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ファイアーボンド  作者: fuon
賽の河原崩し編
24/42

第二十四話

***

「取り敢えず、フリーヴァーツ君はもう大丈夫だから、そこに転がってるオーガロードの素材を回収しようか。解体用ナイフは今誰が持ってるんだっけ?」

「お前は疲れてんだろ。素材の回収は俺がやっておくぜ。」

「いや、デールさんも疲れてるんじゃないっすか?俺がやるっすよ。」


 そういうわけで、マーヴがオーガロードの解体に取り掛かった。そして、彼がオーガロードの魔石を取り出している最中にダンジョンコアが破壊される。コアが破壊されたため、ダンジョンコアが作り出した建築物と生き物に触れていない物体は消失する。しかし、このダンジョンは建物を一切建築しない代わりに余らせた魔力で大量の魔物を生み出していたため、建築物が消失する影響はゼロだった。さらに、ダンジョンコアが破壊された瞬間にマーヴがオーガロードに触れていたため、本来消えるべきオーガロードの死体も消えずに残る。


「ふぅ、コアが破壊されたか……。」

 デールが息を吐く。

「うん……。これでホレイショーはひとまず安心だね。生き残りのオーガたちも他の冒険者とか騎士団とかが何とかしてくれるでしょ。」

 レティシアも感慨深そうに言う。


「まぁ、できれば俺の手で壊したかったがな。」

「ボスを倒せたのも、ボスのところまで辿り着けたのも、デールがいてくれたからだよ。」

「……フン。どうしたんだよ、いきなり。」

「フフッ。デールの故郷を救うのも私の目標の一つだったからね。それが叶ったから嬉しいんだよ。」

「……何っつーか、ありがとよ。ホレイショーを救ってくれて。この借りはグローブ町で必ず返す。」

「うん、期待してる。……でも、デールは頑張りすぎて死じゃったりしないよね?」

「ああ、約束だ。」

 そこにマーヴの声が響いた。

「おーい、みんなー、解体が終わったっすよー!」

「オッケー、分かった!後はホワイトコーツの人たちと素材の分配を話し合って、残りを山分けしよう!」

 レティシアはリーダーとしての自分に切り替わっていた。


 レティシアたちはフリーヴァーツが起きるのとホワイトコーツが戻ってくるのを待っていた。しかしながら、フリーヴァーツが起きた後もホワイトコーツの帰りを待っていたものの、いつまで経っても、ホワイトコーツは戻ってこなかったので、夜が来る前に先に下山することにする。

 彼女たちは来た道を戻ったので、オーガたちを閉じ込めた坑道の前を通るが、デールが強力な魔法をかけておいた甲斐があった。坑道はしっかりと封鎖されたままだったし、ソフィアが倒したバイコーンもそのままだった。


***

 ――下山後の夜。一行は冒険者ギルドに居た。レティシアが宣言する。

「みんな今日はお疲れ!私はホワイトコーツの人たちと素材の取り分を話し合ってくるけど、みんなは自由にホレイショーを楽しんでおいで。」

「やったー!俺、ウィリアムバーガーで勝利のシェイクを飲んでくるっす!」

「マーヴ君はまたそれかい。好きだね~。」

「はいっ、大好きっす!」

「いいよ、好きなだけ飲んできな。マーヴ君だけだと心配だから、イーダちゃんもついていきな。」

 レティシアの下世話にマーヴは「ええっ!?」と躊躇(ためら)った。

「マーヴ君は私と一緒は嫌ですか?」

 イーダは涙目の上目遣いで聞いてくる。

「いやっ、ぜんぜんそんなことないっす!むしろイーダさんこそいいんっすか?」

「はい、構いませんよ。」

「そうと決まれば早く行った、行った。」

 レティシアはマーヴとイーダを送り出す。


 彼らを見送った後、今度はフリーヴァーツが発言する。

「俺もフリーヴァーツパーティーのリーダーとして会議に参加しますよ。」

「OK。私とホワイトコーツを待っていようか。」

「私もフリーヴァーツ様と待っていますわ。」

 レティシアがフリーヴァーツに了承すると、ソフィアも割り込んできた。

「いや、そんなに大人数で素材会議に行っても困るだろう?」

「会議が始まるまでで構いませんわ。私はフリーヴァーツ様のことが(お前に盗られるんじゃないかと)心配なんですわ。」

「なるほどね(今日フリーヴァーツ君は死にかけたから心配するんだろうな)。でも、ソフィアちゃんは今日のダンジョン攻略で相当魔力を消費して疲れているだろう?それでいくとルイ君の方が魔力の消費が少なくて余裕があるだろうから、ルイ君に残ってもらえば安心じゃない?」


