10 ガイストって何でしょうか?
「タツチキ・・・入るしかないわね」
エレノアさんが言います。
「やめましょうよ、エレノアさん」
「何いってんのタツキチ!」
「でも、ココ入ったら、戻った人はいないんですよ?」
「それじゃ、あの落っこちた人はどうすんのよ?」
「仕方ないんじゃないんですか?
自分から落ちたんだし」
「ちょっとあなた!何言ってるのよ!
それに、なんとかっていう宝石を取ってこなくちゃダメなのよ!」
「そっか・・・」
「そ、そうよ・・・」
「・・・じゃ、どうぞ」
「え?」
「お先に、どうぞ」
「なに言ってんのよ!タツキチ!
あなたが先に入るのよ!」
「えー、そうなんですか?」
「そ、そうよ・・・あなた、勇者なんでしょ?」
「違いますよ」
「でも、この世界では、あなたは勇者よ」
「この世界でも僕はアルバイトです」
「いいわ!それじゃ、手をつないで一緒に行くわよ!」
「一緒にって、穴が小さいから入れな、」
「とりゃー!!」
そう叫ぶエレノアさんが僕の手を取って足から穴に飛び込むと吸い込まれていきます。
スーーーという感じです。
穴が小さく、僕はエレノアさんと手をつないでいるので必然的に頭から吸い込まれます。
水泳の飛び込み選手の感じです。
スーーーという無重力の感じがしたと思った瞬間、
ドスッと地面に着きます。
体感は低めのベッドから落ちた感じです。
30センチぐらいです。
ですがそこは地下の巨大空間です。
そしてなぜか薄明るいです。
天井は高すぎて見えません。
「エレノアさん・・・ここは?」
僕が尋ねると、エレノアさんが辺りを見回します。
「ここって、鉱山じゃないわ・・・」
「なんですかね?」
「わからないわ・・・」
僕たちが呆然としていると、
「タ!タツキチ!!」
さっき穴に落ちたキャサリンさんが駆け寄ってきます。
「キャサリンさん、大丈夫ですか?」
僕がキャサリンさんに問いかけます。
「大丈夫よ。あなた、私を助けるために穴に入ったの?」
キャサリンさんが、すがる様な目で顔を近づけます。
ですから僕は、
「はい。そうです」
と答えます。
エレノアさんがギロッと僕を見ます。
「そう、ありがとう」
キャサリンさんが、すがる様な目で見つめてきます。
「あの~キャサリンさん。ここって何です?」
僕が周りを小さく指差します。
「たぶん、地下の遺跡ね」
「遺跡?」
「そう、伝説でしか聞いたことなかったけど、本当にあったのね・・・」
「何の遺跡なんですか?」
「巨神族の遺跡よ」
「巨神族?」
「そう、巨人の国よ。
その昔、巨人たちの住む国があって、何らかの原因で一瞬にして地下に埋まったという伝説があるの」
「へぇー、そうなんですね」
ま、そんなことより、僕はこっちの方が気になりますね。
「あの~キャサリンさん、僕たちが入った穴はどこにあるんですか?」
僕が上を見上げて言います。
「あの穴は異空間の入り口よ」
「異空間?」
「そう、私たちの街、マモノースの入り口と同じよ。
入ると別の空間に飛ぶの」
「はぁ・・・で、コレって、どこから出るんですか?」
「分からないわ」
「わからない・・・」
「そう」
これ、あれですね。
出れないヤツですね。
そして僕はもう一つ質問があります。
「あの~キャサリンさん、ココどうして明るいんですか?」
「光虫パウダーが飛んでるのよ」
「光虫パウダー?」
「光虫という光る虫がいるの。
その虫の死骸が風化して粉末になって空気中を舞ってるのよ」
「人が吸い込んでも大丈夫なんですか?」
「害はないわ」
「そうなんですね」
「それより、タツチキ」
「はい」
「あなたに聞きたいことがあるの」
「なんでしょう?」
これ、きっとエレノアさんの事、ですよね。
「エレノアのことよ」
ね、やっぱりそうですよね。
「私、エレノアっていう妹がいるの・・・
いや、いたの・・・」
「はい」
「一年ぐらい前に突然、姿を消したの」
「はぁ、そうですか」
「私、妹を見つけるまで、絶対に諦めないって誓ったの。
でもね、正直もう会えないんじゃないかって、心が折れそうになる時もあるのよ」
「はい」
「それで、最近ガイスト鉱山の周辺で幽霊が多く目撃されているって噂があって、
そのタイミングでタツキチ、あなたがエレノアの名前を口にしたから、
私てっきり・・・」
「そうだったんですね」
「で、エレノアは今どこにいるの?」
「タツキチ!いないって言って!」
え?
僕の横でエレノアさんが食い気味で言います。
「あ、今はいません・・・」
「そ、そうなの・・・」
キャサリンさんがしょんぼりとうつむきます。
「はい。
それに僕がさっき話していたのは、キャサリンさんの妹さんではありませんよ」
「そ、そうよね・・・
でも・・・
なぜ、あなたには見えるの?その、エレノアが・・・」
「ごまかして!タツキチ!」
エレノアさんが叫びます。
「あ、えっと・・・
そういう能力です。
僕にはそういう能力があるのです」
「そうなの。
それじゃ、他にも見えるの?」
「え?」
「エレノア以外の、他の人も見えるの?」
「あ、えーと、見える時もあれば、見えない時もあったり・・・
そんな感じです」
「ふ~ん、そうなのね」
「それで、キャサリンさん。
これからどうするんです?」
「そうね。
出口を探しましょう」
「そうですね」
とは言うものの、ですよ。
「キャサリンさん。どうやって出口を探すんですか?」
「こうやるの」
キャサリンさんがそう言って、両手を高く上げ叫びます。
「チチランプウ!チチランプウ!出口を見つけて!」
すると、キャサリンさんの両手から無数の小さな青い光が放射状に広がります。
小さな青い光は、凄いスピードで空間を飛び回ります。
空間全体がより明るくなります。
「キャサリンさんは魔法使いなんですか?」
僕が聞きます。
「そうよ。まだまだ駆け出しだけどね」
「いや~、でもスゴイですよ。
ほら、あそこの壁、なんか動いてるし」
僕が指差します。
「あ、あれは違うわ!」
「え?」
「あれは私じゃないわ!」
いやいや、私じゃないって言われてもですね、
あそこなんか、壁が動いてますよ。
「キャサリンさん。あれ、なんですか?」
「あ、あ、あれ、巨人よ!」
「え?」
「きょ!巨神族よ!」
グゴゴゴゴゴーッ!!
巨大な壁が迫って来ます。
「へ?」
これ、巨人というか、でっかい壁なんですけど・・・
グゴゴゴゴゴーッ!!
どう見ても巨大な壁が迫って来ます。
「に!逃げるわよ!タツキチ!」
キャサリンさんが悲鳴をあげます。
僕は迫りくる壁を見上げます。
「何してるの!タツキチ!」
「ちょっと実験です」
僕は迫りくる壁に向かって両手を向けます。
「はぁ!?何!?あなた何言ってるの!?」
いや、まぁ。
ちょっと、ある実験をやってみようと思うのですよ。
僕はね。




