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第36話 力があれば、何でも出来る

 ブラウと革命戦士の戦いが決着した頃、チョコ対猪の戦いも決着しようとしていた。

 チョコの周りを猛スピードで走り回る猪。


「さっきから走ってばっかり。攻撃して来ないの?」

「心配しなくても、今から行きますよ!」


 ずっと円を描きながら走っていた猪が、突如向きを変えてチョコに突進して行く。

 猛スピードのままチョコに激突し、弾き飛ばされるチョコ。


「う〜ん。さすがに速いね」

「どうですか僕のスピードは? 目で捉えるのも困難でしょう!」


 再びチョコの周りを走った後、いきなりチョコに向かって直進する猪。

 またしても弾き飛ばされたチョコだったが、今度は立ったまま堪えるのだった。


「ちょっと触ったんだけどな〜、残念」

「だから目で捉えるのさえ困難だって言ってるでしょー!」


 三度チョコの周りを走った後、チョコに突進する猪。

 やはり弾き飛ばされるチョコ。


「今のは逆に掴むのが早すぎたか〜」

「……てか君……3度も僕の突撃を受けて、何でそんな平然としてるんですか?」

「ん? ん〜、根性?」

「いやいや! 速度はそのまま威力に比例するんですから、ただの体当たりでもこれだけの速度が加われば並の衝撃じゃ無い筈ですよ! それが何で……ああそうか。君も転生者でそれが君の能力、という訳ですか」

「バレたか」

「なるほど。大方、超防御力、と言った所でしょうか? しかしいくら防御力が高くても、ノーダメージでは無い筈です! 更に速度を上げた突進なら!」


 さっきまでの円では無く、今度は三角形を描くようにチョコの周りを走る猪。


「う〜ん。やめといた方が良いよ?」

「何ですか? やはりこの速度の突進には耐える自信が無いんですか?」

「いや、そうじゃなくて……」

「これで終わりです!」


 三角形の切り返しの角度を変え、チョコに突進する猪。

 だが次の瞬間、何と弾き飛ばされたのは猪の方だった。


「グワアア!」

「だから言ったのに……大丈夫?」


 心配そうに、倒れた猪を覗き込むチョコ。


「な、何が起こったんですか? な、何で僕が倒れてるんですか?」

「さっきは飛ばされないように踏ん張ったからね。威力が全部君に返ったの」

「ふ、踏ん張ったですって? それだけの事で? さっきまで君は弾き飛ばされてたじゃないですか?」

「ん〜。あれ、ワザと」

「な、何ですって?」

「だってそうしないと君、こうなってたでしょ?」

「もしかして、僕の勢いに合わせて後ろに飛んでいたと言うんですか?」

「うん、そう。ホントは掴んで投げようとしたけど、上手くいかなかった」

「ハハ! まさか敵に気を使われていたなんてね……しかし! 僕もこのままでは終われません!」


 フラフラになりながら、立ち上がる猪。


「まだやるの? そんな身体じゃもう走れないでしょ?」

「ご、ご心配無く……僕の速度は能力によるものですから、ひとたび走り出せば息切れする事も無いし、肉体の疲労やダメージは関係無く走れるんですよ」

「ん〜。だとしても、またぶつかって来たら君、死んじゃうかもしんないよ?」

「それでも! この世界で生きて行く為には、引く訳にはいかないんです!」


 再び走り出した猪。


「う〜ん。死なせるのはヤダしな〜」


 複雑な表情のチョコに向かって、最後の突進をする猪。

 しかし猪がチョコに激突する直前、突如として姿を消すチョコ。


「な! バカな? どこへ?」


 いきなり消えたチョコに驚いた猪が走るのをやめ、辺りを見渡しチョコの姿を探す。


「ここだよ」


 いきなり猪の背後に現れたチョコ。


「んな!」


 慌てて飛び退いた猪だったが、立ち止まった時、またしても猪の背後に現れるチョコ。


「ばあ〜!」

「バカなー!」


 再び円形に走り出す猪。

 だがその猪に走りながらピッタリついて行くチョコ。


「な、何故君が僕と同じ速度で走れるんですか? ま、まさか君の能力も僕と同じ? いや、だとしたらあの防御力の説明がつかない! 君の能力はいったい?」

「チョコの能力は力だよ」

「力? それが何故僕と同じ速度で走れ……まさか?」

「そう。全身に力を入れれば無敵の防御力になるし、足に力を込めれば、速く走る事だって出来る」

「そ、そんなのズルいですよー!」

「そして!」


 猪を追い越したチョコが猪の腕を掴み、その速度のまま一本背負いをかけ壁に叩きつけた。


「グハアアッ!」

「腕に力を入れれば、どんな巨大な敵だって投げる事が出来る」


 血を吐きながら、頭からずり落ちる猪。

 哀しそうな表情で猪を見つめた後、エスタの方を見るチョコ。


「姫様……」

「ワン!」


 やっぱ犬か?


 チョコの意図を察したエスタが、既に近くまで来ていた。

 すぐさま猪に治癒魔法をかけるエスタ。

 そして目を覚ます猪。


「……どうやら、僕も助けられたみたいですね……」

「まだやる?」

「いえ、治癒魔法をかけてくれなかったら僕は死んでいたでしょうから、もう戦う意志は無いですよ……」

「そ、そんなに強くは投げて無い!」

「いやいや! 馬鹿力でバカみたいに叩きつけられましたから、全身の骨が砕けましたよ!」

「むう〜! そんな事言うなら、腕の2、3本折っとく!」

「いや冗談ですよ冗談! 勘弁してくださいー!」





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