第9話 好感度が目に見えたら良いよね
エスタが美味しそうに料理を食べていると、再びドアをノックする音がした。
「ゆーゆさん居るっスか〜? 居るっスよね〜? じゃあ開けるっス〜!」
お構い無しかっ!
「え⁉︎ 姫様?」
『ズウウウーン』
部屋に入って来たロッタがエスタを見た瞬間、ヒロインの好感度が下がった時に鳴る残念な音が鳴り響いた。
いや、何でいきなり好感度下がってんの⁉︎
「姫様! 部屋に居ないと思ったら、何こんなとこでプチ晩餐やってんスか⁉︎」
「あらロッタ。あなたも食べる〜?」
「さっき食べたばっかっスよ。それより、ゆーゆさんに何か用があって来たんスよね? それは済んだんスか?」
ん? ロッタの奴、何か機嫌悪い?
「あ〜そうでした〜。ゆーゆさんに親衛隊の件を改めてお願いしに来たんでしたぁ」
「そっスか。実はあたしもその件でゆーゆさんにお願いに来たっス。行くアテが無いなら、どうかあたしと親衛隊をやってほしいっス。やはりあたしひとりでは今日みたいな事態になった時、姫様を守り切れるか不安っス。いくらあたしが強くても、数で押してこられたら対処しきれないかもしれないっス」
またさり気なく自慢しやがった。
「ロッタもああ言ってますし、どうですかぁ?」
「でも姫様って国一番の白魔導士で、例え天変地異が来ても生き残るとか言ってなかった?」
「そりゃ確かに死にはしないっス! でも誘拐されてどこかに幽閉される可能性だってあるっス!」
「ああそっか……確かに生きてれば良いって訳でも無いか……」
「私が側に居れば、どんな大怪我をしてもすぐに治してあげますよぉ?」
う〜ん。僕にチート能力が有る事が判明したし、姫様が居れば死ぬ確率もかなり低い、か……
「うん、分かった! いつまでかは分かんないけど、とりあえずやれるとこまでやってみるよ!」
「本当っスか? ありがとうっス! これでとても心強いっス!」
『ピロリロリン!』
「ありがとうございますぅ。これで楽しくなりますねぇ」
『ピロリロリン!』
うん。2人共好感度が上がったようだ。
そして一夜明け、僕は早速ゲーム機に付与されている能力について色々検証する事にした。
それで分かった事は、やはりこのゲーム機にセットしているソフトのプレイ状況によって、現実にその能力が使えるみたいだ。
例えばRPGでプレイキャラを魔法使いにしていれば、そのキャラと同じ魔法が使用でき、戦士なら剣が使えるといった具合だ。
有難い事に、その時のプレイキャラが装備している武器や防具、所持しているアイテムなんかも現実に具現化する事ができるらしい。
今回のローンチソフトには無いが、もしも巨大ロボットが出て来るゲームをやった場合、実際にロボットを出す事が出来たりするんだろうか?
もしそんなソフトが発売されたら試してみよう。
因みにソフトは起動状態、またはスリープ状態で無ければ能力は発動しない。
なので、仮にソフトを全てダウンロード版にして常に本体に入れていたとしても、それは起動していると見なされないので多分能力は使えないだろう。
そこはもうちょっと融通を利かせてくれても良かったのに、とは思うけど。
という訳で僕は、有事の際にちゃんと戦えるよう、主にRPGをメインにプレイしてレベルを上げまくった。
親衛隊に任命されてからは、幸いな事に何事も無く数日が過ぎていった。
そんな平和な日々が続いたある日の夜、僕はシミュレーションRPGの『ファイターエムブレム 』をプレイしていた。
元々シミュレーション好きもあって、このソフトも既に相当やり込んでいる。
因みにこのソフトによる能力もRPGと同じように、主人公キャラと同じ能力を使えるというものだった。
何だかそれではシミュレーションらしさが無いな〜とは思ったが、系統は同じバトルものだし、シミュレーションRPGなのでやはりRPG的要素も高いから、どうしても能力は似て来るのかもしれない。
ジャンルが違うので一概には言えないが、RPGのキャラとシミュレーションRPGのキャラ、仮にレベルを同じとした場合、強さ的にはRPGのキャラの方が強いように感じた。
攻撃時の演出等が、RPGの方が派手だからだろうか?
しばらくプレイしていると、いきなり視界の端にマップのようなものが見えた。
「え⁉︎ 何だこれ?」
ゲームをやり過ぎてゲーム画面が目に焼き付いたのかと思ったが、何度まばたきしたり目を擦ってもそれが消える事は無かった。
「もしかしてこれって、この城か?」
改めてじっと見てみると、そのマップはゲーム画面の様にこの城を真上から見た状態で、各部屋や間取りが全て分かるようになっていた。
「ん? 何か点が動いてる?」
マップの所々に青い光点、そして端の方に赤い光点がいくつか固まっていた。
「この赤いのって、もしかして敵って事か?」
シミュレーションRPGをやり込んでる僕は、それが何を意味するのかすぐにピンと来た。
その赤い光点は少しずつ動き、城の中心部に向かっているようだった。
「この方向ってまさか、姫様⁉︎ マズい!」
僕は慌てて部屋を飛び出した。
「うわっ! ビックリしたっス!」
部屋の前に居たロッタと危うくぶつかりかけた。
「どうしたんスかそんなに慌てて⁉︎ ウンコ漏れそうなんスか?」
だったら部屋のトイレ行くわ!
「姫様のとこだ!」
「何言ってんスか! 夜這いっスか? そんなのバレたら即死刑っスよ⁉︎」
「するか!」
てか、バレなかったら良いのかよ。