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第12話 お金に困らない生活がしたい

 エスタの買い物が終わり、次は僕の目的地へ向かう事になった。

 その雑貨屋に着いた時、店の看板を見た僕は驚いた。


《宮本商店》


 え⁉︎ 宮本?

 やけに日本風な名前だけど……


「ん? どうしたんスかゆーゆさん、ずっと空を見上げて? 鼻血でも出たんスか?」

「出てねーわ! この、宮本って名前、この辺ではよくある名前なのか?」

「え? いや、言われてみれば珍しい名前っスね。この店以外では聞いた事無いっス」


 そういえば女神様が、この世界は現世で未練を残して死んだ人が来るとか言ってたな……という事はまさか。


 店内に入った僕は、それを確信した。

 店には明らかに僕が居た世界にあった、小物や電化製品等が所狭しと陳列されていた。


「いらっしゃいませ〜!」


 店主らしき人の元気な声が響き渡る。

 色々気になる物はあったが、僕は何よりゲーム関係の物を探した。


「あ、あった……」


 そこには僕の持つ最新のゲーム機は勿論、ひと昔前のレトロなゲーム機まで揃っていた。


「す、凄い……これ程のラインナップ、向こうの店でも中々見かける事無いよ……」


 気がつくと、涙が僕の頬を伝っていた。


「あれ〜! ゆーゆさん何泣いてんスか? 高くて買えないんスか? 確かにこの店は他には無い珍しい物が置いてあるっスが、庶民には中々簡単には手が出せないお値段なんスよね〜!」


 僕の感傷を返せこの野郎!


「ちょっとちょっとロッタちゃん! 人聞きの悪い事言わないでよー! ウチの商品は仕入れるのに苦労してるんだから、当然の値段設定だよー」

「ハハ、ゴメンス。分かってるっスよ!」


 ソフトに付いている値札を確認してみると、大体銀貨7枚から9枚となっている。


 あれ? 確か銀貨10枚で金貨1枚と同等だから、金貨1枚が千円ぐらいとして銀貨7枚なら700円ぐらいって事か?

 え⁉︎ 安過ぎない? まさか中古ソフト?

 でもこれって僕の持ってる最新型ゲーム機用のソフトだし、まだ発売されて1週間程度でこんなに値下がりするの変じゃない?

 まさか向こうの世界とこっちの世界では時間軸が違う、なんてオチじゃ無いよなぁ?

 いや、そういえばこのソフト、いったいどうやって仕入れてるんだ?

 ラノベとかなら、向こうでの知識を元にこっちで再現してボロ儲け、なんてのが定番だけど、さすがにゲーム機やソフトを知識だけで再現するのは無理だろうし……


 それらを確かめるべく、僕は店主の側で小声で話してみた。


「ピンク髪のロリ女神……」

「え⁉︎ あ、あんた……もしかして?」

「長久悠遊……日本人です」

「そうかー、あんたもかー! 俺は宮本利幸、あんたと同じ日本人の転生者だ」

「やっぱり」


 まさかこんな所で僕と同じ境遇の人に出会うなんて、感動だなぁ。


 僕はこの世界に来た経緯を店主に話した。


「そっか〜。そりゃあ買ったばかりのゲーム機を一度も遊べずに死んだら未練残るよな〜」


 分かってくれて嬉しい。


「俺も向こうで、頑張って貯めた金で雑貨屋を開いたんだが、一週間も絶たずに大地震にあって店ごとな……」

「そうだったんですか……だからこっちでも雑貨屋を?」

「ああ、俺は女神様に一時的に現世に戻れる能力を貰ってな」

「え? 現世に?」

「ああ、だけどあくまで一時的だから、せいぜい向こうで商品を仕入れるぐらいしか出来ねぇんだ。だけどこうしてこっちで雑貨屋を開く事が出来て、俺は満足してるぜ」


 願いが叶ったら成仏、みたいな事にはならないようで良かった。

 そうだ! 値段設定の事を聞いてみよう。


「いやいや、こっちの世界と向こうの世界に時間のズレは無いから、正真正銘発売されたばかりの新品だぜ? まあもっとも、向こうで発売されてから直接購入してこっちに持って来てるから、どうしても何日かは遅れちまうがな」


 時間のズレは無い? 新品? 

じゃあ何であんなに安いんだ?


「700円? バカ言っちゃいけないよ。多少手間代は加算してるとはいえ物価は殆ど変わらないから、ゲームソフト1本あたり7、8千円ぐらいに設定してるぜ?」

「え? じ、じゃあ銀貨1枚って千円ぐらいって事?」

「まあそんなもんだな」


 それはつまり、金貨1枚が1万円相当って事で、僕はそれを100枚貰ったから……100万円……

 僕はロッタのセリフを思い出した。


『金貨1枚の価値っスか? 安物のステーキが食べられるぐらいっス!』


 セレブの金銭感覚!


 いや、ともあれ、これは嬉しい誤算である。

 なにしろ所持金が一気に10倍に膨れ上がったのだから!


「新作ゲームが発売されたらすぐ仕入れて来るからさ、贔屓にしてくれよ?」

「ええ、是非!」


 僕は店主と硬い握手を交わした。

 ロッタが変な目でこっちを見ていたが、もうそんな些細な事は気にしない。

 なんたって今の僕の懐は、ホカホカなのである。




 

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[一言] あんなんでも高給取り?!
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