第五十八話 建国王の姿
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今回、戦地での兵士のお話となります!!
トウラン王国から独立をしたモラヴィア侯国は、田舎の辺境と馬鹿にされるような国だった。海に面してはいても、何処までも崖が連なるような海岸線が続くばかりで、小さな漁村はポツポツとあるものの、海に面している割には魚を食べることも少ないような国だった。
そんなモラヴィアに大金をかけてクリヴナの港湾都市を作り出したのが建国の王ヴォイチェスラフであり、大航海時代の波に乗る形で、大型船を作るのに適した木材といえばモラヴィアの木だと周辺諸国に知らしめた。
モラヴィアの侯都リトミシェルはクラルヴァイン王国のように港湾に面しておらず、内陸に置かれ、スニェシュカ山から流れるヴルタヴァ川に沿うような形で街が作られている。
領都をそのまま侯国の都にしたため、遷都の話は何度か出たものの、侯都は今の場所から移動をしていない。
この侯都を囲むように、ドーナツを広げるような形で貴族たちは領土を預かっている。侯都およびその周辺を中央貴族がまとめ上げ、外周を辺境貴族と言われる人々がまとめ上げる。中央と辺境の間にもドーナツ状の層があり、辺境貴族ほど脳みそが筋肉で出来てはいないが、中央貴族ほど汚職で脳みそが腐り切ってはいない。いわゆる中道派という人々がドーナツの真ん中の層の人々ということになるのだ。
彼ら中道派も侯王ヴァーツラフに対して絶対的忠誠心を捧げていたのだが、その忠誠はドブに投げ捨てることに決めたのだ。
「ドラホスラフ殿下に付こうと言われた時には正気かと疑ったが、まさかこんなことになろうとはな・・」
中道派貴族であるアダム・シュフチークがそう言って馬から降りると、未だに馬に跨ったままのダヴィド・ヴィテークが何とも表現がつかない笑みを浮かべながら言い出した。
「これほど国が腐っている状況なのだから滅びるのも仕方がないと思っていたが、ドラホスラフ殿下が現れた時に、神は我らをお見捨てにはならなかったのだとつくづく実感したのだよ」
「ああ〜、確かに殿下は建国の王ヴォイチェスラフ様に面差しがめちゃくちゃ似ているからな〜」
脱力したアダムはその場に座り込みながら言い出した。
「それにしたって、北部を出発してから休む暇なく連戦、連戦で、最後には侯都に突っ込んで行って宮殿まで制圧してしまうとは思いもしなかった。後から考えてみれば軍部を掌握していたのはパヴェル殿下であり、ドラホスラフ殿下だったのだから、当たり前と言えば当たり前のことだとは思うんだけど、まさかここまで殿下が戦上手だとは思いもしなかったな〜」
辺境の貴族たち(脳筋)を率いて出兵をしたドラホスラフ第三王子の後ろ盾は侯王ヴァーツラフの弟ヤロスラフだ。今まで警戒され続けてきたヤロスラフが遂に謀反を企て決起したと緊張が走ることになったものの、その頃には、ブジュチスラフ第一王子が宰相ウラジミールを謀反人として認めて、宰相を討伐するために何万という兵士を挙兵していた。
侯都の中心を守る中央貴族が一斉にシュバンクマイエルの領地を目指す中、中道派貴族たちへ侯王および侯都を守る盾となれと命令が下されることとなったのだが、その最中にもドラホスラフ自らが使者となって、多くの貴族たちを訪問して回った。
オルシャンスカ伯爵の裏切りと、近々、モラヴィアが南大陸の蛮族たちに植民地として売り飛ばされる証拠が提示されることとなったのだ。オルシャンスカ家の令嬢マグダレーナをブジュチスラフ第一王子が妃と同等の扱いで宮殿に囲っているのは有名な話であり、オルシャンスカ伯爵に与したブジュチスラフ第一王子が、自国を南大陸に売り飛ばすことに賛成だというのなら、侯王自身もその案に賛成ということになるのだろう。
