第二十六話
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翌朝、フリーヴァーツたちはデールの父親が営む武器屋に集まっていた。レティシアがオーガロードとその他のオーガの素材が入った袋をデールの父親に渡す。
「おやっさん、これでいい武器作ってよ。マーヴ君の槍を一番にお願いっ。」
「おう、任せろ。これだけの素材があれば、かなり良いものができるぜ。」
「私たち今度ドラゴン討伐に行くから、ドラゴンにも勝てるやつで頼むよ。」
「ドラゴンだと……?」
ニッコリとした笑顔でレティシアが言った言葉に、デールの父親の顔は真剣なものになる。レティシアとフリーヴァーツ以外のメンツも詳しい話を聞きたそうにしている。
「うん。私たち……というよりフリーヴァーツ君たちのパーティーにはエクストラスキル持ちが二人もいるし、ホワイトコーツの協力もある。決して無謀な挑戦ではないよ。」
レティシアはみんなが不安にならないように泰然自若とした様子で言った。フリーヴァーツは仲間を鼓舞するために続ける。
「付け加えるとしたら、俺たちが挑むのはグローブ町の北にいる瘴雪のドラゴンと呼ばれる個体だ。そいつに俺たちとホワイトコーツだけで挑む。他の討伐参加者はいないから、こんな小所帯でドラゴンに勝てるのかと不安に感じる人もいるかもしれないが、安心してほしい。これまでの冒険でもピンチになったことはあったが、俺たちはその度に仲間との結束で乗り越えてきた。今回も同じだ!俺たちの絆はドラゴンすら倒せることを証明するぞ!」
リーダー二人の声掛けで空気がドラゴン討伐をするほうへ傾いた。この流れでソフィアが気になったことを質問する。
「はい、私たちの絆はこの世で最も強いですわ。以前からグローブ町の頭痛の種となっていた瘴雪のドラゴンの討伐も実現できますでしょう。それよりも、今回のドラゴン討伐の件はフリーヴァーツ様とレティシア様だけでお決めになられたのですか?」
彼女の質問にはフリーヴァーツが答える。
「ああ。すまない、ソフィア。ドラゴンに挑むのは(友達の)命の危険があるから、こんな大事なことはみんなで話し合ってから決めるべきだったな……。」
「いいえ、私は(フリーヴァーツ様に告白して彼女になった、)ブラッディコート事件のころからとっくにフリーヴァーツ様と一緒に地獄の果てでもついていく覚悟はできておりますわ。今更ドラゴンの住処に行くこと自体はお安い御用ですのよ。」
ソフィアはフリーヴァーツの目をしっかりと見て宣言した。
――なんと!そこまで俺のことを信頼して命を預けてくれるのか!
ソフィアの眼には一点の曇りもなかった。フリーヴァーツは思い出す。
(そうだ、ブラッディコート事件の二日後に俺たちは冒険者になったんだった。あの時からすでに、ソフィアは冒険者パーティーのリーダーの俺にそんなに信頼を寄せてくれていたのか――ッ!)
