第30話 トイレは行ける時に行くのが基本
「ほな、出発するでー!」
外の様子は分からないが、動き出した土龍君がどうやら地面に穴を掘りながら地中に潜って行ってるみたいだ。
「外が見えないのに、どうやって操作してるの?」
僕は素朴な質問をした。
「あ〜。ウチが作った人形は、ウチと五感を共有出来るねん。まあ土ん中潜る感触はあまり気持ち良いもんや無いから、今は視覚だけ共有してるんやけど、あくまで大体の方角しか分からへんから、正確な位置はゆーゆはんのマップ頼りやから頼むで〜」
「う、うん。分かった」
今僕がセットしているソフトは、マップ&戦闘用にFE、侵入用にマイクラ、そして色々汎用性の有る魔法少女である。
決してかるみる女子達の需要が高いせいでは無い!
移動を始めて少し経った頃、エスタが何やら巨大な鞄を引っ張り出して来た。
「さあ、先は長いですからオヤツタイムにしましょお〜」
鞄の中には大量のお菓子が入っていた。
「姫様、本当にオヤツ持って来たんスか?」
「ウチこれも〜らい!」
「チョコはおせんべいが良い」
そこはチョコじゃないのか。
「飲み物もありますからね〜」
救出作戦を前に宴会が始まってしまった。
しかしまあ、戦いを前に肩の力が抜けて良いかもしれない。
「ほら、ゆーゆさんもブラウも食べてくださいね〜」
「あ、ハイ。頂きます」
僕はゲームが好きだが、実は甘い物にも目が無いのだ。
ハイそこ! やっぱ女子じゃんとか言わない!
「ブラウもどうぞぉ」
「俺は……いや、頂きます」
まだ気まずいのか、みんなから離れた場所に座っていたブラウが、申し訳無さそうにお菓子を食べている。
遠足気分でお菓子を食べていると、マップの端に城らしきものが表示された。
「あ、もしかして、これがボレアス城かな?」
「お、ほなちょっと覗いてみるな」
おそらくは土龍君が地面から顔を出しているのだろう。
少し固まったミントがオーケーサインを出す。
「うん。あれやな。ほなこっからはゆっくり進むから、妹はん見つけたら教えてや〜」
「うん」
「ではみなさん、突入準備を整えるっス!」
「ドンと来い」
「いつでも良いぞ」
緊張が走る中、エスタが気の抜ける発言をする。
「あの〜。緊張したらお手洗いに行きたくなって来たんですけどぉ」
「ええー? トイレなんて付いてへんよ! お家帰るまで我慢しー!」
「ええ〜! 漏らしちゃいますよぉ!」
「姫様、ジュースいっぱい飲むからっスよ〜!」
「だってお菓子にジュースは付き物でしょ〜」
作戦前だってのに、この緊張感の無さ!
「あ、もうダメかも〜。10、9、8、7……」
「うわあ! ちょ、ちょっと待ちー! 形だけでも作ったるから!」
ミントが部屋の壁に手をかざすと、ドアらしき物が現れる。
「ほら出来たで! 早よ行ってきー!」
「ありがとうございます〜」
慌ててドアに入って行ったエスタが、しばらくして満足そうな顔で出て来る。
「ふう、ギリギリでしたぁ」
いや、何でそんなギリギリになるまで粘るのよ。
「ホラ! 他の人らも今の内に全員行っときー!」
「そうだな。行ける時に行っておこう」
「チョコは大丈夫」
「ダメっス! 後になって行きくなっても行けないんスから行っとくっス!」
「ええ〜! チョコ、1日行かなくても平気だもん」
膀胱まで頑丈なのか?
僕も後で行っとこ。
何だかんだ全員トイレを済ませた所で、いよいよ城の真下に到着した土龍君。
「ちょい右……」
「こんなもんか?」
「オッケー。そのままゆっくり進んで」
「あいよ」
マップに無数にある赤い光点の中で、唯一有る青い光点を目指して微調整をする僕とミント。
「ハイ! ここ!」
「オッケー! ほなゆっくり上がって行くで〜」
「でもこんな大きな魔獣が地面の下移動してて、敵に気付かれないっスか?」
「そら、多少の振動は感じるかもしれんけど、軽い地震かな? ぐらいにしか思えへんよ」
「相手もまさか、地面の下から来るとは思わないだろう」
「確かにそっスね。相手がゆーゆさんみたいな能力持ってないと良いっスね〜」
不吉な事言うなぁ。
「まあ、バレたらバレたでぶっ飛ばせばええやん。お、床の石が見えたで〜。ゆーゆはん」
「了解」
僕は土龍君の口から出て、真上にある石の床に手をかざした。
「よし、準備完了。でも牢の近くに敵兵がひとり居るから、妹さんごと床を抜くよ?」
「了解した。トウカは俺が受け止める」
「でも、いきなり床が抜けたら妹さん、絶対ビックリして声出すっスよね」
「じゃあ私がすぐに睡眠魔法を穴から撃ち込みますねぇ」
「え? 大丈夫っスか姫様? 撃ち込む寸前に転んでウチらに誤爆して全滅とか勘弁っスよ?」
「ぶぅー! 移動しなかったら大丈夫ですよ〜!」
確かに、何かやらかしそうで凄く不安……




