第67話 数の力は恐ろしい
見た目は魔法少女のままだが、洗脳状態? はどうやら解けたようだ。
今のが小説家の能力か……一瞬本当にチーム女子会の3人を友達だと認識してたもんな〜。ああ、怖い怖い。
トウカが僕の能力を底上げしてくれたから、何とか洗脳は解けたけど、トウカの能力の事、あんこ餅にバレてないよなぁ? はたから見れば気合いを入れただけ、みたいに見えたと思うけど……
「ゆーゆさん! 友であるわたくし達が戦うのは哀し過ぎます。どうかここは棄権なさってくださいな!」
小説家にはバレて無いみたいだ。見た目が少女のままなのが功を奏したか?
ここは上手く話を合わせとくか……
「せ、雪っちゃん達は友達だけど、わ、私はトウカちゃんも大切なお友達なの! トウカちゃんの願いを叶えてあげたい! だから棄権する訳にはいかないわ!」
ウエッ。自分で言ってて気持ち悪くなる。こんなキャラで、小説家のイメージに合ってるのか?
「そう、残念だわ……わたくしの能力で無理矢理棄権させる事も出来ますが、それはルールに抵触する恐れがあります。仕方ありませんわ……凛さん! 少々痛い目に合わせてさしあげて!」
「オーケー!」
大車輪が例の如く、槍をぶん回しながら前に出て来る。
確か、回せば回す程威力が上がるんだったか……なら、今の内に止める!
僕は同じく槍を装備して、大車輪に振り下ろす。
「グッ! 何て馬鹿力なの!」
そりゃ、肉体を強化してるからね。
「女子に馬鹿力だなんて、失礼ね!」
幾度かの槍の撃ち合いの後、僕は一瞬の隙を見て身体を一回転させて槍を薙ぎ払った。
それをガードする大車輪。
「ファイヤー!」
僕は空いた左手で至近距離から火の玉を撃った。
「熱っ!」
距離を取り、槍を回して火を消した大車輪。
『激しい槍の攻防からの炎魔法で凛選手にダメージを与えましたゆーゆ選手!』
「ゆーゆの攻撃によりダメージを負った凛であったが、謎の光により凛の傷は一瞬で完治した」
小説家が語り終えると、その文面通り大車輪の傷は治っていた。
「ゲッ、マジか」
何でも有りだなあの能力。
やはり1番厄介なのは小説家か。
「ファイヤー!」
僕は小説家のノートを燃やす為、炎魔法を撃とうとしたが、何故か魔法は出なかった。
「出ない? 何で?」
「ゆーゆ! あんこ餅デス!」
トウカの声にあんこ餅を見ると、口がモゴモゴ動いている。
炎魔法を食われた?
食われたのは炎魔法だけか?
僕はあんこ餅に見えない様に、身体の後ろで小さく風魔法を撃ってみた。
風を感じる……魔法そのものを食うんじゃなくて、実際に見た能力しか食えないのか?
でも見せた能力は即食われちゃうから、使えるのは一度きりか……あんこ餅を先に倒しても小説家の能力で復活するだろうし、やはり小説家を先に仕留めるか。
「どこ見てるの!」
大車輪が再び槍を回しながら襲いかかって来た。
「アイスロック!」
僕は氷魔法を放ち、大車輪の槍を腕ごと凍らせた。
「えっ? 何で魔法が使えるの? あなたの魔法は確かに食べた筈なのに!」
あんこ餅が驚いてる?
もしかして、本来は魔法そのものを食われる所を、トウカに能力を底上げしてもらったおかげで、食われるのが炎魔法だけで済んだのか? なら!
あんこ餅が僕の氷魔法を食べている内に、次々に魔法を連発した。
「サンダー! ウインドカッター! ロックウォール! グラビティ!」
「ちょ、ちょっと待って! そんないっぺんに食べきれ……モガモガ!」
「杏!」
あんこ餅が餅を食べるのに苦労している隙に間合いを詰め、小説家のノートを切り裂いた。
「しまった! ノートがっ!」
そのまま喉をつまらせているあんこ餅に接近し、手刀であんこ餅を気絶させた。
「ウグッ! やっぱり、あの娘が何か能力……つ、使ったの、ね……ガクッ」
「正解。トウカが上手くやったから気付かなかったでしょ?」
あんこ餅を気絶させた後、僕は小説家と大車輪に槍を向け、降伏を促した。
「これであなた達の能力は全部封じたと思うけど、まだやる?」
「クッ……杏も凛もやられたし、わたくしもノートが無ければ能力を使えません。参りましたわ……わたくし達の負けです」
「チーム女子会降参により、チームトウゆの勝利!」
『ああっとおー! 1回戦と同じく、試合が動いたと思った瞬間、あっという間に勝負を決めましたチームトウゆ! 1回戦の時はトウカ選手が勝負を決めましたが、今回は美少女となったゆーゆ選手が決めました! それにしても可愛らしいぞゆーゆ選手!』
「セクハラ!」
実況者がウザいので、僕は男の姿に戻った。
だがその瞬間、客席から一斉に大ブーイングが起こった。
「な、何だぁ?」
「ゆーゆちゃん! 何でまた男の姿に変身するんだー!」
「そうよそうよ! せっかく可愛いんだから、女の子のままでいましょうよー!」
「ゆーゆちゃん! 絶対優勝して俺達の女王様になってくれー!」
いや、何で元々僕が女の子だった、みたいになってんだよ?
『勝利したチームトウゆにまさかのブーイングが起こっているぞー! いやこれは、ゆーゆちゃんがまた男に変身した事に対してだー! 勿論私も女の子の方が良いぞー!』
「いや変身って、僕はおと……」
「ゆーゆ……」
トウカが僕の肩に手を置き、黙って首を横に振る。
それを見た僕も、黙って再び魔法少女へ変身した瞬間、大歓声が起こった。




