第54話 やる気スイッチ故障中
昼食を終え、お互いのチームが今後について話し合った。
「さて……まだ日も高いっスから、寝るには早いっスよね?」
「だな……」
「小屋に留まれない以上、外に出るしか無い訳だが……」
「出会ってしまったからには、このままサヨナラって訳にはいかないっスよね〜」
「前回は夜だったからそのまま宿泊して、翌朝皆がバラバラに動き始めたから戦う事は無かったが、今回はさすがになぁ」
「やっぱりヴィオラお姉ちゃん達と戦うんですかぁ? イヤだなぁ」
「私もなのデス。さっきまであんなに楽しかったのに、一歩外に出た途端に殺し合いなんて残酷なのデス」
「いや、殺し合いはしないよ!」
「だが試合とはいえ、戦うのは事実だろう」
「ハア……」
小屋に居る全員が、深いため息をついた。
「とはいえ、このままここに居たら失格にされかねないっスから、観念して出るっスか……」
「そだな……」
全くやる気の無い5人が、渋々小屋から出た。
「さあ! 切り替えてやるっスか!」
「ああ! やるからには手加減しないぞ!」
「それはこっちのセリフだ! ゆーゆ! お前には2度も痛い目に合わされているからな。今度こそ借りを返す!」
「僕だって負けないよ! でも、戦う前にひとつ提案がある!」
「何スか?」
「そんなマネはしないと思うけど、戦闘向きじゃない姫様とトウカは、お互い攻撃しないって約束しないか?」
いくら試合とはいえ、さすがにエスタを攻撃する事は出来ないからなぁ。
「良いっスよ! 元からそのつもりだったっス!」
「俺も勿論依存は無い! この手で大切な妹を傷付けるなんて事は、死んでも出来ないからな!」
「ええ〜! でも、私達が戦いに参加するのは良いんですよねぇ?」
「それは勿論。こっちだってトウカの助けが無いと、僕ひとりで君らを相手にするのはキツいからね」
「良かったですぅ。それならば私も了解ですぅ」
「オーケー! じゃあそういう事で! いっくぞー!」
「ゆーゆの力、どれ程の物か、この身で確かめてやるっス!」
そして、エスタ達のチームとのバトルが始まった。
「僕はロッタの相手をするから、トウカはブラ……お兄さんの相手を頼める?」
「了解なのデス! ルールを逆手に取って、兄さんをボコボコにしてやるデス!」
さすがはトウカ、頭の良い娘だ。
僕の戦略をちゃんと理解してる。
まあ、わざわざそんな取り決めをしなくても、ブラウが妹を攻撃する事なんて出来ないだろうけどね。
僕の知る限り、エスタは防御魔法や反射魔法は使えるけど、こちらから仕掛けない限り反射されてダメージを受ける事も無いだろうし、攻撃魔法は(多分)使えないだろうし、剣術や体術を使ってるのも見た事が無いから、攻撃力は皆無と思って良いだろう。まずはこれで2対2の戦いに持ち込めた訳だ。
「じゃあ行くっスよ、ゆーゆ!」
「来なさい!」
「「フライ!」」
共に飛行魔法を使い、僕とロッタは空高く舞い上がった。
「ここなら姫様達を気にせず、思いっきりやれるっス!」
「同感だな」
「ファイヤーアロー、ハンドレット!」
もの凄い数の炎の矢を放つロッタ。
「アクセル!」
僕は加速魔法でかわしつつ、当たりそうな矢だけを盾で防御した。
「ならばこっちも! サンダーボルト!」
雷魔法をロッタに放ったが、ロッタはそれを避けずに魔法の杖で吸収した。
「ゲッ! 全部取られた?」
「次は電撃をご所望っスか? ならリクエストにお応えするっス! ディスチャージ!」
僕から吸収した電撃に自分の雷魔法を上乗せして放電するロッタ。
「クッ! ライトニングロッド!」
僕は地面に避雷針を立て、電撃を全て地面に逃した。
「やるっスね、ゆーゆ」
「お前もな、ロッタ」
僕がロッタと魔法戦を繰り広げていた頃、地上でもトウカとブラウの戦いが始まっていた。
制約のせいもあるだろうが、剣を抜かずに素手でトウカの相手をしているブラウ。
「いくら攻撃出来ないとはいえ、素手で私に勝とうなんて舐めすぎなのデス!」
的確にブラウに打撃を当てて行くトウカ。
「グウッ! べ、別に舐めている訳では無い。お前の格闘術がどれ程進歩したのか、久々に確かめたくなっただけだ!」
「数年前から既に格闘術では私に敵わなかったクセに、よく言うデス!」
「攻撃は出来ずとも、返す事は出来る!」
トウカの打撃を受け流し、投げの態勢に入ったブラウ。
「甘々なのデス!」
逆にトウカに返されて投げられるブラウ。
「ほら見たことか、デス」
「お、俺は剣術の方が得意なんだ!」
うん。やはりトウカが言っていた通り、素手の格闘術ならトウカの方が強いみたいだな。
ならば、僕がロッタに勝てばこの勝負貰ったようたもんだな。
そんなブラウの様子を見て、ロッタも絶望感を感じているようだ。
「しまったっスね……全く攻撃出来ないんじゃ、ブラウに勝ち目は無いっス。せめて関節技はオーケーにしとけば良かったっス」
「うん。自分で提案しといて何だけど、全く攻撃出来ないのはちょっと可哀想かなって思い始めた……」
「う〜ん……せめて、くすぐりはオーケーにしないスか?」
「いや子供のケンカかっ!」