 今は全快しているはずだが、ルイもオーガジェネラルに大怪我を負わされたので、このレティシアの発言はルイの経過観察の意味もあった。そして、ルイも「私で良ければ喜んでお供しますよ。」と快諾した。


「ルイ様も一緒におられるのでしたら、まぁ……。」

 それでソフィアも納得する。

「いやいや、みんな心配しすぎだって。俺は大丈夫だから、みんなはゆっくり休んでおいてくれ。」

 しかしフリーヴァーツは遠慮する。そんな彼にデールは言う。

「本当はお前も休んだ方が良いだろ。せっかく心配してくれる良い仲間を持っているんだから頼っておけ。そうだ、補充すべき備品のリスト作成や、親父への武器作成の依頼は俺がやっておこう。」

「デールさん……。」

「気にすんなフリーヴァーツ、俺たちは仲間だろ。」

「私も手伝いましょうか?」

「助かるぜ、ハル。」

 デールとハルは裏方の仕事を買って出てくれた。フリーヴァーツは()も言われぬ感情を抱く。

「ありがとう、こんな仲間たちに恵まれて、俺は幸せだ。」

 これは感動だけではない。俺もこの仲間たちのために頑張ろう、恩返しをしよう、そう思える感情だった。


 そして、ソフィアがハルとデールの備品管理を手伝えないことに詫びを入れる。

「私もフリーヴァーツ様の備品管理を手伝いたいのは山々ですが、私にはやりたいことがありますので、ハル、デールさん、お許しくださいませ。」

「おう、任せておけ。ハルも、最低限のことを手伝ってくれたら、今日は上がっていいぞ。」

 デールは快く受け入れてくれた。


「さて、それじゃみんな解散、解散。散った散った。」

 レティシアは解散させ、一同はそれぞれ散っていく。この場にはフリーヴァーツ、レティシア、ルイが残った。レティシアがしゃべり始める。

「ルイ君は今日すごくフリーヴァーツ君を守ってたね。」

「そんな、私はみんなを守るのが役目ですよ。それに……、フリーヴァーツさんには特に死んでほしくないですから。」

「いいや、ルイには本当に助けられたよ。ソフィアやハル、いや他にもルイに守られた人はいる。みんなが今、生きていられるのはルイのおかげだよ。」

「フリーヴァーツさん、それは褒めすぎですよ。」

「そんなことないよ、ルイ。俺は本気でそう思っているんだ。」

 真っ直ぐに見つめて来るフリーヴァーツにルイは頬を赤く染め、顔を逸らす。


「…そ、そんなこと言われたら照れてしまいます。」

「ははは。でもね、これは大切なことだから、ちゃんと俺の目を見て聞いて欲しい。」

「はい、何でしょうか?」

「ルイが敵を引き付けてくれることには凄く感謝してる。でも、タンク役をやっているせいで、ルイはいつも最前線で敵の攻撃を受け止めないといけない。今日はついにオーガジェネラルにあんな大怪我を負わされて……ッ。こんな調子じゃ、いつかルイが本当に死んでしてしまう日が来るんじゃないかと、俺は不安で、不安で……。だから、ルイには自分の体を一番に大切にして欲しい。これはパーティーのリーダーとしてではなく、俺個人としての願いだ。俺はルイに無理だけはしないで欲しい!」

