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第53話 ヒロインに求められるもの

「本日も順調に一勝目なのデス」

「最後、トウカをダシに使って取り引きなんて持ちかけて来たからね……罠を仕掛ける時間があったから一網打尽に出来たけど、普通に戦っていればもっと苦戦しただろうに」


 程良い時間だったので、僕達はお昼ご飯を食べる為に近くの休憩所に入った。


「ちょっと待つデス。すぐにご飯作るデス」

「僕も手伝うよ」

「大丈夫なのデス。ゆーゆはバトルでお疲れだから休んでろデス。私は何もしてないから私が作るデス」

「そ、そう? じゃあお言葉に甘えて」


 こんな時、手伝おうか? て女性に聞くのはNGだってテレビで見た事がある。

 聞く前に自主的に動いてよ! もしくは、女が家事をやる事が当たり前みたいに思ってるのがムカつくらしい。

 て事は、手伝うよってのもアウトなのか?

 言葉って難しい……


 居間でしばらく待っていると、マップに3つの光点反応が現れた。


「敵!」


 すぐにその光点のステータスを確認した僕は、思わず声を上げてしまった。


「ゲッ!」

「何デス今の声? カエルでも踏み潰したデスか?」


 僕の声に驚いたトウカが様子を見に来た時小屋のドアが開き、そして複数のカエルが鳴いた。


「ゲッ!」

「グワッ!」

「クワアッ!」

「ゲゲッ!」

「ヴィオラお姉ちゃん!」

「エっちゃんにロッちゃん! ま、また会ったデスね」


 そう……小屋に入って来たのは、エスタロッタブラウの3人なのである。


「トウカ、兄も居るんだぞ?」

「ああ兄さん、居たのデスね」

「ガアアーン!」

「ゆーゆ、やはりまだ残ってたっスね」

「お前達もな」

「ゆーゆ! ヴィオラお姉ちゃんとふたりきりなんてズルいですぅ! 私も仲間に入りますぅ!」


 うん、やっぱ呼び捨てになってるね。


「いや、ズルいったって今は一応敵チーム同士なんだからさ」

「ブウ〜! そもそもゆーゆが王様になる事を素直に了承してたら、私達が敵対する事も無かったんです〜!」


 何て理不尽な言い分!


「それを言うなら、本来王女である姫様が普通に王位を継いでれば、こんなややこしい事にはならなかったでしょ〜!」

「私はそんな堅っ苦しい役職はお断りです〜! 私は大好きな絵を描いたり歌を歌ったりして、のんびりまったり過ごしたいんです〜!」


 ワガママ!


「だからって人に押し付けるのは……」

「エっちゃん……そんなにまで王になりたく無いデスか?」

「ハイなのです!」


 口調がうつってますよエスタさん。


「そう、デスか……」


 ん? これこれトウカさんや?

 今になってエスタの味方に付く、なんて言いませんよね?


 トウカはそれ以上、王位について話す事は無かった。

 

 いや、変なフラグ立てるのやめて〜!


「まあまあお二人共、今は仲良くお昼ご飯を食べるっス」

「そ、そうデスね。ではみんなの分も作るのデス」

「ですね〜。私も手伝いますぅ」

「あたしもやるっス。危なくて姫様に包丁は持たせられないっス」

「ぶぅー! 私が料理得意なのはロッタも知ってるでしょ〜!」

「ハハ! 冗談っスよ。姫様の料理の腕は、専属コックも一目置いてるっスからね」

「エヘン!」

「それは楽しみなのデス」


 女子達が楽しそうにキッチンの方へ向かって行った。

 そして居間には僕とブラウのふたりが残っている。


 き、気まずい……


「ゆーゆよ」

「ハ、ハイ!」

「トウカは上手くやれて……いや、仲良くやっているか?」

「あ、うん。僕の事を凄く気遣ってくれるし、能力も凄くてとても助けられてるよ」

「そうか……」


 そしてまた、沈黙が流れる……


 みんな、早く帰って来て〜!


 キッチンの方からは、女子達の楽しそうな声が聞こえる。


 人見知りにとっては、沈黙の方が辛い……


 しばらく沈黙が続いた後、再びブラウが口を開く。


「ゆーゆよ」

「ハイ!」

「お前程強く、優しい奴はそうは居ない」


 え、何? 急に褒めてきて気持ち悪い。


「そ、それはどうも」

「お前が男だったなら、トウカを嫁にやっても良いかとも思ったんだが、本当のお前は女……残念だ……」


 いや、男ですけどねー!

 この兄妹には何を言っても信じてもらえないだろうから、この兄妹に対してだけは女のテイで行くのだ。


「いやいや、例え僕が男だったとしても、トウカさんは僕なんかには勿体無いぐらいの素晴らしい女性ですよ」


 妹を褒めておけば、怒る事は無いだろう。


「そうか! やはりそう思うか? そうなんだ! トウカは実に出来た娘なんだ! いやぁ、まさかトウカがヴィオラの転生した姿だった事には俺も驚いたが、諦めていたヴィオラの成長した姿を見る事が出来て、本当に嬉しく思っている。それに、もしもまた重い病にかかったとしても、姫様の治癒能力で治して頂ける事が分かったしな……」


 そっか……呪いで死んだロッタを生き返らせたぐらいだから、病気ぐらい簡単に治してしまうんだなぁ。

 異世界転生モノって、大体みんなとんでもない攻撃力や破壊力を持ってるのに、怪我や病気を簡単に治したりする凄い治癒能力ってあまり無いんだよなぁ。

 そんな中、どんな怪我でもあっという間に治し、トウカの能力の助力があったとはいえ、死者でさえ生き返らせるエスタの治癒能力って、もの凄い事なんだよなぁ。


「お待たせっスー!」


 そんな事を考えていると、女子達がキッチンから料理を持ってやって来た。


「さあみなさん、ご飯にしましょわっ!」


 そして先頭を歩いていたエスタがつまずき、コップや食器の乗ったトレーを豪快にぶちまけた。

 だが食器類は頑丈に出来ていたのか割れる事は無く、コップに入っていたお茶らしきモノで床が濡れただけだった。


「ホラね。だから姫様に料理は運ばせない方が良いって言ったんス」

「話には聞いていたデスが、目の当たりにして納得デス」


 この天然さえ無ければ、完璧超人なんだけどなぁ……残念。

 いや、ヒロインとしては、ある意味完璧か?






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