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少年、診察を受ける


 町医者のおじいちゃん先生、齢九十二歳――オットマー先生はラルフの背に乗せられ、アンバー夫妻の家へひっそりと訪れた。

 ラルフの背から降りたオットマーはベッドで眠る少年とその横に寄り添い眠る少女に驚く。

「お?側に女の子もおるんじゃな?……うん、もしかしてこの少年の、コレかのぅ」

 フォッフォッと笑いながら小指を立てるオットマーに、アンナは額に青筋を立てた。

「…クソジジイ、冗談はいいから早く診察してくれないかい」

「フォッフォッ……ちょっと場を和まそうとしただけじゃ。アンナ、そう起こるでない。」

「……」

「さてと、診察を始めるとするかの。…………なるほど、これは魔力の破裂じゃな」

「魔力の破裂っ?」 

「彼、ヴァール人じゃろう?」


 ヴァール人とはアンバー夫妻が住む国――リーベ公国の隣国であるヴァールハイト王国の民であり、見た目の特徴として黒髪に灰色の瞳を持つ。そして、ベッドで寝る少年も黒髪であった。


「ヴァール人はわしらリーベ人と違って魔力を持って生まれる。しかしのぅ、器に耐えられない程の量を扱えば、身体の中にある魔力の器から力が溢れだし身体中に魔力巡りこのような発熱を起こしてしまう。つまり、身体がまだ小さいのに、魔力を爆発的に使ったせいで、魔力が逃げ場を失い、身体中を巡ってるだけじゃ。まぁいわゆるお子様病じゃ。寝てればそのうち治る。」

「おっお子様病…」

「オットマー先生、よくこの病のこと知ってたねぇ」

「なぁに、ここは辺境の町じゃろう。たまにふらっとヴァール人が診察して欲しいって来るんじゃ。」

「なっなるほど!」

「そうさのぅ、より回復が早くするにはヴァールハイトで自生するエルシダという植物の根を一時間煮たものをカルウェンの花蜜と合わせて飲ませればたちまちよく成るはずじゃ。……そして、そのどちらも運の良いことにワシが持っておる。ラルフよ、申し訳ないがもう一度一走りしてくれんかのぅ。ワシの家に行けば弟子のデニスがおるでの、先ほどのものを言えばわかるはずじゃ」

「わっわかりました!」

 ラルフは再度オットマーの家へ走った。


 窓からラルフがいなくなるのを見計らい、オットマーはアンナを振り返る。

「それで、アンナ。彼をどうするつもりじゃ。この時期にヴァール人と接触するのは良い時期ではない。言わなくとも聡い君にはわかっておると思うがのぅ」

 アンナは言葉紡ごうとして発することができず、オットマーから顔を背けた。

「…………子供に一生のお願いと言われれば、大人は頷くしかないじゃないか」

 彼女にはラルフとの間に幼い息子がいた。その息子がアンナに一生のお願いだから叶えて欲しいといった願いがひとつだけあった。しかしその願いを叶えてあげる前に流行病で亡くなってしまい、息子の願いを叶えてあげる機会を失ったことにアンナは二十年経った今でも後悔していた。

「そこが君の良いところじゃの。君はそっけなく見えて根っからの情の厚い女性じゃからな」 

「……なんだい、いきなり。ああ、あなたの孫の宿泊滞納金をチャラにしてもらうという魂胆かい」

 アンナは目尻に浮かぶ涙を拭きながら、逃げまれ口を叩いた。

「いやはや……フォッフォッフォッ」


 

 

 


 

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