第48話 サイレント呼び捨て
ロッタとエスタにより、張り詰めた空気が和らいだ。
「まあ何にせよ、この休憩所での戦闘は禁止されてるんだから、今は仲良く行こうよ」
「そうですねぇ。私だって出来ればヴィオラお姉ちゃんやゆーゆと戦いたくは無いですからねぇ」
「あたしだってそうっスよ。ゆーゆの戦闘力の高さは重々承知してるっス。いきなりの消耗は避けたいっス」
あれ? このふたり、前から僕の事呼び捨てにしてたっけ?
「今回は敵味方に別れてしまいましたが、あれからトウカもかなり落ち込んでいましたから、今だけでもどうか仲良くしてやってください、姫様」
「に、兄さん! 恥ずかしいから余計な事は言うなデス!」
「お姉ちゃん……」
「さ、さあ! エっちゃんがお腹すかせてるデス! 私が料理を作ってあげるデス!」
「私も手伝いますぅ」
「あ、あたしは姫様を監視してるっス!」
「監視って何ですかぁ!」
何かやらかしそうなのね?
分かる分かる。
和やかな雰囲気になって来た時、新たに小屋に入って来る者が居た。
「着いたでチョコはん! ここなら……ゲッ!」
入って来たのは、チョコを背負ったミントであった。
「あちゃ〜。みなさんお揃いで〜」
「ミント……」
「い、いや〜! ゆーゆ達と鉢合うのを恐れて遠くの休憩所に行ったんやけど、既にいっぱいやってな〜。仕方なくまたこっちに戻って来たんや〜。でも気まずそうやから出直すわ〜」
いや、ミントまで呼び捨てになってない?
「待ちなさい!」
出て行こうとするミントを呼び止めるエスタ。
「姫さん?」
「チョコちゃん、怪我してるんですよね? だったらここに居なさい」
「え? せやけど……」
ミントが僕の方をチラッと見る。
これで追い出したら僕は最低野郎じゃないか。
「姫様の言う通りにした方が良いよ。この小屋の中では敵味方は無いんだから」
「そうか……おおきにな……」
降ろしたチョコにすぐさま治癒魔法をかけるエスタ。
そして完全復活したチョコ。
「ありがとう、姫様……あと、ゆーゆも……」
「気にしなくて良いよ」
「この借りは必ず返す!」
いや、その言い方は絶対復讐じゃん!
結果的にかるみる隊全員集合となり、プチ晩餐会が開かれた。
「ゆーゆ! 今日は不覚をとったけどな〜、次やったら絶対負けへんで!」
「次は勝つ!」
「ハハ、僕も頑張るよ」
てか、やっぱりミントまで呼び捨てになってるよね。
食事も終わりひと息ついた頃、もう外は薄暗くなっていた。
「すっかり日が暮れちゃったのデス」
「暗くなっちゃいましたからぁ、もう今日はみんなでお泊まり会ですねぇ」
「そっスね。今から外に出るのもイヤっスからね」
「じゃあ寝る前にみんなでお風呂に入りましょ〜」
「みんなで一緒にか……ええなぁ」
「では、俺はここで不審者が入って来ないか見張っておきますので、姫様達はお先にどうぞ」
「あ、じゃあ僕も見張りを……」
「何言ってるんですかぁ、ゆーゆ?」
エスタが僕の腕をガッと掴んだ。
「え?」
「女の子同士なんですからぁ、当然ゆーゆも一緒に入りますよ〜」
「ええっ! いや、それはさすがにマズ……」
焦っていると、僕はまだ魔法少女に変身したままだった事に気付いた。
しまったああ!
イキナリ色々あって、すっかり戻るタイミングを見失ってたああ〜!
「せやな……ゆーゆの身体がホンマに女の子になってるんか、いっぺん確かめたかったんや。グヘヘヘ」
「ん。隅から隅まで調べる」
「ちょっ!」
「姫様がそう言うなら、あたしも異存は無いっス」
異存有れよ〜!
「どうしたデスかゆーゆ? お風呂嫌いデスか?」
「いや、そういう事じゃ無くてね!」
「チョコちゃ〜ん。ゆーゆを連れて来てくださいね〜」
「ん。任せて」
「イヤアアー!」
チョコに力尽くで連れて行かれた僕は裸にひん剥かれ、その後風呂場で女子達に全身を触られまくる事になる。
「く、くすぐった! や、やめ! いやどこ触ってんだー!」
そしてその後も、女子達と同じ部屋、同じベッドで寝る事になった。
これ、いつになったら変身解けるんだ?
因みに、魔法少女の衣装は普通に着替える事が出来る事を、この時初めて知る事となる。
そして眠れない夜が明けた。
いや、変な意味じゃ無くてね!
「ゆーゆ! ゆーゆ! 朝なのデス。起きるのデス」
僕はトウカの声で目を覚ました。
ん? いつの間にか寝ちゃってたか……
「ん……おはようトウカ」
「おはようじゃないデス。もう昼前なのデス。他のみんなはとっくに出て行ったのデス」
「え、マジで?」
「こんなに遅くまで寝るなんて、相当お疲れだったのデス」
「いや、そういう訳では……」
女子達の悪ふざけで、一緒に風呂に入れられるわ同じベッドで寝かされるわで、中々寝付けなかったからねっ!




