第34話 これが一人称視点の弊害か
また違う場所では、ミント対熱中症患者の戦いが始まろうとしていた。
「なあ! あんたも何か能力持ってるんか?」
「試してみたらどうだ?」
「せやな。グダグダ言う前に動けやな。ほな行くでー!」
剣を持った人型の人形を作り、患者に攻撃を仕掛けるミント。
だが、その攻撃を全く避けようとも防御しようともしない患者。
「舐めてんのか!」
ミントの人形が患者の身体を真っ二つに切り裂いた……ように見えたが、切れたのは人形の剣の方だった。
「何やて?」
「どうした? 俺は一歩も動いてねぇぞ?」
「何や? あんたもあいつみたいに能力を無効にする能力なんか? いや、そんならウチの人形そのものが消える筈やし……あんた! 今何したんや!」
「聞いてばっかりじゃねーか。ちょっとは自分で考えたらどうだ?」
「ウ、ウチは頭で考えるんは苦手なんや! 考えるんはロッタの担当や!」
「丸投げかよ」
その考える担当のロッタは、エセ外国人風の台風と戦っていた。
「ウインドカッター!」
いきなり攻撃を仕掛けるロッタ。
いやどこが考える担当だよ。
「ウインドカッター!」
同じ風魔法で相殺する台風。
「やるっスね! ならこれはどうっスか? ファイヤーボール!」
「ウインドウォール!」
ロッタの火球を風の防御幕で防ぐ台風。
「こんどはミーのばんね! ウインドソード!」
一点に凝縮させた風の剣を飛ばす台風。
「グランドウォール!」
岩の壁でそれを防御するロッタ。
「中々の威力っスね! でもあたしも負けてないっスよ! アイスランス!」
同じように、冷気を一点に凝縮させ固めた氷の槍を放つロッタ。
「なんの! エアロスライサー!」
風の刃で氷を削り尽くす台風。
「またおかえしね! ウインドプレッシャー!」
今度は一点では無く、巨大な空気の壁をぶつけようとする台風。
「ストレングス!」
肉体強化魔法をかけ、その場で空気の壁を耐え切るロッタ。
だがその後反撃をせず、何か考え込むロッタ。
「ん? どうしたのですかー? こんどはあなたのばんですよー?」
「あんた……確かに風魔法は中々大したもんっス。でもさっきから風魔法しか使って来ないっスが……まさかあんた、風魔法しか使えないんスか?」
まさかのロッタの発言に、急に態度がおかしくなる台風。
「ええ〜? なんですか〜? わたし、にほんごわかりませ〜ん」
「誤魔化し方が雑っス! あと、にほんって何スか?」
さすが異世界!
そしてこの僕は、反社の人間に絡まれている。
「さっきからチラチラよそ見して、随分余裕だな?」
だって一人称視点だから、僕が見た事しか伝えられないじゃないか!
「まあこっちにも事情があってね」
「何だそりゃ」
さて、異能力バトルの基本はまず相手の能力を把握するところからだけど、まあ名前からして大体想像はつくけど、一応試してみるか……
「じゃあ行っくよー!」
「どこからでもかかって来な!」
とその前に……
僕は今後出番が無くなるであろう無限倉庫からゲーム機を取り出し、FEのソフトをRPGのFFに差し替えた。
「あ、あんた……戦いの最中にゲーム機なんか出して何やってんだ? しかもそれ、最近発売されたばかりの最新機種じゃないか!」
「え? ああゴメンゴメン。一応戦いの段取りだから気にしないで」
「あ、ああ……」
そりゃあバトル中に相手がいきなりゲーム機出したら戸惑うよね。
でもこれが新型機だと分かるって事は、あいつもゲーマーか?
魔法戦士となったゲームキャラの影響で、剣、盾、鎧が僕に装備された。
「な? いきなり装備が現れた? 何だその能力は?」
勝手に色々考えて、パニックになれなれ〜!
「ハイお待たせ〜! じゃあ改めて行っくよー!」
「お、おう!」
「ファイヤー!」
まずは小手調べに、遠距離魔法を撃ってみた。
さあ、どうだ?
反社が左手をかざすと、火球はまるで手に吸収されるように消滅した。
消えた? 剣で受けずに素手で……まさかこいつの能力も異能力を消す能力なのか?
いや、今のは消したと言うより吸い込んだような感じだった。
てっきり名前通り反射して来るのかと思ったけど……なら、直接攻撃ならどうだ?
僕は反撃を警戒しつつ距離を詰め、反社に斬りかかった。
僕の剣を、右手の剣で受け止める反社。
ん? 何だ?
何か手応えが軽い気が?
「敵の間合いの中で考え事か?」
反社がかざした左手から火球が飛び出して来た。
「危っ!」
僕はその火球をギリギリでかわし、そのまま回し蹴りを放った。
「グフッ!」
不意をついた形となり、僕の蹴りは反社の横腹にクリーンヒットした。
また手応えが軽い?
「やるじゃねーか! だが効かないねー! そら、お返しだ!」
逆に反社の蹴りをモロに腹に喰らってしまった。
「ウグッ!」
お、重い!
こんな軽そうな体格で何て重い蹴りを……あ!
「あんたの能力……その場で反射するんじゃなくて、相手の攻撃の威力を取り込んで、自分の攻撃に上乗せする、みたいな感じじゃないか?」
「グ……ワタシニホンゴワカリマセーン」
「図星じゃねーか!」
あとお前は完全に日本人だろ!