「――ッ。そんなに私のことを思ってくれるなんて、嬉しいです。あなたを――。」

 好きになってよかった。


「?ルイ、泣いてるのか?」

「嬉し泣きです。フリーヴァーツさんのせいですよ、もう。あなたのパーティーに居られて本当に良かった。」

「ルイ君はフリーヴァーツ君に抱きしめて慰めて欲しいかい?」

「いいえ、レティシアさん。この状況を利用して抱き留めてもらうのは卑怯な気がするので、遠慮しておきます。今はフリーヴァーツさんにこんなに大事にされていると知れただけで満足です。」

「ん?卑怯?遠慮?」

「フリーヴァーツさんはまだ知らなくてもいいんです。」

「そうか。話したくなったら俺に話してくれ。それと、抱き留めてあげるくらいなら、俺はいつでもやってやる。遠慮はいらん。」

「ありがとうございます。」

 ルイは感謝の言葉を述べるが、ハグは求めなかった。

「すいません、感極まってしまって。少しの間、一人にさせてもらっていいですか?」

「分かった。気を付けろよ。」

 フリーヴァーツはルイを行かせてあげる。フリーヴァーツとレティシアだけが残った。

「ところで、さっきの会話で思ったんですけど、レティシアさんは魔物と戦ったり、ダンジョン攻略したりするときに、自分のパーティーメンバーが傷つくのって怖くないんですか?」

「怖いよ。すごく怖い。でも、私はレティシアパーティーを作るときに才能ある子たちをかき集めたんだ。私はあの子たちが力を合わせれば、どんな逆境でも跳ね返せると信じてる。フリーヴァーツ君のやり方とは対立しちゃうけど、私は誰かが『みんなを守るー』って言って、一人で全部何とかしちゃおうとする方がむしろ各個撃破されて危険だと思っているよ。」

「俺はそんなに一人で突出しているでしょうか…?みんなで魔物を攻撃しているつもりなんですけどね。」

「フリーヴァーツ君は結構仲間を守ろうとして突出しちゃってるよ。フリーヴァーツ君のパーティーも才能のある子たちばかりなんだから、たまにはみんなのことを信じて任せてもいいんじゃない?みんなの才能を引き出すのもリーダーの務めだよ。まぁ、フリーヴァーツ君みたく、仲間をちゃんと守るというのも立派なリーダーの条件だけどね。」

(そう……、私もフリーヴァーツ君みたいにできていれば、今頃ベスは――。)


 レティシアの精神がマイナス方向に寄りかけたところでホワイトコーツが姿を現す。そしてガレンが威厳を感じさせる声で話しかけて来た。

「あの後オーガの残党どもを狩っていて遅くなったが、貴様らは私たちに話があるようだな。」

「うん、オーガロードの素材についてね。」

 レティシアは気持ちを切り替えるためにも、明るい声でガレンに返す。


「フン、オーガロードの素材などすべて貴様らにくれてやる。それよりも貴様のところの神官は<聖域>を使っていたな?」

「なるほど、何か取引がしたいというわけだね。ちなみに<聖域>は神官のイーダちゃんだけじゃなくて私も使えるよ。」

「それは(なお)のこと僥倖(ぎょうこう)だな。こちらが差し出すのは素材だけではない。我々が長年の冒険者生活で集めた武器もくれてやろう。その代わり、ウィンミルの故郷を取り戻すことに協力してもらいたい。」


 故郷を取り戻すと聞いてフリーヴァーツは興味が出た。

「ウィンミルさんも故郷を?」

 ウィンミルが静かに答える。

「そうです。聞いたところによると、フリーヴァーツさんたちもダンジョン災害で故郷のグローブ町を追い出されたのですよね?私もグローブ町から北に少し行ったところにある故郷でダンジョン災害が起きてしまって、村人全員で逃げないといけなくなったんです。」

 彼は悲壮な顔をしていた。


「……気持ちは痛い程分かります。俺たちもそうだったから……。」

 フリーヴァーツはブラッディコート事件の後の日々を思い出す――。あの時は着の身着のままで放り出されたため、食べ物を買うお金にも困った……。他にも苦労したことは数えきれないぐらいあったが、一番辛かったのはグローブ町を失ったせいでソフィアとハルの顔が曇ってしまったことだ。ウィンミルさんも同じ思いをしたのだろう。

