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ファイアーボンド  作者: fuon
雪解け後には泥濘が残る
42/42

四十二話

***

「<火属性魔法>!」

 (フリーヴァーツ)はチュパカブラを燃やす。


 グローブ町からダンジョンは消え去った。後は魔物の残党を狩れば、本当にグローブ町を奪還できる。当初に建てた冒険の目的は達成されるのだ。


 隣ではレティシアパーティーが戦っている。

「<土属性魔法>!」

「<火属性魔法>!」

 デールさんが石の槍衾を作ってラミアの突撃を止め、レティシアさんが火炎放射で止めを刺す。


 あの後、ガレンさんとレティシアさんたちには<ファイアーボンド>で操ってしまったことを正式に謝罪した。(いま)だに彼女たちとの関係はギクシャクしたものを感じるが、ちゃんと和解できるように努めている最中だ。一度失った信用を取り戻すのは、最初に信用を作り出すことよりも遥かに難しいが、頑張っていくしかないだろう。呪いでみんなが信用できなくなったところに、ソフィアがルイを殺害する場面を目撃するという事件が重なったとは言え、みんなを支配するのはやりすぎだった。


 そうそう、<ファイアーボンド>の呪いについてだけど、これはソフィアが呪いを奪ってくれたおかげで、あれ以上人間不信になることはなく、今では次第に人を信用できるようになってきた。レティシアさんにいたってはすでに後遺症は全く無い状態で今を生きることができている。


「<攻撃力上昇>。」

 ――バガゴッ!

 俺の側でハルが大太刀でスケルトンとリッチを同時に粉砕する。


 ちなみにガレンさんとハルには呪いの後遺症が残った。長い間エクストラスキルに蝕まれてきたことと、呪いの性質が相まって、失われた寿命も、感情・感覚も取り戻すことは叶わなかった。


フリーヴァーツ:「ハル!少し休憩しよう!」

ハル:「分かった、お兄ちゃん。」

レティシア:「じゃあ、私たちも休もう!」

デール:「おう。」

マーヴ:「了解っす!」

イーダ:「分かりました。」


 俺とハルは手ごろな瓦礫の山に腰を下ろして、ハルの身体に怪我が無いかを目視でそれとなく確認してやる。

 俺はみんなに対して責任を感じているが、特にハルに対する責任を一番強く感じている。それと嫌らしい話、ハルには感情が無い。感情が無いということは、俺に対して不平不満を抱かないということで、つまりハルが裏切る可能性を心配しなくてもいいということだ。人間不信に陥った俺にとってハルは一番信用しやすいので、側に置いて置きやすいとも思っている。


「ハル、俺はハルの育ったこの町を復興させてみせるよ。」

 ばつが悪くなってきた俺は、ハルに精いっぱいの恩返しをしようと誓う。ハルは相変わらず抑揚のない声で答える。

「私だけじゃなくて、レティシアさんとマーヴ君にとっても大切な町だよ。」

「そうだな。そのとおりだ。」

 別に忘れていたわけではない。俺はその二人に対しても罪滅ぼしをしなければならないのだから。


 俺は何の気なしに遠くの空を見上げる。晴れた空に大きなバットが飛んでいた。それが、突如ズバッ!と一刀両断される。

「復興は進んでいるか?」


 風の刃が飛んで来た方に振り向くと、ガレンさんが歩いてきていた。ただ歩いているだけなのに、妙に威厳がある人だ。

「はい、おかげさまで。」

 俺はすぐに立ち上がってガレンさんに頭を下げる。

「そちらもお変わりないですか?」

「ああ。問題ない。」


 今、ガレンさんはウィンミルさんの故郷に残り、村の発展を手伝っている。このグローブ町の復興が順調に行っているのも、ガレンさんがウィンミルさんの故郷の村との橋渡しをしてくれているのが大きい。


「……ソフィアのことはリーダーの貴様が見ておくべきだった。」

「返す言葉もございません……。」

「私はずっと母親と一緒に暮らしていたのに、母親がエクストラスキルの呪いに侵されていることに気付けなかった。私も貴様と同じようなものだ。」

「慰めてくださるんですか?」

「赤子が母親を信じるように、貴様らが仲間を何の疑いも無く信じる姿を見ていると、昔のことを思い出してな――。」


 ガレンは母親が魔物化して里の人々を虐殺した日のことを思い出していた。

(フッ、思えば、あの日に私の人格は歪んだように感じる。)


 不図(ふと)、ガレンは言葉を漏らす。

「……貴様は仲間に全幅の信用を置いた。もしそれがうまく行けば、レティシアパーティーのような、理想の関係性が手に入ったのかもしれないな。」

「…………。」

「だが、ソフィアは誰かを殺してでも奪い取るような狂気の純愛を貴様に抱いた。周りの環境が許さなかったのだな。」

「他人を疑ってかかるのは大事なことですね。」

「そうだな。」

 ガレンさんは素っ気無く言った。


(以前のフリーヴァーツは周りの人間を()()()()()()()()から、あんな事件が起きた。だが、ソフィアは自信が持てず、フリーヴァーツが誰かに盗られるのではないかと不安になり、他の女を()()()からあんなことをした。信用することも疑うことも大切で、危険なことだ。だが結局のところ、私たちの人生では信用と疑念の諸刃の剣を手放すことは出来ないだろう。そうすると、諸刃の剣を握りしめて、傷つきながらも、その剣を収める鞘を探し回るのが私たちの人生なのかもしれんな。)

 そこまで考えてガレンは自分の妄想を鼻で笑う。


「フン。そんなことは何度も経験してきたことだ。」

「?何か言いましたか?」

 ガレンさんは森の方を向く。俺も彼女の視線を追う。

「少し周りの環境が変われば、結果は変わるものだ。今後もお互いに良好な協力関係で頑張っていこう。」

「はい!」

 もう、あの時に現れた禍々しい城は無かった。

 ファイアーボンドはこれにて完結です。

 ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

 次回作は当分先になります。


 そして、最後に修正の話です。

 (締まらない…。)

 前回の話の冒頭でガレンがフリーヴァーツのピンチを救った時に、もともとはガレンが駆け付けたことにしていましたが、ウィンミルが<エアリエル>の魔法を込めた指輪の出番がなかったので、前回の話で出て来るガレンは<エアリエル>で作られた幻影だったという設定に修正させてください。本当はこの指輪でルイを再登場させるつもりだったのですが、ガレンに活躍の機会を奪われ…。


 最後まで締まらない私ですが、次回作もどうぞよろしくお願いします。

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