第7話 親衛隊結成？
「どういうつもりだ貴様！ 魔法を使わずに素手で攻撃などと、俺をナメているのか？ それとも、それが貴様本来の戦闘スタイルなのか？」
どっちも違います〜！
僕のスタイルはただのゲーマーです〜！
「まあ良い。素手の戦いが望みならば、こちらも素手で相手をしてやろう！」
いや、勝手に納得して進めないで〜！
「ハアッ！」
剣を捨て、拳や蹴りによる攻撃を繰り出して来るブラウ。
しかしそれをことごとくかわせてしまう僕。
見える！ 見えるぞ！ 僕にも敵が見える！
まるでニュータイプばりにブラウの動きが分かってしまう。
「貴様ー！」
大振りになったブラウのパンチをいなし、後頭部に一撃を喰らわせた。
「グアッ！ こ、このおー‼︎」
怒りで動きが緩慢になるブラウ。
あ、なんかイケるかも。
何となく出来そうな気がしたのでやってみたら、見事にブラウの顎にサマーサルトキックが炸裂していた。
「グハッ！」
「出来た〜！」
よろけながらも踏ん張るブラウ。
「ふ、ふざけるな貴様あー‼︎」
またしても出来そうな気がしたので、素早くブラウの背後に周りジャーマンスープレックスで投げてみた。
「グハァッ！」
我ながら見事なブリッジで投げきれた。
いやぁ、イメージだけでも出来るもんだな〜。
審判が仰向けに倒れたブラウの様子を確認して、腕を交差させる。
「勝者！ ゆーゆ！」
お前もゆーゆって言うんか〜い！
驚きの声と大拍手の中、僕は逃げるように闘技場から出て行った。
「す、凄いっスゆーゆさん！ 素手の戦いとはいえ、まさかあの団長を倒してしまうなんて、正直驚きっス！」
「何か分かんないけど、身体が勝手に動いた……みたいな？」
「なんスかそれ？ まるで達人のセリフじゃないっスか？ しかしゆーゆさん、実は魔法よりも格闘戦の方が得意なんじゃないっスか？」
「いや、別に得意という訳では……」
「でもあえて魔法を使わずに格闘戦で倒すなんて、あれっスね。能あるバカは爪隠すとか言うやつっスね」
バカはお前だ。
「あ、ゆーゆさん怪我してるじゃないっスか！ 一緒に救護室に行くっス！ 白魔導士さんに治療してもらうっス！ あたしが治しても良いんスが、さっきの戦いで魔力を使い過ぎてもうカラカラっス」
お前の頭がか？
ロッタに手を引っ張られながら、僕は救護室に向かった。
そっちの手、怪我してるんだけどな。
「ここに座って待ってるっス！ 今白魔導士さんを連れて来るっス！」
「うん」
医者じゃなくて白魔導士か〜。
ホントに異世界なんだなぁ。
しばらく待っていると、ドアをノックする音がする。
「ゆーゆさん、入るっスよ〜！ ちゃんと服着てるっスか〜？」
どんな状況だよ！
「お邪魔しますね〜」
何故かロッタが連れて来たのはエスタだった。
「あれ？ 姫様？ 何でこんなとこに？」
「何言ってんスか？ 白魔導士さんを連れて来るって言ったっスよね？」
「え⁉︎ 白魔導士さんって……まさか姫様が？」
「そうですよぉ。私が王女様兼白魔導士さんですよぉ、エヘン」
ドヤ顔で胸を張ったエスタが、またドアに後頭部をぶつけていた。
「痛あ〜い！ 何するんですかぁロッタ〜？」
「いや、あたしじゃ無いっスよ！」
それを聞いたエスタが疑いの眼差しで僕を見る。
「いや、どう考えても無理でしょ！」
僕の隣に座り、傷口に手をかざすエスタ。
エスタの手が淡い光を放つと、あっという間に傷口は跡形も無く治っていた。
「す、凄い！」
「姫様は一見ただのオトボケ少女っスが、実はこの国一番の白魔導士さんっス！ この世に姫様に治せない怪我は無いと言っても過言じゃ無いっス！ 例え天変地異が起きたとしても、姫様だけは絶対生き残るっス！ それもあって馬車の護衛も少なかったっス！」
説明ゼリフありがとう。
「な、なるほど。そういう事だったのか」
これこそ正に、能ある鷹は爪隠すってやつだな。
「こう見えて私凄いんですよ〜、エヘン！」
あ、このパターンは！
案の定、胸を張ったエスタだったが、後ろに壁が無い為に体勢を崩して倒れそうになる。
「危ない！」
予測していた事もあって、僕はすぐにエスタの身体を支える事が出来た。
「ナイスキャッチです〜」
「フフ。ゆーゆさんも姫様の扱いが分かって来たっスね」
そしてその後、ようやく晩餐会が開かれた。
「おお！ ゆーゆ殿！ 実に見事な戦いぶりであったぞ！ さあ、こっちに来るがよい！」
「あ、どもっス」
僕は王様や姫様、ロッタと同じテーブルに座る事になった。
偉い人の前だと緊張するから、出来れば隅っこの方が良かったんだけどな。
遠くの方からブラウが僕を睨んでいるような気がするが、目を合わせないようにしよう。
「しかし、魔法も使わずにあのブラウを倒してしまうとは恐れ入ったぞ！ ワハハハハ！」
使わないじゃなくて使えなかったんですけどね〜。
「そこでじゃ！ エスタやロッタとも話したんじゃが、その腕を見込んでそなたをエスタの親衛隊に任命したいのじゃが、どうかの？」
「……はいいい〜⁉︎」
いやいやいや、いきなり何言い出すんだこの人⁉︎
自分で言うのもなんだけど、今日会ったばかりのこんな得体の知れない奴を姫様の親衛隊にするって？
ん？ 親衛隊って、アイドルとかのコアなファンの事じゃ無いよね？
