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第2話 いきなり大ピンチ

 次に目覚めた時、僕は深い森の中に居た。


「ここが、異世界?」


 辺りを見渡すと、少し先に街らしき物が見えた。


「街の近く……か? もう、どうせなら街の中に出してよね。あ、そだ!」


 ボヤきながらも、僕は何よりもまず携帯ゲーム機の事が気になっていた。

 しかしずっと握り締めていたゲーム機は、その手には無かった。


「あれ⁉︎ 無い! 無い⁉︎ どこだ⁉︎ 僕のゲーム機⁉︎」


 慌てて全身や周りを探しながら、僕は女神の言葉を思い出した。

 

「そう言えば、無限倉庫とかなんとか言ってたような? でもどうやったらいいんだ? やり方聞いて無いよ⁉︎」


 やり方は分からなかったが、僕は目をつぶり何となくイメージして何も無い空間に手を伸ばした。


「何かある⁉︎」


 何かが手に触れた感触があったので、僕はそれを掴み手を引くと、それは紛れもなく僕の愛しのゲーム機だった。


「やった〜! なるほど。これが無限倉庫って奴か? うん、確かに便利だ」


 ボロボロに壊れていた筈のゲーム機は、見た目は元通り綺麗に直っていた。


「良かったぁ‼︎ ちゃんと直ってる‼︎」


 森の中なのも御構い無しに、僕はニンテンドー3DS風に折り畳まれたゲーム機を開き電源を入れると、コンセントに刺さっていなければ全く充電もしていないのにちゃんと起動した。


「良し、動く! ありがとう女神様!」


 僕はゲーム機を挟みながら手を合わせた。


「じゃあソフトソフト!」


 先程と同じ様にイメージしつつ、どんな風になってるのか気になったので、今度は目を開けたまま空間に手を伸ばした。

 すると伸ばした腕は、途中から空間に溶けるように消えた。

 何とも不気味な光景である。


 そしてひとつのソフトを掴んだ僕は、そのソフトをゲーム機にセットした。

 過去に様々なゲーム機でヒット作を出したソフトメーカーが、今回この新型携帯ゲーム機用に発売した大作RPG、[ファンタジーファンタジー]である。


「せっかくファンタジー世界に来たんだから、これでしょ!」


 このゲームは、プレイヤーが様々なジョブをチェンジしながらファンタジー世界を冒険する、王道RPGである。


「初めは剣士で行きたい所だけど、魔法使いになり損ねたから魔法使いで行ってみよー」


 ソフトを起動した僕は、最初の職業を魔法使いにしてプレイを始めた。

 どれぐらい時間が経ったのか?

 いつのまにか、辺りが薄暗くなって来ている事に気が付いた。


「ヤバッ! 暗くなって来た!」


 楽し過ぎてついやめ時を見失ってしまった。


「そういえばこの世界ってモンスターが出るって言ってたよな⁉︎ は、早く街に行かないと!」


 ゲームをやり始めると周りが見えなくなる悪いクセは、死んでも治らなかったようである。

 僕はソフトをスリープ状態にしたまま、ゲーム機を無限倉庫にしまい街に向かって走り出した。


「あっ‼︎」


 ある事に気付き、僕は足を止めた。


「そういえば僕、この世界のお金持ってないぞ⁉︎ 街に辿り着いても宿に泊まる事もできないんじゃ?」


 少し考えた後、僕は再び街に向かって走り出した。


「仕方ない。ファンタジー世界なら、何かクエスト的な物があるだろ。お金はそれで稼ぐとして……まあ、今夜一晩ぐらいは公園かどこかで凌ぐか……」


 そんな事を考えながら街へ急いでいると、誰かを励ますような少女の声が聞こえてきた。


「しっかりするっス! 傷は深いっス! でも必ず助けるっス!」


 重い言葉の割にどこか緊張感の無い声のする方に近付いて行くと、メイドのような服を着た10代前半ぐらいの可愛い少女が、道に倒れている騎士のような鎧を着た人達に手をかざしていた。

 そのかざした手の平は光を放っており、倒れた騎士の傷がみるみる治って行った。


「凄い! もしかして魔法⁉︎」

「誰っスか‼︎」


 少女の魔法に見とれて思わず声を発してしまった。


「あ、いや! 僕は怪しい者じゃないです!」

「怪しい奴程そう言うっス! こんな時間に森の中をひとりでうろちょろして、更にその見慣れない服装。怪しさ爆発っス!」

 

「そう言われると返す言葉も無いんだけど」

「ハッ! もしかしてさっきの奴等の仲間っスか⁉︎」

「へ⁉︎ さっきの奴等って? いや、違う違う‼︎ 僕はついさっきこの世界に……」


 そう言いかけた時、背後から野太い男達の声がした。


「何だぁ⁉︎ みんなやられてんじゃねぇか! なっさけねぇなぁ!」

「だが残ってるのはその小娘だけみたいだぜ?」

「ああ、さっさと誘拐して帰ろうぜ!」


 山賊なのか野盗なのか、数人の男達がゾロゾロと出て来た。


「やはりあんたが仲間を連れて来たっスね⁉︎ でも何人来ようと負けないっスよー!」


 さっきのメイド少女が僕の方を見ながら叫んでいる。


 いや待って待って! そんな言い方したら、僕がそいつらの仲間みたいじゃないかー!


「あぁ⁉︎ 何だテメェは?」


 ほら見つかった……最悪……


 そんな様子を見てキョトンとした顔をしている少女。


「あ、あんたはそいつらの仲間じゃ無かったんスね? ゴメンス! ここは危ないからすぐ逃げるっス!」

「いや間に合うかー‼︎」











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