第28話 これってBL?
騎士の姿をした男と、魔法少女の姿をした女が並んで座っている、何とも異様な光景である。
「姫様が好きって……ふたりは付き合ってるって事?」
「いや、完全に俺の片想いだ」
紛らわしい!
「はあ……で、それと僕に何の関係があると?」
まあエスタに惚れるのは分かるよ?
見た目も可愛いし、あの癒しボイスに天然キャラ、正直僕だって良いな〜って思ってる。
でもまさか、エスタが僕を好きって事は無いだろうし……
「初めて姫様と会った時、俺は一目惚れした。それから、姫様の親衛隊になるべく俺は必死に修行して武功を立て、騎士団の団長にまで登り詰めた」
男が頑張る理由って、女絡みの事が多いからねぇ。
「そして、妹が誘拐され脅された俺は、せめて姫様だけは助けたいと思い、姫様が視察に行った時を狙いゴロツキを雇って姫様を連れ去ろうとした」
僕がこの世界に来た時か……
「だがそれはゆーゆ、お前達に阻止されてしまった」
ん? だから初対面の時、僕に対して敵意剥き出しだったのか?
「夜中に手引きし誘拐しようとした事もあったが、それもお前達に阻止された」
あれもあんたの差し金かい!
どおりであっさり敵の侵入を許したと思ったよ。
てか、やってる事ボレアスと一緒じゃん。
「仕方なく次の機会を伺っていたら、何と俺がずっとなりたかった姫様の親衛隊に、いきなりやって来た何処の馬の骨とも分からないお前が任命された」
まあそれは王様の能力による物だったから、確信があった訳だけども。
「その事に絶望した俺は、遂に裏切る事を決意した。俺が行動を起こせば、ボレアス軍が侵攻する手筈になっていたから、その前に姫様を保護しようとしたが、またしてもお前達に阻止されてしまった」
ダンジョンから帰る時ね。
「だが、姫様が不在の内に動けば姫様に危険が及ぶ事は無いと思い、俺は陛下を暗殺した」
人形だったけどね。
「陛下がミストの作った人形である事は、長年お側に居た俺はすぐに気付いた。しかし、共にいた監視役のボレアス兵を騙すには好都合と思い、俺は人形の陛下を殺した。上手く監視役を騙せた事により、ボレアス軍は侵攻を開始した」
既にボレアス兵が侵入してたのか……
「しかしそれすら、予想以上に早く戻って来たお前達に、またしても阻止されてしまった」
王様がよこしてくれたチョコの加入が大きかったよね〜。
「いや、それはむしろ内心助かったと思った。いくら妹の為とは言え、俺だって生まれ育った故郷を滅ぼすのは心苦しかったからな」
だったらもっと他の方法考えようね〜。
「だが、だからと言って俺のやった事が許される筈も無いと思った俺はお前に一騎討ちを申し込み……」
「僕に殺されようとしたと……?」
「ああ……だがお前と陛下の温情により、俺は生かされている。妹さえ救い出せたなら、俺はどうなっても良い! その場で処刑されても良い!」
いや、そんな事したら今度は妹さんに恨まれちゃうよ。
「だから頼む! どうか妹を! トウカを救い出して欲しい!」
「あ〜うん。それは勿論全力を尽くすけど……結局あんたが裏切ろうとしたもうひとつの理由って、僕があんたを差し置いて姫様の親衛隊になったから、で合ってる?」
「あ、ああそうだな……」
長々と話聞かされて、理解するのが大変だったよ。
「あの時は俺以外の男が姫様の親衛隊に任命され嫉妬していたが、お前が女だと分かった今、もうお前に対して何のわだかまりも無い」
「うえぇ!」
そういう事かー!
これ、僕が男だと証明したら、またややこしい事になるんじゃ?
「うにゅ〜ぅああ〜ぃええ〜〜んうう〜〜」
僕は何とも言えない複雑なうなり声をあげるしか無かった。
「ど、どうしたゆーゆ?」
「んにゃあんでもありましぇ〜ん」
これ今後、僕はこの人の前ではずっと女として行くしか無いのか?
まあ、かるみる隊の連中はわざわざ言わなくても、絶対面白がって話を合わせて来るだろうけど。
似たようなシチュエーションがある、ら◯ま1/2とか言う漫画が昔あったのをふと思い出した。
「それに、結果的に人形だったとはいえ、実の父親を殺そうとした俺に、もう姫様を愛する資格は無い。だから姫様への想いはもう断ち切った! だが今日俺は、戦場で天使を見た!」
え? それってまさか?
「それがお前だ! ゆーゆ!」
やっぱりかー!
「女である事を隠し、男として振る舞うお前は確かに勇ましかった。しかし今日、女の姿に戻り戦場で戦うお前は、力強さの中にも美しさが有り、まるで天女が舞っているようだった!」
やっぱり節穴さん!
「俺はそんなお前に心底惚れた!」
「うにゃー?」
「妹を救い出せたら、3人で一緒に暮らそう! お前の事は必ず俺が守ってやる! だからもう男の振りをする必要は……」
グッと迫って来るブラウ。
「ちょ、ちょおっと待てー!」
そんな大ピンチの時、複数の話し声と部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「ゆーゆさん! 居るっスか〜?」
「夜這いに来たで〜!」
「違いますよ〜! 女子会です〜!」
「早く開けないとドアをブチ破る」
「姫様?」
いや何物騒な事言ってんだ?
「ちょっと待って! 今開けるから!」
「ま、待ってくれ! 今、姫様とは顔を合わせ辛い!」
立ちあがろうとした僕の服をブラウが掴んだ。
「うあっ! ち、ちょっと!」
豪快に倒れた音に驚き、部屋に入って来るかるみる隊。
「なんスか今の音は? ゆーゆさん、大丈夫っスか?」
「あ……」
みなさんのご想像通り、ブラウに押し倒されたような格好の僕を見て、瞬時に全てを理解し、ニヤリと笑うかるみる隊の4人。
「お取り込み中、失礼したっス〜」
ゆっくりとドアを閉めるロッタ。
「いや違うからねー!」




