第19話 急にシリアスな展開に
武器を構えた大勢の男達が、チョコを取り囲むように回り込む。
「よう嬢ちゃん! 痛い目に遭いたく無かったら大人しくしてな!」
「痛い目? こんな感じ?」
いきなり横にいた男を殴りつけるチョコ。
「グハァ!」
殴られた男は一瞬で吹っ飛び、林の中の木に激突して気絶した。
いやいや、あれ死んだんじゃないか?
「あ、ゴメン。ちょっと強くやり過ぎた」
「こ、このガキ! やりやがったな!」
数人の男達が一気に襲いかかるが、剣を素手でいとも簡単に弾き、デコピンで次々に男達を弾き飛ばして行くチョコ。
「な、何なんだこいつ? こんな奴が居るなんて聞いて無ぇぞ!」
あ、また意味深な事言った。
「い、一斉にかかれー!」
残った男達がまとめてチョコに襲いかかるが、まるで虫をはらうかのように無表情で全員を倒してしまったチョコ。
「どうやら終わったみたいっスね?」
「ホント、とんでもないパワーだな」
「さて……誰の差し金か聞き出すっス!」
生きてる奴が居るといいね。
「チョコたんお疲れ様です〜」
「ん。楽勝」
ピースサインをするチョコ。
ロッタがひとりの男の胸ぐらを掴み、尋問を始めた。
「こんな丁度のタイミングで襲って来るなんて不自然過ぎるっス! いったい誰に依頼されたんスか?」
「ケッ! だ、誰が教えるかよ!」
「そっスか……チョコさん!」
「ん。もう一発行っとく?」
デコピンの構えのままゆっくりと男に近付いて行くチョコ。
「やや、やめてくれー! そいつをもう一度食らったら頭蓋骨が砕けちまう! 言う! 言うから!」
「じゃあさっさと吐くっス!」
「あ、あんたんとこの騎士団長のブラウだ!」
「⁉︎」
「エスタ王女が試練のダンジョンに向かうから、出て来た所を襲撃してエスタ王女をさらうように言われたんだ!」
男の口から衝撃の名前が発せられたが、エスタを始め、誰も大きく動揺する事は無かった。
「まさかっスね……にわかには信じられなかったっスが、どうやら本当みたいっスね……」
「ブラウ……」
そうなのである……ブラウに反乱の可能性がある事は、このダンジョン攻略前に既に国王より聞かされていたのである。
その事を、城を出発してから馬車の中で、僕の口からふたりに説明をしていたのだ。
実は国王も転生者で、生前も、とある国の国王をやっていたが、臣下の反乱にあい命を落としたらしい。
そして女神様より、人の善悪や能力を見抜く力を授けられた事により優秀な人材を集め、一代にしてこの国を築き上げ王になったらしいのだ。
だからどこの馬の骨とも分からない僕をあっさり信用して、エスタの親衛隊に任命したそうだ。
そんな国王が言うには、ある次期からブラウのオーラが闇に染まり始めたらしい。
なんでも、自分に友好的な者のオーラは白く光輝いているが、敵意がある者程黒く淀んで行くらしい。
その説明を聞いた僕は国王の頼みによりFEのマップ機能を使い、ブラウの光点が敵である赤色になっている事を確認した、という訳だ。
このタイミングでエスタに試練を受けさせたのも、ブラウが動くように仕向けて炙り出す目的もあった。
「国王様は当然騎士団長の反乱を察知していた訳だから、何らかの対策はしてる筈っスが、なるべく急いで城に帰るっス!」
「うん、そうだな」
僕達は馬車に乗り込み、急ぎ城へ向かった。
普段はほんわか笑顔を絶やさないエスタもさすがにショックだったのか、馬車に乗り込んでからうつむいたまま、ひと言も喋らなかった。
「ウプッ。吐きそう……」
「ギャー! 馬車の中で吐くのは勘弁っス!」
酔ってただけかいっ!
いや、エスタなりに少しでも場の空気を和ませようとしてるんだろうなぁ。
「ほら姫様、横になるっス」
膝枕をしようとしているのか、自分の太ももをポンと叩くロッタ。
「ん〜。チョコたんのお膝が良いな〜」
「ん。ドンと来い」
嬉しそうにニヤけながら、チョコに膝枕をしてもらうエスタ。
今度はその光景を見たロッタが落ち込んでいた。
「あ、あたしよりチョコさんの膝に……」
あ〜。意外とみんな余裕あるみたいだね。
「うあっ!」
まもなく街を囲んでいる壁が見えようかという所まで帰って来た時、いきなり馬車を引く御者が驚きの声をあげた。
「どうしたっスか? あっ!」
外を覗いたロッタが同じように声をあげた。
その声に目を覚ましたエスタを含め僕達も外を見ると、何と街を囲む壁の一部が大きく崩れ、巨大な穴が空いていた。
「これは……超破壊魔法? いや、魔力の残滓は感じられないから、もしかして巨大魔獣っスか? まだ敵が残ってるかもしれないっス! みんな警戒するっス!」
ハア……何だかシリアスな展開が待ってそうでヤダな〜。




