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第8話 異世界転生といえばチート能力

 尚もしつこく勧誘して来る国王。


「聞けばゆーゆ殿は今日この国に着いたばかりだそうじゃな?」

「あ、はい」


 着いたというか飛ばされたというか。


「職はおろか、泊まる所さえ無いと聞いた」

「そう、ですね」


 この歳で仕事ってのもあれだけど、泊まるところが無いのは事実だ。


「そこでじゃ。親衛隊になってくれれば国から給料は出るし、寝泊まりする所も当然この城になるし、食事の心配もいらん。どうじゃ? 悪い話では無かろう?」


 確かに至れり尽くせりだけど、当然有事の際には命懸けで戦うんだよな〜。


「少し……考えさせてもらえますか?」

「うむ、よかろう。良い返事を期待しておるぞ。結論が出るまではこの城に滞在すると良い。その間の給料は出せんが、食事の面倒ぐらいは見てやろう」

「あ、ありがとうございます」


「では、堅苦しい話はここまでにして、メシじゃメシじゃー!」

「おー‼︎」


 国王の号令と共に、晩餐が始まった。


 そういえば、この世界に来てからまだ何も食べて無かったんだった。色々あり過ぎて空腹なんてすっかり忘れてたよ。


 テーブルに大量に並べられた料理をどんどん食べ進めていると、ふと隣に座っている姫様の動きが止まっている事に気付く。


 フォークを持ったままジッと料理を見つめてるけど、何やってんだろ?


「う〜、ハッ!」


 気合いと共にフォークでウインナーを刺そうとしたが上手く刺さらず、フォークは虚しく皿を鳴らせるだけだった。


「う〜ん。また逃げられちゃいましたぁ」

「ほら〜、だからあたしが食べさせてあげるって言ってるじゃないっスか〜」

「ぶ〜! そんな子供みたいな事出来ませ〜ん!」

「だって今のでもう10回目っスよ〜? いい加減諦めて他の料理にしたらどうっスか〜?」


 ええ〜⁉︎ この姫様、さっきみたいのを10回もやってるの? さすがにヤバいんじゃ?


「そういえば私、そんなにお腹空いて無かったんです! だから飲み物を頂きます!」

「ええっ! マジっスか⁉︎ 今日はドレスっスよ⁉︎」


 何だか慌てた様子のロッタと周りのメイド達。

 

 飲み物を飲むのに何でみんな慌てて?


 その理由はすぐに分かった。

 エスタがジュースを飲もうとグラスを口に近付けたが、グラスがちゃんと口に付いておらず、ジュースはエスタのドレスを別の色に染めていった。


「冷たいです〜」

「ああ〜! やっぱりやったっス〜! は、早く着替えに行くっスよ!」


 エスタはロッタ達に連れられて消えて行った。

 立て続けに起きた信じられない光景に固まっていると、国王が口を開く。


「気にするなゆーゆ殿。いつもの事じゃ」


 いつもなの⁉︎


 色々あったが、再び部屋に戻って来た僕は当然ゲームを始める。

 バトルものばかり続いたから、今度はのんびりと恋愛シミュレーションゲームでもやろう。


 様々なコマンドを選択しながらヒロインの好感度を上げて行く、王道のゲーム『ラブラブキス』だ。

 ゲームを進めながらも、今日あった事を色々整理してみた。


 向こうの世界で事故にあって死んで、女神様に買ったばかりで全然遊んでなかったゲーム機を遊べるように頼んで、こっちに来てからRPGやってたら夜になって、街を目指してたらロッタと出会って野盗に襲われて、また死にかけた時にどこからか魔導士の杖が出て来て、見よう見まねでやったらホントに魔法が出て。


 いや、そもそもあの時点でおかしいんだよな?

 結局チート能力は貰って無い筈なのに、いきなり魔法が使えたし。でもその後にブラウと模擬戦やった時は何故か魔法が使えなくなってて、でもその代わりに急に格闘技が使えるようになって騎士団長相手に勝っちゃって……


「あれ? 魔法が使えなくなって格闘技が使えるようになった?」


 僕はある事に気付いた。

 模擬戦やった時は確か格闘ゲームをやった後で、野盗に襲われた時はRPG……しかもジョブは魔法使いだった。


「ええ〜⁉︎ まさかまさか〜⁉︎」


 僕が確信に迫りかけた時、ドアをノックする音がした。


「ゆーゆさ〜ん。入ってますか〜?」


 トイレかっ!


「あ、は〜い!」


 僕はまたソフトをスリープ状態にして無限倉庫にしまった後、ドアを開けた。


「夜分遅くに申し訳ないです〜。今、よろしいですか〜?」


 尋ねて来たのはエスタだった。


「え? あ、はい大丈夫ですが」

「ありがとうございますぅ。じゃあ立ち話もなんですから入らせてもらいますねぇ」


 こっちのセリフ!


 僕はエスタと隣り合わせにベッドに座った。


「どう、したんですか? こんな夜中に」

「えっと〜」

「ぐうう〜」


 エスタが何かを言いかけた時、突然エスタのお腹が鳴った。


「も〜。今大事なお話してるんですからぁ、静かにしてくださ〜い」


 そういえば姫様、結局あのまま帰って来なかったから、ろくにご飯食べて無いんだろうなぁ?


「あ、そうだ」


 晩餐の料理、余りに量が多くて食べきれなかったから、残った料理はどうするのか聞いたら殆どは廃棄するって言うから、勿体無いと思って夜食用にいくつか貰ったんだった。


「あの〜、姫様に対して失礼かなとは思うんですが、良かったら食べます?」


 そう言って僕は無限倉庫にしまっていたいくつかの料理を取り出してテーブルに並べた。

 晩餐から結構時間が経ってるのに料理はまだ熱を保っていた。

 

 無限倉庫に入れるとそのままの状態で保存出来るのか。

 じゃあ生ものなんかもずっと保存出来て便利だな〜。


「ふわああ〜! 良いんですかぁ?」

「うん、どうぞ」

「ありがとうございますぅ。晩御飯食べた筈なのに、何故かお腹が空いて困ってたんですぅ」


 いや、全然食べれてなかったけどね!


 その時、ついさっき何度も聞いた事のある電子音が頭に鳴り響いた。


 え? 今のってラブラブキスで、選んだ選択肢が正解だった時にヒロインの好感度が上がった時の音⁉︎


 ちょっと試してみるか?


「姫様が美味しそうに食べてる所を見てると、僕も嬉しくなります」

「えぇ〜? 何ですかいきなり〜? でもありがとうございますぅ」


『ピロリロリン』


 ああ、これやっぱゲーム機に付いてるチート能力だ!


 変なタイミングで僕は確信した。






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