フリーヴァーツが感動に打ち震えている間にも、ソフィアは話を続ける。
「ですが、命を賭す覚悟はございましても、やはりもっと早く私にも一言言って欲しかったですの。」
「すまん、納得感がなかったな……。ドラゴン討伐を決めたのは昨日の夜だが、その時にソフィアが近くにいなくて、レティシアさんだけしか傍にいなかったんだ。もちろん、あのときソフィアが近くに居れば、ソフィアにも相談したさ。」
「むぅ……。昨日の夜は私にもやりたいことがあって、フリーヴァーツ様のお側を離れなくてはなりませんでしたから、私にも責任がありますわ。これからは――いえ、これからもというべきかもしれませんが、――私は出来る限りフリーヴァーツ様と一緒でいられるように努めますわね。」
(ですが、その悩みもすぐに解決できますわ。だって、昨日の夜にエクストラスキルの練度が凄く上がったおかげで、魂同士の融合も後もう少しでできそうな感覚がありますから。)
対するフリーヴァーツは自分とソフィアの間に強い絆――もっとも、両者の感じている絆は別物だが――があることが伝わってきたことを喜びつつ答える。
「ああ!俺もソフィアともっと密なコミュニケーションを取れるようにしよう。」
ソフィアは笑顔を返す。きっとフリーヴァーツ様と私は同じ思いだ。
対照的に、マーヴは申し訳なさそうな面持ちで気持ちを表明する。
「レティシアさん、俺は正直グローブ町の開放と直接は関係の無いドラゴン退治のために死にたくないっす……。」
「マーヴ君は弟妹の笑顔とブラッディコート事件のときに失った日常を取り戻すために私たちについてきたんだよね?」
「そうっす……。」
「このままグローブ町を奪還しても、すこし北には強い魔物がいるってなると、弟妹さんは安心して暮らせるかな?マーヴ君もそんな状況で家族が生活するのは安心できる?」
「それは……。」
「大丈夫、君は死なないよ。私が絶対に守って見せるから。だから付いてきてくれない?ドラゴンを倒すには君の<大砲>が必要なんだ。」
「……分かったっす。弟たちを守るのがお兄ちゃんの役目っすからね。俺、頑張るっす!」
「ありがとう。本当にありがとう!」
「いいんっす。俺にお姉ちゃんはいないけど、レティシアさんはお姉ちゃんみたいに俺のことをいつも助けてくれたっすから。今度は俺がレティシアさんを助ける番っす!」
ここでデールも口を挟む。
「当然だが、マーヴだけに負担を抱え込ませるわけにはいかねぇ。俺たちは全員で助け合うんだ。そうだろう、イーダ。」
「ハイっ。私の役目は皆さんを回復させることですから。」
この瞬間にレティシアパーティーは全員ドラゴン討伐に挑むことが決まった。
イーダが躊躇いなく宣言したことで、ルイも動く。
「イーダがやると言っているのに私がやらないのは格好が悪いでしょう。私も行きますよ。私の役目は前衛で皆さんを守ることですから。」
ルイはイーダを真似して「私の役目は~ですから。」というフレーズを使い、イーダとアイコンタクトを取る。
最後にハルが「私もドラゴンに挑むのは怖くない。」と言ったことで、フリーヴァーツパーティーの同意も得られた。
フリーヴァーツもレティシアも、ドラゴン討伐に賛成されたことによる安堵と感動が入り混じって、よく分からない気持ちになる。でも、悪い気持ちはしなかった。むしろ、こんなに良い仲間たちに恵まれたことを感謝した。レティシアは言う。
「みんな本当にありがとう。これはどれだけ言っても足りない。ドラゴンとかいう伝説級に強い魔物に挑むってのは、それを決めるだけでも相当に勇気がいることだと思う。私はここにいる仲間たちを心から誇りに思うよ。」
レティシアはみんなの顔を見渡す。みんなもきれいな目で見つめ返す。それを確認して彼女は話を続ける。
「さて、突然で悪いんだけど、ダンジョンがあった山で今朝、なぜかデュラハンが確認された。なかなか強い個体みたいだから、放置しておくとホレイショーの住民が危険かもしれないし、討伐できれば良い素材が取れるかもしれない。ここを発つ前、最後に狩っておこう。」
「分かったぜ。親父、そういうことだから、今日は忙しくなるかもしれないぜ?」
「フンッ!仕方がねぇな。腕によりをかけてドラゴンにも負けねぇ武器をつくってやるよ。だがデュラハンとの喧嘩にせよ、ドラゴンとの喧嘩にせよ、死なない事優先だ。這ってでも帰って来い!」
「「「はい!」」」
全員の声が重なった。
字数と区切りの良さの関係上、今回のお話は他の回と比べて極端に短くなりました。今回のお話を前後どちらかの回と統合することも考えたんですが、どちらに組み込んでも字数が多くなるので、このまま出します。
高評価・コメントお待ちしております。




