第72話 卑怯とか言わないで
僕がチョコに抱きつかれていた頃、トウカもミントに触れられる距離まで近付いていた。
「あと少しなのデス」
「甘いでー!」
もう少しでミントに触れようかという所で、突如トウカの動きが止まった。
「何デス? 見えない何かに掴まれてるデス」
「ゴースト君や。見える魔獣にばかり気を取られてて、透明なゴースト君には気付かんかったやろ?」
ミントがそう言うと、トウカの背後に白い物体が浮かび上がる。
『ああーっとお! 猛スピードでミント選手に迫っていたトウカ選手が突如動きを止めたと思ったら、何やらトウカ選手の背後に白い幽霊の様な物が現れましたー! その幽霊に両手足をガッチリ掴まれているトウカ選手! 全く身動きが出来ないようだー!』
「ゆ、幽霊デス? 私からは見えないのデス! 掴まれてる感触があるのに見えないのは、逆に怖いのデス!」
背後から5体の幽霊型魔獣がトウカの両手足と頭をガッチリ掴んでいる為、トウカは振り返って見る事が出来ないようだ。
「はっはー! もうちょいやったのに残念やったなー! さあ! ここからはくすぐりの刑や! 阿修羅君、やってまい!」
6本の腕を持つ仏像のような魔獣が、動けないトウカをくすぐっていく。
「あひゃーはははは! くす、くすぐった、や、やめてー!」
『動けないトウカ選手をミント選手の召喚獣が容赦無くくすぐります! この絵面は、何だかエロいぞー!』
「はっはー、どうや? 降参するならやめたるで〜?」
「だ、誰が降参なんか……あひゃひゃひゃひゃ! ぜ、絶対にしない、デス! アハハハハ!」
「う〜ん。あんたは姫さんの幼馴染みたいやから、痛い目には合わせた無いねん。このまま穏便に済まさせてくれへんか〜?」
「ア、アハハハハ! わ、分かったのデス! アハハハハ! だ、だからもう勘弁してほしいのデス! ひゃひゃひゃひゃ!」
「分かってくれたんか! よっしゃ、ほなこの辺で勘弁しといたろ!」
トウカの拘束を解くミント。
だが次の瞬間、あっという間にミントの背後に回り込み、胴締めスリーパーの体勢に固めるトウカ。
「んなっ? ちょ、ちょい待ちーなトウカはん! あんた今、降参する言うたやないかー!」
「はて? 私は分かったって言っただけで、降参とはひと言も言って無いのデス」
「はあっ? ち、ちょっとレフェリーはん!」
「確かにトウカ選手は降参とは言っていない! だからその攻撃は有効だ!」
「んなアホなー! そんなんズルやー!」
『ああーっとこれはトウカ選手の作戦勝ちかー? 勝ちを確信したミント選手が油断した隙に、トウカ選手大逆転だー!』
まあ屁理屈ではあるけど、油断したミントが悪い、うん。
「クッ! でもウチには魔獣がある! 出て来ぃや、タコ入道君! 今度こそトウカはんの全身を絡めとったりー!」
だが、何も出て来なかった。
「な? 何でや! 何で出て来んのや? 土竜君! ゴースト君! ミント君!」
やはり何も出て来ない。
「な、何で誰も来ぉへんのや? ま、まさかトウカはんの能力は、ホンマに相手の能力を消す能力なんか?」
「違うのデス。私の能力は、触れた相手の能力を一時的に上げる事が出来るデスが、逆に下げる事も出来るデス」
「な、なんやてー! そんなん初耳やがなー! せ、せやからウチが出した魔獣が消えて、今も……創り出す事が……でけへん、訳か……」
「そういう事なのデス。私もあなたを傷付けたく無いデスから、このまま締め落とすデス」
ミントの頸動脈を締め上げるトウカ。
「こ、心は傷付いた、で……か、堪忍な……チョコはん……あ、後は、頼む……で……」
気を失うミント。
ミントの状態を確認するレフェリー。
「ミント選手、気絶により失格!」
『ああーっとおー! 劣勢からの大逆転でミント選手を落としましたトウカ選手! チョコ選手に試合続行の意思が無ければ、このままチームトウゆの優勝となりますが、果たしてどうかー?』
レフェリーがチョコに、試合を続けるかの意志を確認する。
「どうするねチョコ選手! まだ続けるか? それとも棄権するかね?」
「当然! 最後までやる!」
『チョコ選手、継続を宣言したああー! この試合はまだまだ終わらないぞー!』
「ゆーゆ!」
ミントを絞め落としたトウカがこっちに駆け寄って来てチョコに触ろうとしたが、慌てて僕を離して距離を取るチョコ。
「トウカの能力が判明した以上、触らせない」
「しまったのデス。ついペラペラとバラしてしまったのデス」
「そだね。でもおかげで助かったよ。ありがと、トウカ」
「どういたしましてデス。さあ、後はふたりでチョコちゃんを倒すのデス」
「ああ!」
『ミント選手を倒したトウカ選手がゆーゆ選手と合流しましたー! これで2対1! チョコ選手がかなり不利になったぞー!』
「まだだ! まだ終わらんよ!」
「ク◯トロ・バジーナかっ!」




