第11話 完璧よりはね
美少女ふたりに挟まれて寝る事になったが、結局緊張して殆ど眠れなかった。
思春期の男子高校生にあれはキツいよ〜。
そして夜が明け、いつものように王様達と朝食をとっている。
「時にゆーゆよ」
「あ、ハイ」
「ロッタから話は聞いたが、昨夜もまた大活躍だったらしいな?」
昨夜?
エスタ達と同じベッドで寝てた事じゃ無いよな?
「い、いや、侵入者は殆どロッタが倒しましたから」
「しかし、ゆーゆが敵の侵入に気付いてくれたから、エスタを守りきれたらしいではないか」
「あ〜、それはまあ、たまたまです」
あの時プレイしてたのが他のゲームだったら、気付けなかっただろうしな〜。
「その調子で今日のエスタのお供も、よろしく頼むぞ」
「お供? 姫様、どこかに出かけるんですか?」
「うむ。今日は城下町に買い物に行きたいらしいのでな」
「へ⁉︎」
いやいやいや!
昨夜襲撃があったってのに、呑気に買い物ですと?
「いやあの……危ないのでは?」
「他にもちゃんと護衛は付けるから心配いらん。それに、夜中にコソコソ入って来るような連中が、真っ昼間の街中で襲って来るとは考えにくいからな。ワハハハハ!」
いや、信頼されてるのか能天気なのか……
そしてエスタはコップに刺さったパンをジッと見つめていた。
「ほら〜! 姫様また〜!」
「パ、パンが硬かったからふやかしてるんです〜」
「歯もいらないぐらい柔らかいっスよ〜」
また、という事はよくあるみたいだ。
そして朝食を終えた僕達は、予定通り買い物に行く事になった。
護衛は勿論僕とロッタ、そして騎士団から精鋭が2名ついた。
「姫様、何を買いに行くんですか?」
「お絵描き用の画材を買いに行くんです〜」
「絵を描くのが好きなんですか?」
「姫様は子供の頃から絵と歌が上手いっス」
「へえ〜、歌も? 良ければ今度聞かせてくださいね」
「良いですよ〜。何なら今夜子守唄を歌ってあげましょうかぁ?」
いや、まさか今夜も一緒に寝るつもりか⁉︎
そうこうしている内に露店が立ち並ぶ、商店街のような場所に着いた。
「うわぁ凄い。賑やかなとこですね〜」
「城下町一番の商店街っスからね〜」
ハッ!
じゃあまさか、ゲーム屋なんかもあったりするのだろうか?
僕がやけにキョロキョロしてる事に気付いたロッタが尋ねて来る。
「ゆーゆさんどうしたんスか? さっきからキョロキョロして。首を寝違えたんスか?」
「違うわっ!」
一応正直に話してみた。
「なるほど、ゲーム屋っスか? ゲーム専門店ってのは無いっスけど、色々珍しい物を売ってる雑貨屋ならあるっスよ? 確かそこにゲームがあるのを見た事があるっス」
「マジでか⁉︎」
「はは〜ん? ゆーゆさん、報酬貰ったから早速使う気っスね?」
「ま、まあね」
そうなのである。イヤイヤとはいえ参加したこの前の模擬戦の報酬に、金貨100枚を貰ったのである。
あくまで自分なりの計算ではあるが、金貨一枚が千円ぐらいと見て100枚なら約10万円ぐらいの価値がある筈である。
まあ、この世界のゲームがいくらぐらいするのかは分からないけど、その確認も兼ねて一度見に行きたいのである。
僕が目を輝かせていると、気を利かせたロッタがエスタに相談してくれた。
「どうスか? 姫様」
「良いですよぉ。ゆーゆさんのゲームは能力にも関係してるみたいですし〜、私の買い物が終わった後で良ければ行ってみましょう」
「あ、ありがとうございます!」
いよっしゃあ!
僕は心の中でガッツポーズをした。
「あ、姫様! おはようございます!」
「おはよ〜」
「姫様、お買い物ですか?」
「そうですぅ」
「姫様! また帰りに果物持って帰ってくださいね!」
「ありがとうございますぅ。でもこの前もらったみかん、戸棚と間違えて冷凍庫に入れてカチカチになっちゃいましたぁ」
間違えるか?
「ハハハ! 相変わらずですね? でもみかんは凍らせても美味しいから大丈夫ですよ!」
「そうなんですかぁ? じゃあ今度出して食べてみますねぇ」
いやずっと入れっぱなしかい!
その後も、街のみんなから頻繁に声をかけられるエスタ。
「姫様、凄い人気だなぁ」
「そりゃそうっスよ。姫様は王女である事を全く鼻にかけないし、市民が病気や怪我をしたらいつも無償で治療したりしてるんスから」
「そっか〜。立派な人なんだな〜」
「立派な人っスよ〜」
「あらあら〜!」
エスタが店先に並べられたフルーツを、盛大に道にばら撒いていた。
道を転がるフルーツ。
「ああ〜待って〜! 逃げないでくださ〜い!」
「ああ! 俺達が拾いますから、姫様は追いかけちゃダメ!」
「うきゃん!」
案の定転んだエスタを、護衛のふたりが受け止めていた。
「あのドジが無ければ完璧超人なんスけどね〜」
「確かに……」
だがまあ、あまり完璧過ぎるより、少しぐらい抜けてる方が親近感があって可愛いけどね。
フルーツの脱走を阻止した僕達は、エスタの目的の店にやって来た。
「こんにちは〜」
「やあ姫様、いらっしゃい。また画材探しですか?」
「そうですぅ」
「ゆっくり見てってくださいね」
「は〜い」
めちゃくちゃ種類のある色鉛筆のような物を物色しているエスタ。
「姫様、試し書きしてみますか?」
「そうですねぇ」
店主が用意した画用紙のような物に、可愛らしい動物キャラをどんどん描いて行くエスタ。
上手いなぁ、それにキャラがみんなめちゃくちゃ可愛い。
しかし筆が乗って来たのか、エスタの鉛筆は遂に画用紙を飛び出した。
「あ、あ、姫様、はみ出してます!」
「あ、あらぁ⁉︎ ごめんなさいねぇ、つい楽しくなっちゃって〜」
「いや、良いですよ。記念に残して、姫様に描いてもらったってみんなに自慢しますから」
うんまあ、完璧より少しぐらい抜けてる方がね。
「姫様、お茶でもどうぞ〜」
店主の嫁らしき人が、みんなにお茶を差し入れてくれた。
「わあ、ありがとうござい、あ……」
エスタの手からすっぽ抜けた色鉛筆が、ぽちゃんと湯呑みの中にダイブした。
「ああー! またっスか姫様〜? 今日はドジペースが早いっスよ〜?」
「硬かったからふやかしてるんです〜」
「いや鉛筆食べる気っスか⁉︎」
す、少しぐらい抜けてる方が……
「あら大変! ハイ、代わりのお茶をどうぞ〜」
すぐにトレーから代わりのお茶を用意する店主の嫁。
よく見ればトレーには、明らかに人数より多いお茶とタオルが用意されていた。
うん、みんなよく分かってるのね。




