁ、もう、
あれ?
壁に当たったスライムは、ポンッ!と勢いよく弾けて2つに分裂しました。
「増えた?」
「バッキャロー!
だから言ったろ!!
奴らは刺激を与えると分裂するんだ!!
シロウトはすっこんでろ!!」
「でも、ヤッカイさんは火の魔法で何度も攻撃しましたよね?」
「あれは低刺激魔法だ!」
「低刺激魔法?」
「そうだ!相手を全く刺激せずに魔法をぶち当てる、低刺激魔法だ!!」
全くって・・・
じゃあ、あの右手を伸ばしたり、大声で叫んだりする意味はなんですか?
なんのための魔法ですか?
「く!来るぞ!!」
ヤッカイさんが叫びます。
「来るって何がですか?」
「逃げるわよ!」
キャサリンさんが身構えます。
「え?」
「スライムは刺激が強いほど分裂するのよ!」
ポンッ!ポンッ!ポンッ!ポンッ!
スライムが倍々に弾けて分裂します。
さまざまな色で、どんどん分裂します。
カラフルな風船のようです。
「風船みたいですね」
僕は思わず口に出します。
「風船?なにそれ?
とにかく逃げるわよ!タツキチ!!」
キャサリンさんが僕の手を取り来た道をひたすら逃げます。
ヤッカイさんも逃げます。
エレノアさんも逃げます。
後ろを振り向くとカラフルな風船が大量に迫って来ます。
うわぁー、すげー。
あれ全部スライムです。
とてつもない量です。
「スライムって無限に増えるんですか?」
僕が走りながらキャサリンさんに聞きます。
「かなり強く蹴飛ばしたから、もっと増えるわよ!
でも分裂が終わると直ぐに元に戻るわ!」
「元に戻る?」
「そう、最初の1体に戻るの」
「だったら、無理に逃げなくてもいいんじゃないですか?」
「何言ってるの!タツキチ!
スライムの射程距離に入ったら、蒸留水が飛んでくるのよ!!」
「水でしょ?」
「バカね!びしょびしょになるのよ!」
「だから濡れるだけですよね?」
「おい!お前は自分が何言ってるか分かってんのか!
これだからシロウトは困るんだ!!」
ヤッカイさんが僕に叫びます。
「どういう事ですか?」
「全てのスライムが蒸留水で攻撃してくるんだぞ!
そしたらお前!濡れんだろ!
びしょびしょに!!」
いや、だから、濡れるだけですよね?
「2人は、そんなに濡れるのがイヤなんですか?」
「当たり前だろ!」
「そうよ!びちょびちょになるのよ!!
イヤに決まってるでしょ!」
なんかもう、どうなんですか。これ。
すごい、走ってますよ。
後戻りしてるんですよ。
全然、出られませんよ、これ。
「止まれッ!!」
ヤッカイさんが叫びます。
僕たちは、ズザッー!と止まります。
目の前の岩陰に電柱の大きさのグニャグニャ曲がる棒が見えます。
「何です?あれ?」
僕がヤッカイさんに聞きます。
「尻尾だ」
「しっぽ?何のですか?」
「ヘビだ」
「ヘビ?」
「ああ、サンダースネークの尻尾だ!」
サンダーなに?
え?しっぽ?
この見えているのが尻尾ってことは、本体はもっとデカイって事ですか?
グニャグニャ曲がる尻尾が、ピンっと垂直に立ちます。
「ヤベーぞ!」
「どうしたんですか?」
「見つかった」
「え?」
「奴らは尻尾のセンサーで敵を感知する」
「て、ことは・・・」
目の前には巨大なヘビがいて、後ろから大量のスライムが襲い掛かってきてるってこと?
「そうだ。
オレたちは挟まれたって事だ。
こりゃ、厄介な事になっちまったぜ」
ヤッカイさんがつぶやきます。
ええ。そのようですね。




