第10話 名前なんて考えてなかった
ロッタに簡単に説明をして、ふたりで姫様の救出に向かう。
「でもゆーゆさん、何で敵が来るって分かるんスか? 乙女の勘っスか?」
誰が乙女だ!
ゲーム機の能力の事は、転生の事やら女神様の事やら中々信じ難い話だし、まだ不鮮明なところも多いから誰にも話していない。
「あ、後でちゃんと話すよ」
「ホントっスね? 嘘ついたらスライム千匹飲ますっスよ!」
スライムかよ!
そんなこんなでエスタの部屋の前に辿り着いた時、明らかに怪しい格好をした数人が、今まさにエスタの部屋に入ろうとしている所だった。
「なんスかあんた達はー⁉︎ 姫様に危害を加えようとする者はあたしが許さないっスよー!」
叫ぶと同時に走りながら、無数の光の矢を放つロッタ。
その何本かが侵入者に刺さる。
「グワアッ!」
「しまった! 見つかったか!」
「いや、相手はたかがガキふたりだ! すぐに消せば問題無い!」
部屋に入るのを中断してこちらに身構える侵入者達。
僕も武具を具現化させて戦闘準備を整えた。
「あたしは消されるような悪い事はしてないっスよー!」
芸能人か!
侵入者の中に丸腰で飛び込んだロッタが、瞬く間に素手でふたりの男を倒してしまう。
ロッタのやつ格闘術も使えるんだ?
それにしてもあの威力、おそらく身体強化魔法とかをかけてるのだろう。
「クッ、こいつ!」
「あとはあんただけっスよ!」
「騒がしいですねぇ、何かあったんですかぁ?」
まさかのエスタが部屋から顔を出した。
「えっ⁉︎ ちょっ! 姫様⁉︎ なに顔出してんスか? 危ないから頭を引っ込めるっスよ!」
亀か!
「バカめっ!」
案の定侵入者に捕まり盾にされるエスタ。
「へ、へへ。形勢逆転だなー。さあ! 姫を殺されたくなけりゃ、道を開けな!」
「クッ!」
「あらあら〜」
侵入者の殆どはロッタが倒しちゃったからな。
僕も少しは役に立たないと。
「神速、閃光斬!」
僕はファイターエムブレム の主人公キャラの技を使い、一瞬で間合いに入り侵入者の男を斬り倒した。
「な、何が起きた……グハァ!」
「ご無事ですか、姫様?」
「はぁい。何だかよく分かりませんが、私は元気ですよぉ」
「姫様! 無事で良かったっス!」
「この方達はなんですかぁ? お客様ですかぁ?」
「客がいきなり姫様の部屋に押し入ろうとしないっスよ。侵入者っス。ゆーゆさんが気付いてくれなかったら危ないとこだったっス」
「あらあら、物騒ですねぇ」
「それはさておき……」
ロッタが僕をジッと見つめている。
そんなに見つめられたら照れるじゃないか。
何を言いたいかは分かるが、果たして信じてもらえるだろうか。てか、どこまで正直に話していいのだろう?
女神様の事を喋っちゃっても天罰とか下らないよね?
「何事だー!」
「何だこいつらは?」
「姫様、ご無事ですか?」
騒ぎを聞きつけ、城の兵士達がようやくやって来た。
事情を説明して後の処理を兵士達に任せたロッタが、僕をエスタの部屋に引っ張り込む。
「さあ! それじゃあ洗いざらい吐いてもらうっスよ!」
取り調べかっ!
「さて、何から話せば良いものか……」
説明がめんどくさそうだったので、僕は転生の事と女神様の事は伏せ、生まれ持ったユニークスキルだと無理矢理こじつけて説明をした。
「それじゃあそのゲーム機でその時プレイしているキャラの能力が使えるって事っスか? そんなスキル、聞いた事も無いっス」
そりゃ無いだろうね。だって今考えたんだもん。
「でも、それなら今までの事も説明はつくっスね……」
この世界にユニークスキル自体が無かったらアウトだったけど、どうやら上手く誤魔化せそうだ。
「じゃああの、空間に腕が消える気持ち悪い現象も、そのスキルによるものっスか?」
気持ち悪いゆーな。
「う、うんまあ……」
「そっスか……いやまあ、ゆーゆさんが胡散臭いのは今に始まった事じゃ無いし、姫様の味方であるならあたしは文句無いっスよ」
胡散臭いゆーな。
「姫様に危害を加えるような事は絶対にしない。それだけは誓って言えるよ」
「私は最初に会った時からゆーゆさんを信じてましたよぉ」
「あ、ありがとうございます」
「あ〜っ! 姫様ズルいっス! 自分だけ好感度上げて〜! あ、あたしだって最初からゆーゆさんを信じてたっスよー!」
テメェ、疑いまくってたじゃねぇか!
「因みにそのスキル、何て名前スか?」
「えっ⁉︎」
な、名前⁉︎ そんなの考えて無かったぞ⁉︎
「ええっと、えーーーンドレスゲーマーだ」
咄嗟に思い付いたけど、永遠のゲーマーでエンドレスゲーマー。ちょっと安直だったか?
「エーーーンドレスゲーマーっスか〜? 何か語呂が悪いっスね?」
うん。言うと思った!
「じ、じゃあ姫様も無事だったし、能力の説明も終わったから、僕は部屋に戻って良いよね?」
「はぁ? 何言ってんスかゆーゆさん? たった今姫様が襲われかけたんスよ? 今夜はあたしと、この部屋で寝るっスよ!」
え? この娘何言っちゃってんの?
「いやいや、いくら襲撃があったとはいえ、男の僕が一緒の部屋で寝るのはマズイ……」
いやそうか。寝るってのは聞き間違いで、この部屋で寝ずの警護をするって言ったのか。
「ああ分かった。よくオールでゲームやってたから徹夜は慣れてる。今夜はここで寝ずの番をするよ」
「いや何言ってんスか? 徹夜なんかしたら体調崩すっスよ。ちゃんと寝なきゃダメっス」
聞き間違いじゃ無かったー!
「ちょっと姫様〜!」
暴走気味のロッタを窘めてもらおうと、エスタに助けを求めた。
「3人ならベッドに並んで寝れますよぉ」
一緒のベッドで寝ろってかー!




