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喪女、異文化交流ステップ2に挑む

更新遅くなりましたが、読んでくださる方がいらっしゃると嬉しいです。


 異文化交流ステップ2–相手のことを知ろう。


 自己紹介を終えシュリは、身近にいる彼らについてよく知ろうとジェスチャーと言葉を使いながら尋ねた。

「シュリ ニホン ミンナは?」

「シュリとニホン」という言葉で自分を指差し、「ミンナ」と言う言葉で彼らに向かって手のひらを向ける。

 それに対しヨハンはしばらく沈黙した後、「ニホン」と呟き返した。

「そう!ニホン!」

 一瞬通じたと喜ぶが、それは勘違いだったらしく、「ニホン?シュリ?シュリ?ニホン?……ミンナ?」といったヨハンの戸惑う声が聞こえてきた。

 

(あ、余計混乱させている。自国の出身を聞くのは早計だった。目が見えない分言葉が通じない分、相手の言葉と私の日本語をすり合わせ言語の共通認識を持つ必要がある。つまり相手の言葉を知らなきゃいけない)

 

 異文化交流ステップ2――「相手を知る」から「相手の言語を知ろう」にチェンジ!

 

 シュリは「まずは身近なものから」と心で唱えながら辺りをサワサワと探り、直近にある物を右手で掴み、反対の手で()()を指さした。

「スプーン」

 先ほどスープを飲む際に使用した匙――スプーンだ。

「……スプーン?」

「スプーン!」

「スプーン…」

 お互いにスプーンの発音を繰り返した後、シュリはヨハン、スプーンの順番で指をさした。

 (そっちの言葉だと、どう発音するの?)という意味のジェスチャーでもあったが、ヨハンたちは再度黙込み、「スプーン」と返される始末。

 シュリは違う違うと首を振った。

 日本語ではなく貴方達の国の発音が知りたいのだ。       

 

 そこへアンナが訝しながら呟く。

「レッフェル…?」

 まさにレッフェルとはアンナが住まうリーベ国の言葉でスプーンを意味する単語であった。

 アンナが呟いた言葉がスプーンを意味する言葉なのかシュリは半信半疑のままスプーンを指差し「…レッフェル?」と問うと、ここでようやく合点のいったヨハンがスプーンを持つシュリの手を軽く握り、「レッフェル」と返答してくれた。


(スプーンはレッフェル!)

 

 スプーンに対するお互いの言語への共通認識のため、シュリは握られていない手で自分を指し日本語の「スプーン」、ヨハンを指差し「レッフェル」と繰り返す、それにヨハンは穏やかな声で「ヤー(そうだね)」とうなづき返した。 

 このような形で二人の言葉合わせゲームが始まった。


 ――――――――――――――――――――――


 その日から一週間、ヨハンはシュリの言葉合わせゲームに積極的に付き合ってくれた。

 朝から晩まで続くゲームにシュリは頭をパンクさせながら、必死に彼らの言葉を覚えようとした。

 彼が出題する言葉合わせのお題は多岐に渡り、身近な物から、ヨハンとシュリの顔を触りながらの顔パーツの言葉合わせ、指や石を使った数の言葉合わせ行った。数の言葉合わせの過程でシュリはヨハンが十才だと知り、思ったより幼いなと思っていたらどうやらヨハンから見るシュリは三十路などではなくヨハンと同じ年代の少女と認識していることがわかった。

 この体は自分の身体ではないのだと再認識した。以前は肩までしかなかったストレートの髪の毛が、この体だと腰まであるウェーブのかかっている。そして三十路ではなく、十代の少女になっている。


 私の身に降りかかっているこの現象は異世界転生なのだろうか。

 愛読していた多くの異世界転生シリーズの小説が頭に蘇った。けれど、今までの経験からこれがどの異世界転生の小説なのかがシュリには全く検討もつかなかった。

 やはり今のところ言葉合わせを続け、この世界に慣れる方が健全かもしれない。

 シュリは異世界転生という言葉を頭の片隅に投げ、ヨハンと言葉合わせを続けた。


 「食べる」「寝る」「トイレに行く」と言った生活で使用する言葉合わせなどにより、片言ではあるものの、彼らとの会話も少しずつスムーズになってきた。

 また彼の出題は家外にも発展した。暑く着こまされた状態でアンナに間食用にと持たされた小さい籠に水筒とレバーケーゼと呼ばれるサンドイッチを二切れ持たされ、転ばぬようヨハンに手を繋がれ寒い森の中を連れていかれた。

 「食べられる」木の実や果物があった際にヨハンがシュリの口にそれらを押し付けてくるので、それがなんの匂いなのか、またどんな味で歯応えがするものなのか思案しながらモグモグ食べ、ヨハンと言葉合わせを行う。国が違うため知らない木の実や植物もあったが、それもまた新たな発見で、開放感のある場所で初めて食べる果実はシュリにとって得難い体験の一つとなった。

 またこの野外言葉合わせで喜んでいたのはシュリだけではなかった。瑞々しい果物や木の実だけを選別し籠に入れ持ち帰るとアンナに非常に喜ばれるため、二人は言葉合わせの合間に森の果物を摘むようになった。そしてアンナに喜ばれた果物たちは来たる冬に備え保存食へと姿を変え、こっそりラルフによって盗まれた果実たちは果実酒へと姿を変えているのをヨハンは見て見ぬふりをした。


 

 シュリたちがアンナたちの元へ訪れ六日が経ったある日。

 それはシュリにとって、突然の出来事だった。

 いつものように野外での言葉あわせをしてる時にそれは起きた。

 彼はいつも通りシュリの口元に葉を押し付けた。

 その時シュリが感じたのは、いつもより量が少ないなと思ったくらいだった。

 押し付けれた葉を指で掴み、口にいれ噛み砕くと、口唇や口の中に尋常じゃない痺れや痛みが走る。その痺れや痛みが徐々に手や全体に広がる。

 シュリは驚きでヨハンに助けを求め手を伸ばすが、痛みで意識が遠のきシュリは地面に倒れてしまう。

 

 

 助けを求められたはずのヨハンはただ何もすることなく、シュリの様子を凝視するばかりであった。

 

 

 

 

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