 ウィンミルは軽くコクリと一度頷き、続ける。

「残念ながら私も年齢が年齢ですから、もうそろそろ冒険者も続けられなくなります。そうなると、私の故郷を取り戻すというのも難しくなってきます。もっと言えば、村の高齢者の方々の寿命も永遠ではない。彼らが生きている内に私たちの故郷を取り返してあげたいのです。だからどうか、<聖域>が使えるあなた達の力を貸していただけませんか?」

「――分かりました、ウィンミルさんの故郷を取り返しましょう!あ…、と言っても<聖域>が使えるのは俺たちのパーティーじゃなくて、レティシアさんたちなんですけど……。」

「うん。フリーヴァーツ君、私たちは別に困っている人を救うのは(やぶさ)かではないよ。ただ、ウィンミルさんの故郷って、グローブ町の北にあって、ダンジョン災害が起たんですよね?それに、ナンバーワン冒険者パーティーと名高いあのホワイトコーツが強力な装備を大盤振る舞いして<聖域>を使えるパーティーを武装させる?もしかして、私たちが戦わないといけない相手って、瘴雪(しょうせつ)のドラゴンなのではありませんか?」

「そうだ。」

 レティシアの疑問にガレンははっきりと答える。

「やっぱりですか……。」

「ド、ドラゴン!?」

 レティシアは達観した様子だったが、フリーヴァーツは動揺した。ウィンミルの故郷を取り返してあげたいのは本心だ。しかしドラゴンと戦うことになってしまったら、仲間たちが殺されてしまうかもしれない……。

「よし、是非一緒に討伐しましょう!」

 だがレティシアに迷いは無かった。

「レティシアさん!?」

「考えても見てくれ(たま)えよ、フリーヴァーツ君。瘴雪(しょうせつ)のドラゴンはグローブ町のすぐ近くにいるんだよ?グローブ町を取り返した後はそのドラゴンが問題になると思わない?というか、ブラッディコート事件の前から瘴雪(しょうせつ)のドラゴンは問題になっていたんだよ。」

「……なるほど、遅かれ早かれ瘴雪(しょうせつ)のドラゴンとは戦わないといけないから、トップ冒険者パーティーのホワイトコーツの協力が得られるうちに討伐してしまおうということですか。それに、この話を受ければホワイトコーツさんから強力な武器を貰えるから、ひょっとするとウィンミルさんの故郷を取り戻した後、そのまま近くのグローブ町の開放に行けるかもしれない。」

「その通り。フリーヴァーツ君は不安みたいだけれど、大丈夫だよ。みんなのことは今度こそ私が責任もって守って見せるから。」

「ありがとうございます。でも、俺もレティシアさんたちのことを守りますよ。それに、俺たちの絆があればドラゴンにも負けません!」


 最後の一文はフリーヴァーツ自身に言い聞かせるように言った。そんなフリーヴァーツにガレンは相も変わらず憎まれ口をたたく。

「フン、我々が必要なのは<聖域>が使える人間だけだ。他の弱くて仲間の足を引っ張ることしか能がない連中は大人しく引っ込んでいてもいいのだぞ?それと、ドラゴンは絆の強さなどという理想論ではどうにもならん。弱者は強者に食われるだけだ。」

「いいえ、レティシアさんとイーダさんが行くなら俺たちも行きます――!俺たちの絆を舐めてもらっては困りますね。」

「まぁいいだろう。貴様らの場合は<聖域>が使える二人だけで行動するのと、パーティー単位で行動するのではどちらの方が生存率が高いかは議論の余地があるからな。」


 こうしてフリーヴァーツたちは超高難易度ミッション「ドラゴン討伐」に挑むことになるのであった――。

 皆様は第十四話で登場したクロートンなる男を覚えておりますでしょうか?おそらく多くの人が覚えていないと思います。クロートンというのは吸血鬼ヘレンの露店にやって来て、いきなりハルにプロポーズしたキャラクターなんですが、このキャラクターが次回の話で一瞬だけ再登場します。出番自体は本当に一瞬で終わるので、必ずしも必要というわけではありませんが、少しだけ思い出しておくと便利かもしれません。


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