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喪女、少年と出会う。


 強烈な匂いがする……

 カビ臭くて…

 嗅ぎなれた尿便臭と饐えた匂い。

 病院でよく嗅ぐ類の臭いだが、この臭さは病院の比ではない。

 鼻の奥底にまで臭いがこびり付き、鼻が捻じ曲がってしまいそうだ。

  

「臭すぎる……」


 寝ぼけ眼のまま、部屋のライトをつけるリモコンを探すも、見つからない。おかしいなと辺りを探りながら先ほどみた悪夢を思い出す。

(それにしても、酷い悪夢みた。ストレス溜まってるのかなぁ。あんな夢もう懲り懲りだよ)


「あれ?どこにやったんだっけ」


 手探りでリモコンを探すと、温かいものに触れる。


「ヒヤァァァ」

「えっ?」


 甲高い声が響き渡る。

 何かがいる。

 けれど暗くてよく見えない。

 (…あれって、夢じゃないの?)

 暗闇の中にいまだ囚われたままであることに気づく。手探りで探るも先ほどあったはずの異臭の塊が全く触れないことに気づく。

 (さっきとは、違うところにいるの?)

  

「……ここ、どこ?」

 

 ひたすら手探りで探るうちに温かい何かに当たった。しかしそれ以上の速さでその何かが逃げる。

 

「え?」

  

 反対の方に伸ばすと、同様に逃げる動き悲鳴のような声が上がった自分の声ではない。その声につられてあちこちから高音様々な声が聞こえ始める。

 

 (……いっぱい、いるの?)

 あの女の声と同じ化け物が、ここには多くいるのだろうか。目を凝らしても女の時と同じく姿は見えない。

 後ずさりながら壁のような硬いものが背にぶつかる。それに手をつきながら立ちあがり音のしない方に一目散に走る。


 何もないとこへ走り切るつもりが、何かに足がぶつかり、転んでしまう。


「…っ!」

 不思議と痛くなかった。 

  硬いけど柔らかくて温かい何かが体の下にある。

 なんだろうと手探りで探ると、ドクンドクンと人間のような鼓動が手に触れる。


「シィザンガ」


 耳元で囁く高音の声――まるで少年のような声。

「なっ!」

 朱璃は飛び跳ねるように立ち上がり、声のしない方へ走り去る――つもりだった。

 

 ガチャン!


「っ!」

 顔面から金属のような硬い何かに全力でぶつかってしまった。

 ……かなり痛い。

 周りが見えないということが、こんなにも不便なんて。こんなんじゃ逃げ道がわからない。一筋の灯さえあれば、それを頼りに逃げるのに。


 突然、目の前から突然重い音が聞こえくると共に金属を叩く音がした。

「ウンバシっ、シィザンガ!」

 今度は野太い男のような声の怒号ともに、金属音が連続する。それとともに周りから小さい悲鳴が聞こえてくる。

 朱璃は条件反射のように身を丸め身構えた。

「……?」

 しばらく身構えても殴打してくる様子はなかった。 

 この男の声の主は女の声のする何かとは違って叩いてこない。違う種類の人間なのだろうか。


 

 ……あれ?そういえば、私この見えない何かを自分と同じ人間と考えている?いやいや、暗闇の中を二十四時間過ごせる人間なんて存在するわけないじゃん。もしかして日食が起きてる?いや日食じゃない。日差しは確かにあった。

 女の声のする何かに叩かれる前、手に日光のような温かさを感じた瞬間が朱璃の頭に蘇る。

 あの温かさは人肌とも違う溶けるような温度だった。

 日光を感じたなら、太陽があるということ。

 太陽があるのに、周りが見えないということは……私の目が見えなくなった…ということ?


突然の事実に呆然としていふと何かに腕を後方に引かれた。頭上から先程の少年の声がする。 

「スィルン。」 

「ちっ。」

 舌打ちのような声と共に、金属が再度うち鳴らされ、重い足音は去っていった。

(離れていく……)

 足音も消えるすぐさま、掴まれた腕にフラフラと着いていくと隅と思われるところへ肩を押され座らされた。



 ――周りが暗いのではなく、自分の目が見えていないことに気づいたこの日、生涯かけて探すのととなる|少年との出会いでもあった。



 

 

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