中央貴族たちが麻薬に汚染されていることは中道派の貴族たちでも知っていることだし、その麻薬が南大陸から運ばれたものであることも知っている。ただ、その麻薬がモラヴィアを植民地にするための地ならしに利用されているというのなら、到底看過できるものではない。
宰相が謀反を起こし、中央貴族が逆賊を討伐するために兵を動かす。その隙をついて北部のヤロスラフがドラホスラフ殿下を利用して決起をしたというのなら、本来であれば中道派の貴族たちは、侯王を守るための盾となったに違いない。
ただでさえ無能な侯王が自分の右腕でもある宰相を捨てたのは、今後、自分自身がモラヴィアを存続させるつもりなど無いから。侯王は国を治めるためのあらゆる権利を持っているけれど、これを金で南大陸に売るというのなら、自分たち中道派貴族は到底、侯王を守る気にはならない。
自分の領地と民、そして貴族としての地位や誇りを守るために先祖代々この地で生きてきたのだ。その全てが脅かされるというのなら方針の転換は絶対に必要となるだろう。だからこそ、多くの貴族がドラホスラフ王子に付いたのだ。
王宮にあがった時点で、次の侯王はドラホスラフに決定したも同じこと。建国の王に面差しが良く似た王子は苛烈なまでの手段で、あっという間に人々をまとめ上げた手腕は相当なものだと言えるだろう。
「宮殿も無血開城できたわけだし、今日はご馳走が振る舞われるのかな〜」
座り込んだままのアダムが呑気なことを言っていると、未だに馬から降りようともしないダヴィドが、
「そんな訳ないだろう」
と、言い出した。
「猪突猛進の建国王の生まれ変わりが、宮殿を無血開城させただけで止まるわけがないじゃないか」
走り出したら止まらないと言われたのが建国の王ヴォイチェスラフであり、その勢いがあったからこそ当時は大国だったトウランからの独立を勝ち取ることが出来たのだ。
「確かに殿下は建国の王にお顔が似ているけどさあ・・」
侯都を無血で押さえたのだから、ここが戦いの終着点だったんじゃないのかな?
確かに、侯都を抑えられたと知ったら中央貴族たちは慌てて引き返してくることになるだろうけれど、それに対峙するのは少し休んでからのことになるだろう。
だって、宮殿を抑えたってことは侯王の所有する一切の権利を譲渡されるってことにもなるでしょう?権利の移譲には煩雑な手続きがあるだろうし、ここでドラホスラフ殿下が侯王になったのだと喧伝しなければ、オルシャンスカが率いる軍を逆賊として討伐出来ないってことになるんだし・・
「騎兵隊集まれ!殿下の意向に従い!今すぐ進軍を開始する!皆の者集まれー!」
今、ようやっと馬から降りて休んだばっかりなのに・・馬だってもう少し休んでいたいって言っていると思うんだけど・・
「「「殿下が出発されました!」」」
「「「ドラホスラフ殿下に続けーーーーっ!」」」
巻き起こる怒号にアダム・シュフチークが呆然としていると、配下の者たちも揃って馬上に待機させ続けていたダヴィド・ヴィテークが言い出した。
「絶対にここで止まらないと思っていたんだ!皆の者!出世のチャンスだぞ!周りの者たちはまだ準備が出来ていないはずだ!我が騎兵部隊!ここに進発をする!」
「「「進発―!」」」
「ダヴィド!待ってくれ!俺も進発するー!」
アダムは慌てて自分の部下たちを纏め出したが遅きに失したのは間違いない。
「クソーッ!建国王マニアの言うことを聞いておけば良かったー!」
ダヴィド・ヴィテークは建国王の話が大好きなのだ。
ダヴィドはドラホスラフ王子の猪突猛進ぶりの中に建国王の姿を見たに違いない。
戦地での兵士のお話を挟みまして、ドラ王子とカロリーネどうなるの回へと続きます!本日兵士のお話を二話更新する関係で、19時にもう一話載せていきます!よろしくお願いします!!
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