第20話 チョコミントは好き? 嫌い?
辺りを警戒しながらゆっくり街に入ると、崩れた壁の近くにあった多くの家屋が破壊されていた。
「こ、これは酷いっス……」
「あ! 止めてください!」
「どうしたっスか? 姫様」
「怪我をした人が沢山居ます! 治療しないと!」
まだゆっくり動いている馬車から飛び降りようとするエスタを、ロッタが制止する。
「ま、待つっス姫様! 国民も大事っスが、まずは国王の安否を確認するのが先っス!」
「でも!」
「ほら! 既に騎士団の医療班が到着してるっス! ここは彼らに任せるっス!」
「うう〜」
納得いかない表情ではあったが、何とか降りるのを踏み止まったエスタ。
こういう時のロッタの判断って、結構適切なんだよな〜。
馬車から身を乗り出したエスタを見つけた人達が、皆一様に安堵の表情を浮かべる。
「ああ、姫様! ご無事で良かった!」
「み、みなさんは大丈夫ですか⁉︎」
「いきなりで驚いたけど、みんなすぐに避難したから死者は出ていませんよー!」
「はあ、良かった!」
「アイツら、ワシらに目もくれずに城に向かったから、早く陛下を助けに行ってください!」
「うう、分かりました! チャチャっと瞬殺したらすぐ戻ってみなさんの治療をしますから、少しだけ待っていてくださいね〜!」
「どうかお気を付けてー!」
姫様、瞬殺とか言うのね。
城へ向かう道中、例の雑貨屋が無事な事を確認して安心した。
城に到着した僕達は急ぎ玉座の間を目指した。
しかし道中敵兵の姿は全く無く、僕達は簡単に玉座まで辿り着いた。
だがそこで見たものは、鮮血に染まった国王の姿であった。
「父上!」
「陛下!」
すぐさま国王の元へ駆け寄り、治癒魔法をかけるエスタ。
「ひ、姫様……ご、ご無事でしたか……」
床に倒れていた兵士がエスタの姿を見つけ、傷だらけの身体を起こす。
「いったい何があったんスか⁉︎」
兵士に治癒魔法をかけながら、事情を聞くロッタ。
「ひ、姫様達が城を発って一刻程経った頃、突如として街の壁が巨大魔獣に破壊されて……城に残った殆どの兵士が迎撃に向かった直後にブラウ団長がやって来て……い、いきなり陛下を斬りつけて……うう……な、何で団長が陛下を……クッ」
「それで、団長はどこに行ったっスか?」
「す、少しの間陛下の亡骸を見つめた後、外に出て行ったっきり行方が分かっていません」
「そっスか……これはもう、ブラウ団長の裏切りは疑いようが無いっスねー」
「全く……ワシも信じたくは無かったがのぅ。残念じゃ」
そう言いながら現れたのは、血まみれで倒れていた筈の国王陛下だった。
「父上? え? でもこっちは?」
「へ、陛下! ご無事だったんですね? いやでも、確かに団長に斬りつけられた所をこの目で……」
「あ〜、アンタが見たんはウチが作った人形や」
国王の後ろから、関西弁で喋る僕と同年代ぐらいの少女が現れた。
僕は前もって国王より大体の流れは聞いていたから大して驚きはしなかったが、殆ど事情を聞かされていないエスタとロッタは軽くパニックになっていた。
「人形? じ、じゃあ今まで見ていた陛下はみんなお人形さんだったんスか?」
「父上がお人形? じゃあお人形さんの娘の私は、ぬいぐるみ?」
「いや、落ち着かんかバカども!」
エスタ達が平静を取り戻した所で、国王より詳しい話を聞かされた。
「父上が、ゆーゆさんと同じ転生者?」
「転生者はみんなとんでも能力を持ってるっスか?」
「うむ……まあ、皆が皆戦闘向きな能力と言う訳では無いが、ワシが見て来た限りではこの世界の常識では計れない能力なのは間違い無い。のう、チョコにミントよ」
「ん」
「いわゆるチート能力ってやっちゃな!」
ピースサインをするチョコ。
「え⁉︎ 父上、チョコたんのお知り合い?」
「うむ……チョコとミントはワシの親衛隊じゃからな」
「ブー! 初耳ですよぉ!」
「今初めて言ったからのう」
「え? じゃあダンジョンでチョコさんが助けてくれたのは偶然じゃ無くて、陛下が……」
「うむ……陰ながらエスタ達を助けてやってくれと頼んでいたんじゃ」
それは僕も聞いてないぞ。
「ん。でも姫様達、トラップ発動しまくりで、ついて行くのに苦労した」
「そ、それはご迷惑をおかけしましたぁ」
「で、そちらの方がミントさんっスか?」
「せやで。ミント・プリマヴェーラや、歳は17。よろしゅうな」
チョコにミント……チョコミントか……
「あんた! 今ウチらの事チョコミントて思たやろ!」
「ゔぇ! い、いや別に……」
「まあええわ。偶然とはいえその呼び方、漫才コンビみたいで実は気に入ってんねん」
「漫才コンビ違う」
しかしこのミントって娘……喋り方が関西のおばちゃんみたいだなぁ。
「あんた! 今ウチの事、関西のおばちゃんみたいて思たやろ!」
「ぐっ! 何で分か……いや……」
何だぁ? 彼女の能力ってさっきみたいに精巧な人形を作る事じゃないのか? まさかまた女神様のサービスで、相手の心を読む能力もあるとか?
「言うとくけど、別にアンタの心を読んでる訳ちゃうで?」
いや、読んでんじゃん!
「これはまあ、言うてみれば芸人のツッコミみたいなもんや」
芸人なのか?
「誰が芸人やねん!」
読んでるじゃん!




