第70話 いくら小説でも自主規制します
いよいよ始まる決勝戦に向けて、僕達は闘技場に降りて行った。
闘技場には既に、チョコミントのふたりが待ち構えていた。
「いよいよやなぁ! 今度こそ勝たせてもらうでー!」
「ん。リベンジ」
「僕達だって負けないよ」
「殺るのデス!」
殺しちゃダメですよ、トウカさん。
『皆様ー! 大変長らくお待たせ致しましたー! 只今よりー! 王位争奪サバイバルマッチ、決勝戦を行います!』
大歓声に包まれる闘技場。
『この戦いに勝利したチームが王の座、もしくは王にしたい者を指名する事ができます! 実力的にはどちらも問題無し! 後はこの国を治める器たりうるでしょうかー!』
僕にそんな器無ぇよ!
『それでは、改めて選手紹介を行います。チームチョコミントアイス、ひとりめはチョコ選手! 見た目は少女ながら、巨人をも投げ飛ばすパワーとスピード! そして、剣でさえ素手で受け止める脅威の防御力! その能力は純粋な力! シンプル故に最強! 誰がこのロリっ子を止められるのかー!』
「む、ロリっ子じゃ無いもん!」
『同じくチョコミントアイスのミント選手! あらゆる魔獣を生み出す召喚士! いや、魔獣だけでは無く、地面に大穴を開けたり壁を立てたり、出来る事は無限だー! 無数の召喚獣を掻い潜り、ミント選手に到達するのは至難の業だー!』
「だから、召喚士ちゃう言うてるやろー! ウチはクリエイターや!」
『対するはチームトウゆのトウカ選手! 玄人好みの体術を駆使し、相手を翻弄して来ましたが、未だその能力は未知数! この決勝戦で、遂にそのベールを脱ぐのかー!』
「能力なら何度か使ったのデス」
『そして最後はゆーゆ選手! 剣を始め、ありとあらゆる武器を使いこなし魔法まで使える、正にオールマイティー! 少年の姿をしているが、その正体は男の仮面を被った美少女! 断然わたくしのイチ押しです! ゆーゆちゃんになら、何を命令されても構いません!』
変態かっ!
だが、僕の紹介が終わった途端、客席から大ブーイングが沸き起こる。
『ああーとぉ! これはどうした事かー? 他の3名は大歓声だったのに、ゆーゆ選手には大ブーイングが起こっているぞー!』
「な、何だよ?」
トウカが無言で僕の肩をポンポンと2回叩いた。
「はあ……あーあー、分かったよ! 分かりましたよ!」
僕が魔法少女に変身した瞬間、ブーイングは割れんばかりの大歓声に変わった。
まあいいさ! みんな僕を女の子だと思ってるのなら、チョコミントに少々強い攻撃をしても、引かれる事は無いだろう。
『さあ、奇しくも2人だけのチーム! そして美少女ばかりによる決勝戦となりました! まもなく試合開始です!』
「トウカ」
「ハイなのデス」
「あの2人相手に手加減なんて出来ないから、最初から全開で行く!」
「分かったのデス。ではゆーゆの能力を底上げするのデス」
「頼むね」
この大会が始まる前に、僕にトウカの能力を使ったらどうなるか試した所、例えばRPGならレベル不足でまだ習得していない技や魔法が使える、といった感じになるのだ。
さすがに持っていないソフトの能力までは使えないようだが……いや、もしかしたら使えるのかもしれないが、僕自身がそれを認識していないから、結局使えないのと同じだ。
もっと時間があったなら、今後発売されそうなソフトを予測して、色々試してみたかったけど。
そして遂に、決勝戦が始まる。
「グラビティ!」
「重っ!」
僕はチョコミントのふたりに同時に重力魔法をかけた。
ただし、ミントは地面に押さえ付けて動けなくし、チョコは逆に宙に浮かせた。
「このまま宇宙の彼方まで飛ばされる〜」
「いやまさか! そんな事したら、いくらチョコでも死んじゃうよ! でも、宙に浮かせちゃえば、さすがのチョコのパワーも活かせないでしょ?」
射線が客席から離れたとこまでチョコを浮かべた僕は、魔法少女最大の技を放つ。
「ディメンション! バスタぁぁぁー!」
僕の放った魔法はチョコを通過した後、遥か空へと消えていった。
「チョコはん!」
『試合開始早々、ゆーゆ選手のとんでもない魔法がチョコ選手に炸裂したああー! 果たしてチョコ選手は生きているのかああー!』
死にはしないだろうけど、これを食らってさすがに無傷って事は無いだろ?
身体から煙を放ちながら、地面に落下するチョコ。
「熱い……服が焦げちゃった……」
立ち上がったチョコは、服こそボロボロだったが、見た目は殆ど無傷だった。
『チョコ選手、無事だああー! あの魔法を食らって尚無傷! いったいどうやって倒せばいいんだー!』
いや、魔法少女最大の技を食らって服が焦げただけかいっ!
普通に考えれば、あんな超火力の直撃を食らって服が残る筈は無いのだが、そこは自主規制するのである。




