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第5話 すみっコで静かに暮らしたい

 国王との謁見はまだ続いている。

 こちとら死にたてほやほやだから、早く休ませてほしいんだけどな〜。


「では皆ご苦労であった。晩餐まで各自ゆっくりと休むがよい」


 ふう。やっとひと息つけそうだな。やれやれ。


「ロッタよ。ゆーゆ殿を部屋へ案内してやってくれ」

「あい分かったっス!」

「ではゆーゆ殿、準備をしておいてくれよ」


 ん? 準備? 何の? 晩餐の? 僕が料理作るの? まさかね。最後の方ボーッとしてて、王様の話ちゃんと聞いて無かったんだけど?


「あ、はい」


 よく分からないが、とりあえず返事してみた。

 後でロッタに聞いてみよ。


「じゃあゆーゆさん。あたしの後について来るっス」

「あ、うん」

「言っとくっスが、いくらあたしが可愛いからって、後ろから急に抱きついたりしたらダメっスよ? アハハハハ!」


 そのまま締め落としてやろうか。


「ハイ! ここがゆーゆさんの部屋っス。トイレやお風呂は全て部屋に完備されてるっス」


 超高級ホテル並の部屋に案内された僕。

 まあ超高級ホテルなんて行った事無いけど。


「じゃあ、準備が出来たら呼びに来るっス。どうぞごゆっくりっス」

「あ! ちょっと待って!」


 さっきの王様の話を聞かないと。


「何スか? 告白っスか?」

「するかっ! いやさっき王様が僕に準備しとけって言ってたけど何の事? 僕ちょっと最後の方聞きそびれてたから」

「何スか? いねむりでもしてたんスか? 夜更かしはお肌に良くないっスよ?」


 こちとら永遠の眠りにつきかけたっての。


「例の準備の事っスか? それはこっちで用意するから、ゆーゆさんは自分の準備だけしとけば良いっス」

「あ、そ〜なの?」


 自分の準備ってのがイマイチ分からないけど、まあ料理は作らなくても良さそうで安心した。


「では失礼するっス」

「あ、うん。ありがと」


 ようやく落ち着いた僕はベッドに横になった。

 

「ふう〜。さてっ!」


 普通ならここで仮眠のひとつでも取るんだろうけど、僕のやる事は当然。


「さあ! ゲームするぞ〜!」


 異世界に来てからまだひとつのソフトしか遊んで無いんだ。当然他のソフトもひと通り遊ぶっしょ。


 2本目に起動したソフトは対戦格闘ゲーム『鉄閃(てっせん)」である。

 格闘系はあまり得意では無いが、携帯ゲーム機にも関わらずヌルヌル動くデモ映像を見て購入を決めたソフトである。


「おおーすげー! このっ! クソッ! よし、ここで必殺技だ! よっしゃー!」


 苦手なジャンルながらも、あまりの面白さにずっとやり続けていると、ドアをノックする音がした。


「ゆーゆさん! こっちは準備出来たっスよ! ゆーゆさんの方はどうっスか?」


 いつの間にかかなりの時間が経っていたようだ。

 結局また一本のソフトしか遊べなかったけど、時間はいくらでもあるから良しとするか。

 後ですぐ起動出来るように、ソフトをスリープ状態にしてゲーム機を無限倉庫にしまった後ドアを開ける。


「お待たせしましたっス。じゃあ行くっス」

「うん」


 ロッタの後ろを付いて歩いていると、何故かどんどん下へ下へと階段を降りて行く。


 え〜? 晩餐会ってこんな地下でやるもんなの?


「さあ着いたっスよ! ここが会場っス!」


 ロッタが扉を開けると、割れんばかりの大歓声が湧き起こる。


「何だぁ⁉︎」


 まさか僕ってそんなに大歓迎されてるの?

 姫様を助けたから?


 だが、中に入った僕は、それが勘違いである事をすぐに理解した。

 そこは夜であるにもかかわらず、とても明るい場所だった。

 だが中には料理など無く、それどころかテーブルひとつ無い広い空間が現れた。


「え⁉︎ 何、ここ?」

「何言ってんスか? さっき王様が言ってたっスよね? 騎士団長のブラウさんと模擬戦をやるって」

「模擬戦? 誰が?」

「ゆーゆさんがっス」


「誰と?」

「騎士団長のブラウさんとっス」


「何で?」

「野党に襲われた時にゆーゆさんが、あたしに匹敵するぐらい凄い魔法を使って姫様を助けてくれたって熱弁したら、ならその腕前を見せてくれって王様に言われて、ブラウさんとの模擬戦が決まったっス」


 お、お前はああ〜。


「準備ってのは?」

「そんなレアな一戦を無観客でやるのは勿体無いって王様に進言したっス。他にも色々カードを組んで観客を入れたら入場料も取れるっスから。そしたら許可が降りたから、急遽客集めに奔走してたっス。おかげで超満員札止めでボロ儲けっス」


 またお前かああ〜!


 いや、戦いは一応さっき経験はしたから、模擬戦なら何とかなるかもしんないけど、こんな大勢の人の前に出るなんて、とてもじゃないが……。


「無理!」

「え⁉︎」


 部屋に引き返そうとする僕の服を掴み引っ張るロッタ。


「ちょ、ちょっと! どこ行くんスか? 闘技場はそっちじゃないっスよ〜!」

「模擬戦なんて聞いてない! いやそれ以前にあんな大勢に見られるなんて無理!」

「今更何言ってんスか⁉︎ 王様がちゃんとゆーゆさんに確認して、ゆーゆさんも了承したじゃないっスか〜!」

「ゴメン。あの時はボーッとしてて適当に返事した」

「そんなの無責任っスよ〜!」

「ゴメン」


「今セミファイナルの試合をやってるっスから、メインのゆーゆさんの出番はもうすぐなんスよ〜! ここまでやって来てメインイベントが中止なんて事になったら暴動が起こりかねないっスよ〜!」

「ホントゴメン」


 ロッタに服を引っ張られながらも力尽くで引きずって、どんどん闘技場から離れて行く。


「待ってくださいっス〜! せっかく頑張って客を集めたのに、これで失敗したらあたしの報酬がパァになるじゃないっスか〜!」


 本音を出しやがったなこいつ。










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