第66話 あり得ない事でも疑問に思わない夢の不思議
決勝トーナメント1回戦の試合が全て終わった。
結局ほぼ予想通りのチームが準決勝に駒を進めた。
そして一夜明けた2日目、僕達チームトウゆはチーム女子会と戦う事となる。
『皆様お待たせ致しました! 只今より、王位争奪トーナメント、準決勝第1試合を行います! 1回戦でチーム運任せを撃ち破ったチームトウゆ! 1回戦ではトウカ選手の動きが目立っていましたが、準決勝では国王推薦のゆーゆ選手がその力を見せつけてくれるのかー?』
ハードル上げんな!
『対するは、チーム遊園地を圧倒して勝ち上がって来ましたチーム女子会! それにしてもこの試合、ゆーゆ選手以外は全員女性! ゆーゆ選手、羨ましいぞー!』
セクハラ!
「違うのデス! ゆーゆも女の子だから、全員女子なのデス!」
うん、まあ普通は観客にウチらの会話の内容が聴こえる訳無いから、別に訂正しなくてもい〜や。
「そうですか……あなたも転生者のようですが、女である事を隠し気丈に振る舞うとは、あなたも色々苦労なされたんですね?」
「ん? そだね」
小説家が何やら勘違いしてるみたいだけど、もういちいち訂正するのめんどくさい。
「それでは! 試合始め!」
1回戦では後方に下がっていた小説家が何故か、大車輪と共に前に出て来た。
何だ? 彼女の能力って確か、小説に書いた事が現実になる、だったよな? 前に出て来て大丈夫なのか?
『さあ、準決勝第1試合が始まりました! 前に出たのは、チームトウゆはゆーゆ選手、チーム女子会は凛選手と雪花選手です! 雪花選手は1回戦では後方に下がっていましたが、今回は前に出てまいりました! 謎の多いチーム女子会の能力! 雪花選手はいったいどのような能力を持っているのかー?』
選手の能力は実況者には伝わって無いのか? それとも知ってるけど敢えて演出で知らないフリをしてるのか? まあ、実況の声が会場中にダダ漏れだから、ベラベラ能力の秘密を喋られても困るんだけど。
「ゆーゆさん、でしたわね?」
「ん? そだよ」
「どこからどう見ても男性、ですわね? あなた、本当に女性なのですか?」
正真正銘の男なんだから、そりゃあ男にしか見えないでしょうよ。
「ゆーゆは能力によって男に変身してるデス! 本当はとても可愛い女の子なのデス!」
こらこらトウカさんや! 話をややこしくするんじゃあありません!
「そうなのですか? それは大変興味があります。是非あなたの本当のお姿を拝見させて頂きたいですわ」
いや、これが本当のお姿なんだから、どうぞお好きなだけご覧なさいな。
何かを書き始める小説家。
う〜ん。ハッキリ言って嫌な予感しかしないんだけど、ここで手を出すのは野暮なんだろうなぁ。
「書けましたわ!」
早っ! その文才を僕にも分けてほしいよ。
自分の書いた小説を読み始める小説家。
「異世界に転生して来た少女ゆーゆ。だが、か弱い少女がこの過酷な世界で生き抜くには、女である事を捨てるしかなかった。そこで女神より授かりし能力により変身し、男として生きる事にしたゆーゆ。だが、ダール国の闘技場で同じく転生者である、杏、雪花、凛の3人と友になった事により偽りの衣を脱ぎ捨て、少女に戻る決意をしたゆーゆであった」
あらすじかっ! あっさり女に戻っちゃったら面白くも何とも無いじゃん。てか、気になる文面が? 少女に戻る? 3人と友? まさか?
危惧した通り、僕は魔法少女に変身した時の、例の少女の姿になっていた。
「んなっ!」
『なななな何とおおー! ゆーゆ選手がいきなり可愛らしい少女の姿へと変わりましたああー! これはゆーゆ選手の能力によるものか? それともチーム女子会の誰かの能力によるものなのでしょうかああー!』
「まあ、可愛いらしい! それがあなたの本当のお姿なのですね!」
「いや、違……」
否定しようとしたが、上手く言葉にする事が出来なかった。
何、だ? これは、雪っちゃんの能力……ん? 雪っちゃん? 何で私、敵である娘をちゃん付けで呼んで……ん? 私? 一人称までおかしく?
「ゆーゆ! 固まってどうしたデスか? 何か攻撃されたデスか?」
トウカが何か言ってる……攻撃? 誰の? あ、そうか! 僕は今、チーム女子会と戦ってて……戦う? 何で? 雪っちゃん達は私の大切なお友達なのに……
『ああっとどうした事か? ゆーゆ選手、いきなり美少女に変身したかと思ったら、そこから全く動かなくなりました! チーム女子会のメンバーもゆーゆ選手を攻撃しようとはしません。いやそれとも、今既に何らかの攻撃が行われているのでしょうかー?』
「もう! ゆーゆ! しっかりするのデス!」
『ああーっとトウカ選手! 微動だにしないゆーゆ選手の両頬を叩いて気合いを入れたー!』
その瞬間、僕の頭のモヤモヤが晴れ、考えがまとまった。
「トウ、カ……?」
相手に聞かれないように、耳元で小声で話すトウカ。
「目が覚めたデスか? 何かされたっぽかったから荒療治デスが、ゆーゆの能力を上げたデス。これで相手の能力の影響が弱まった筈なのデス」
「ありがと、トウカ。助かったよ」
「いえいえなのデス。でもやっぱりゆーゆは女の子の姿が可愛いので、見た目はそのままにしといたデス」
「何でぇー!」




